ビジネスの現場では「伝言を正しく伝える」ことが意外と難しいものです。電話で受けた内容をメールにまとめたり、上司の依頼を取引先に伝えたりする場面では、表現を誤ると誤解や失礼につながることもありますよね。本記事では、上司や同僚、取引先に向けた伝言メールの正しい書き方や敬語の使い方、実務で役立つ具体例文を整理しました。読むことで、誰でもすぐに使える伝言メールが書けるようになります。
伝言を伝えるメールの基本マナー
ビジネスメールで伝言を伝えるときは、ただ「○○さんから伝言です」と書くだけでは不十分です。相手にとって必要な情報を正確に、そして失礼のないように届けることが求められます。
伝言を伝えるときに守るべき基本の流れ
伝言メールは大きく分けて「冒頭でのあいさつ」「伝言内容の明記」「補足情報や対応の依頼」「結びの言葉」という流れで構成すると読みやすくなります。
- 冒頭で簡潔にあいさつを入れる
- 誰からの伝言かを明確にする
- 伝言の内容を要点だけ整理する
- 必要に応じて対応を依頼する
- 最後に丁寧な結びで締める
この流れを押さえるだけで、相手に誤解を与えにくく、スムーズに情報を伝えることができます。
伝言を伝える敬語の注意点
伝言メールでは「言う」という表現をどう敬語にするかがポイントです。例えば「○○と申しておりました」「お伝えくださいとのことでした」といった言い回しが一般的です。直接的に「言いました」と書くと砕けすぎた印象になるため注意しましょう。
また「伝言を承りました」「伝言を承っております」という表現は、相手に敬意を示しながら正確に受け取ったことを伝えるのに役立ちます。
上司からの伝言を伝えるメールの書き方
職場で最も多いのが、上司から部下や取引先への伝言をメールで伝えるケースです。このときは、上司の立場を下げないように配慮しながら内容を伝える必要があります。
上司からの伝言を社内に伝える場合
社内向けであっても、上司の言葉をそのまま書くのではなく、敬語に置き換えて送るのが基本です。
例文：
「○○部長より、明日の会議資料について事前に確認しておくようにとの伝言を承っております。各自、本日中にチェックをお願いいたします。」
このように、誰からの依頼かを明確にしたうえで、指示内容を簡潔に伝えるのがポイントです。
上司からの伝言を社外に伝える場合
取引先や顧客に上司の伝言を伝える場合は、さらに丁寧な敬語を使いましょう。
例文：
「弊社○○よりご連絡の伝言を承りました。『来週の打ち合わせは10時開始に変更をお願いしたい』とのことでございます。ご都合をお聞かせいただければ幸いです。」
「承りました」「とのことでございます」といった言い回しで、上司の立場を尊重しつつ、相手に柔らかく伝えることができます。
伝言を預かりましたと伝えるメールの工夫
自分が伝言を受け取り、それを別の相手に伝える場面も多くあります。その場合は「伝言を言付かりました」という表現よりも、「伝言を承りました」「伝言をお預かりしました」と書く方がビジネスメールでは自然で丁寧です。
伝言を預かったときの基本例文
「本日お電話をいただき、○○様からの伝言を承りました。『見積書を今週中にご確認いただきたい』とのことです。内容を共有いたしますので、ご対応のほどよろしくお願いいたします。」
このように、伝言を預かったことと具体的な内容を分けて書くと、相手に誤解を与えにくくなります。
ビジネスでの伝言の言い方を工夫する
「言っていました」という直接的な表現を避け、「おっしゃっていました」「伝えてほしいとのことでした」といった言い方を心がけましょう。敬語を意識するだけで、同じ内容でも相手に与える印象は大きく変わりますよ。
シーン別で役立つ伝言メールの具体例文
伝言をメールで伝える場面は社内・社外を問わず多くあります。それぞれの状況で少しずつ表現を変えるだけで、受け取る相手に与える印象が良くなり、誤解を避けられます。ここではシーン別に使える具体例文を整理しました。
社内での伝言メール例文
同僚や部下への伝言は、シンプルかつ要点を押さえた表現が基本です。
例文：
「○○課長より伝言を承りました。『本日の打ち合わせは15時からに変更』とのことです。各自、準備をお願いいたします。」
社内の場合は、過度にかしこまる必要はありませんが、上司からの言葉を正確に伝えることが第一です。
社外への伝言メール例文
取引先や顧客に伝言を送る場合は、社内以上に丁寧な表現を心がけます。
例文：
「本日○○より伝言を承りました。『来週のご訪問は10時開始に変更させていただきたい』とのことでございます。恐れ入りますがご調整いただけますと幸いです。」
社外の場合は「〜とのことです」より「〜とのことでございます」の方が、相手に柔らかく響きます。
上司からの伝言を依頼された場合の例文
ときには上司から「この件を先方にメールで伝えてほしい」と依頼されることもあります。
例文：
「○○部長より伝言を承りました。『次回の契約内容について、事前に資料をご確認いただきたい』とのことです。ご確認のほど、よろしくお願い申し上げます。」
このように上司の言葉をそのまま書くのではなく、敬語に置き換えることで、相手に与える印象を損なわずに伝えられます。
取引先や社外への伝言メールで注意すべきこと
取引先や社外に向けた伝言メールは、内容以上に「言い方」で信頼関係が左右されることがあります。
誰の言葉かを曖昧にしない
「上司から〜」と明確に書かず「〜と伺いました」と表現すると、責任の所在が不明確になってしまうことがあります。必ず「○○より」と名前を出して伝えましょう。
表現をやわらかくする
直接的に「伝えてほしいと言われました」と書くと、押し付けがましく聞こえることがあります。「〜とのことでございます」「〜と申しておりました」といった表現に置き換えるのが無難です。
補足を添えて丁寧にする
単に伝言を転送するだけではなく、こちらからの対応や感謝を一言添えることで、印象が良くなります。
例：「伝言を承りましたので、念のためご共有いたします。どうぞよろしくお願いいたします。」
伝言メールで失敗しないコツ
伝言メールは一見シンプルですが、ちょっとした表現の差で相手に違和感を与えてしまうことがあります。ここでは失敗を防ぐための具体的なコツを紹介します。
伝言を正確にまとめる
相手に誤解されないよう、要点を箇条書きにして整理してから書くと安心です。特に日時や金額などの数字は間違いがないよう二重に確認しましょう。
丁寧すぎて長くしない
伝言を丁寧に伝えようとして、かえって冗長になってしまうことがあります。メールは読み手の時間を奪うため、必要な情報をコンパクトにまとめることが大切です。
自分の言葉を混ぜすぎない
伝言はあくまで「他者の言葉」です。自分の意見を加えてしまうと、相手に誤解を与える原因になります。「〜とのことです」と明記し、区別をはっきりさせましょう。
ビジネスで使える伝言の言い換え表現
伝言メールでは、同じフレーズばかり使ってしまうと単調になりがちです。表現のバリエーションを持っておくことで、相手や場面に合わせた柔軟な対応ができます。
「伝言を承りました」の言い換え
- 「○○より申し伝えがございました」
- 「○○からのお言葉をお預かりしております」
- 「○○より次のように申しておりました」
これらはすべて敬語として自然であり、ビジネスの場面で違和感なく使えます。相手に与える印象も少しずつ異なるため、場面によって使い分けましょう。
「〜とのことです」の言い換え
- 「〜と伺っております」
- 「〜と申しておりました」
- 「〜との意向でございます」
少し柔らかいニュアンスを出したいときは「伺っております」、フォーマルに伝えたいときは「意向でございます」とするのが良いでしょう。
依頼や返信で使える伝言メール例文集
伝言は「伝える」だけではなく、「依頼する」「返信する」場面でも登場します。状況ごとの例文をいくつか紹介します。
伝言を依頼するときのメール例文
「恐れ入りますが、○○様に下記の件をお伝えいただけますでしょうか。『来週の打ち合わせについて、日程を再調整したい』とのことです。ご対応のほど、よろしくお願い申し上げます。」
自分が直接伝えられない場合に、このような表現で依頼すれば失礼になりません。
伝言を返信するときのメール例文
「○○様よりの伝言を承りました。ご指示いただいた件、承知いたしました。引き続きよろしくお願いいたします。」
返信では「確かに受け取りました」という安心感を与えることが大切です。
社外に伝言を依頼された場合の例文
「先ほど○○より伝言を承りましたので、共有させていただきます。『次回の会議はオンラインで実施したい』とのことです。ご確認をお願いいたします。」
社外への伝言は、そのまま伝えるだけでなく「共有させていただきます」と添えることで、情報を整理して渡す姿勢を示せます。
まとめと実践のポイント
伝言メールはシンプルに見えますが、実際には言葉選びや丁寧さで大きく印象が変わるものです。今回紹介したポイントを改めて整理します。
- 伝言は「誰の言葉か」を明確にする
- 社内では簡潔に、社外ではより丁寧に伝える
- 「承りました」「申し伝えがありました」など複数の言い換え表現を持つ
- 依頼や返信にも適切な伝言メールがある
- 誤解を防ぐために数字や日程は必ず確認する
つまり、伝言メールはただ「言葉を運ぶ」だけでなく、信頼を守る大事なコミュニケーションの一部なのです。実務で使える例文をベースに、自分の言葉でもアレンジできるようになれば、社内外のやり取りがスムーズになり、評価も自然と高まっていきますよ。
