ビジネス文書や会話の中で「乞われる」「請われる」「乞う」といった言葉を見かけることがあります。どれも似たように見えますが、実は意味も使い方も少しずつ違います。特に「教えを乞う」「助力を請う」など、目上の人に使うときは言葉の選び方を誤ると印象を損ねてしまうことも。
この記事では、「乞われる」「請われる」「乞う」の正しい意味と使い方を整理しながら、敬語表現やビジネスでの適切な使い分けを具体例付きで解説します。言葉の微妙な違いを理解すれば、文章にも話し方にも深みが出てきますよ。
「乞われる」とは?意味と読み方をやさしく解説
まずは「乞われる」という言葉の基本的な意味と読み方を見ていきましょう。
乞われるの読み方と意味
「乞われる」は “こわれる” と読みます。
もとの動詞は「乞う(こう)」で、「お願いする」「求める」という意味があります。したがって「乞われる」はその受け身の形で、「お願いされる」「求められる」という意味になります。
たとえば次のような使い方があります。
- 「社長に乞われて、再び経営に戻った。」
- 「多くの社員に乞われて、彼がリーダーに就任した。」
つまり「乞われる」とは、相手から強く求められて行動することを指します。
この言葉には「信頼されて頼まれる」「必要とされる」といった前向きなニュアンスが含まれます。
「乞われて行く」とはどんな意味?
「乞われて行く」は「お願いされて行動する」「頼まれて出向く」という意味です。
たとえば、以下のように使われます。
- 「講演を乞われて、大学で話をすることになった。」
- 「取引先に乞われて、再び契約を引き受けた。」
どちらも「相手から頼まれたために行動した」というニュアンスです。自分からではなく、相手の要望に応えて動いた結果という点がポイントです。
「請われる」と「乞われる」の違いを整理する
次に混同しやすい「請われる」と「乞われる」の違いを見てみましょう。
どちらも「お願いされる」という意味を持ちますが、使う場面や相手に対する敬意の度合いが異なります。
「請われる」の意味と読み方
「請われる」は “こわれる” とも読みますが、漢字が「請う(こう)」なので別の言葉です。
「請う」は「目上の人にお願いする」「正式に依頼する」という意味を持ちます。
したがって「請われる」は、「敬意をもってお願いされる」「丁寧に依頼される」という意味になります。
たとえば:
- 「社長に請われて、取締役を引き受けた。」
- 「先生に請われて、特別講義を担当した。」
このように、「請われる」はフォーマルで格式の高い場面にふさわしい表現です。
「乞われる」が感情的な“お願い”に近いのに対し、「請われる」は“儀礼的・公式な依頼”を表します。
「乞う」と「請う」の違い
二つの漢字の違いを整理すると、次のようになります。
漢字 | 読み方 | 意味 | ニュアンス |
---|---|---|---|
乞う | こう | 心からお願いする | 感情的・個人的 |
請う | こう | 丁寧に依頼する | 形式的・公的 |
「乞う」は「教えを乞う」「許しを乞う」などのように、自分がへりくだってお願いする場面で使われます。
一方、「請う」は「助力を請う」「支援を請う」など、礼儀正しい依頼の場面で使われます。
つまり、「乞う」は感情、「請う」は礼儀という違いです。
「教えを乞う」と「教えを請う」の違いを徹底解説
日本語の中でも特に混同されやすいのが「教えを乞う」と「教えを請う」です。どちらも「相手に知識や助言を求める」表現ですが、微妙に使い分けが必要です。
「教えを乞う」はへりくだった表現
「教えを乞う」は、「自分の立場を低くして相手に知恵や教えをお願いする」という意味です。
たとえば:
- 「先生に教えを乞う。」
- 「先輩に教えを乞いながら、経験を積む。」
この表現は、相手に対して強い敬意を示しつつ、自分が学ぶ立場であることを明確にします。
したがって、目上の人に教えを請う場面では非常に丁寧な言い回しとして使えます。
ただし、ビジネス文書などで繰り返し使うとやや大げさに聞こえることがあるため、
日常的には「ご教示をお願い申し上げます」「アドバイスをいただけますと幸いです」といった柔らかい表現も使われます。
「教えを請う」はよりフォーマルな依頼表現
「教えを請う」は「正式に教えをお願いする」という意味で、やや硬い印象を与えます。
公的なスピーチや文書など、格式ある場面に適しています。
たとえば:
- 「専門家の先生に教えを請う機会を得ました。」
- 「新制度について、上司に教えを請いました。」
「乞う」よりも感情的なニュアンスが薄く、礼儀正しく筋の通った依頼という印象になります。
企業の報告書やフォーマルな文書では「教えを請う」のほうが好まれるケースもあります。
違いのまとめ
表現 | 意味 | ニュアンス | 使用シーン |
---|---|---|---|
教えを乞う | へりくだって教えを求める | 謙虚・感情的 | 師弟関係・上司・尊敬する相手 |
教えを請う | 礼儀正しく教えを依頼する | 形式的・公的 | 会議・報告書・ビジネスメール |
ビジネスの現場では、相手との関係性や場のフォーマル度に応じて使い分けることが大切です。
「乞う」「請う」の使い方と意味を例文で理解する
それぞれの言葉の意味を整理したうえで、もう少し深く使い方を見ていきましょう。
「乞う」の意味と使い方
「乞う」は、古語の「こう(願う)」に由来します。
「心から求める」「お願いする」という意味で、感情がこもった表現です。
代表的な使い方には次のようなものがあります。
- 「許しを乞う」:謝罪の気持ちを込めて許可をお願いする。
- 「助けを乞う」:困難な状況で救いを求める。
- 「教えを乞う」:学びたいという気持ちで知識をお願いする。
どれも「切実な気持ち」を表すのが特徴です。
そのため、ビジネスの場で使うとやや感情的すぎる印象を与えることもあるので、使う場面を見極めることが大切です。
「請う」の意味と使い方
「請う」は、儀礼的・形式的な「お願いする」表現です。
「ご指導を請う」「ご助言を請う」など、丁寧な場面に適しています。
たとえば:
- 「上司に助言を請う。」
- 「専門家の協力を請う。」
- 「お力添えを請う。」
どれもフォーマルで、書面や公式な会話で使いやすい表現です。
「請う」は相手に敬意を示す一方で、感情的ではなく落ち着いた印象を与えるのが特徴です。
ビジネスでの「乞われる」「請われる」の使い分け方
実際の職場で「乞われる」「請われる」をどう使い分けるべきかを整理しておきましょう。
「乞われる」は人間関係の信頼に基づく
「乞われる」は、個人的な信頼関係や感情的な要素が強い表現です。
たとえば、次のような場面で自然に使えます。
- 「社員たちに乞われて、再び現場に戻った。」
- 「顧客に乞われて、契約を継続することになった。」
どちらも「人の想い」によって行動している点が特徴です。
感情的な背景を伴う依頼やお願いには、「乞われる」がぴったりです。
「請われる」はフォーマルな依頼や任命に使う
一方、「請われる」は儀礼的・公式な依頼を受けたときに使うのが自然です。
- 「社長に請われて、役員を引き受けた。」
- 「講演を請われて、登壇することになった。」
このように、立場のある人から正式に依頼を受けた場合には「請われる」が適しています。
書面やスピーチなどで格調を出したい場合にも有効です。
「乞う」「請う」「乞われる」「請われる」を混同しないコツ
似ている言葉ほど混乱しやすいものです。ここでは整理のコツを紹介します。
言葉の違いを感覚で覚える
- 「乞う」=心でお願いする(感情・誠意)
- 「請う」=礼儀でお願いする(形式・丁寧)
- 「乞われる」=感情的に求められる
- 「請われる」=正式に依頼される
たとえば「教えを乞う」は「学びたい」という気持ちが前に出ているのに対し、
「教えを請う」は「礼儀として教えをお願いする」印象になります。
ビジネス文書での安全な使い方
- 社外向けのフォーマル文書 → 「請う」・「請われる」
- 社内や感情を込めたい文章 → 「乞う」・「乞われる」
シーンに応じて使い分けることで、言葉の印象がぐっと洗練されます。
「乞われる」や「請われる」を使ったビジネス例文集
信頼関係を表す「乞われる」の例文
- 「顧客に乞われて、新しいプロジェクトを立ち上げた。」
- 「後輩たちに乞われて、再びチームリーダーに就任した。」
- 「クライアントに乞われて、再契約を結ぶことになった。」
公式な依頼を表す「請われる」の例文
- 「取締役に請われて、研修講師を務めた。」
- 「教授に請われて、学会で講演した。」
- 「経営層に請われて、新規事業を担当することになった。」
謙虚さを表す「乞う/請う」の例文
- 「皆様のご理解とご支援を乞う。」
- 「ご指導を請う機会をいただければ幸いです。」
- 「お力添えを乞いながら、挑戦を続けてまいります。」
どの表現も、相手への敬意を前提としながら、自分の立場や文脈に合わせて選ぶのが大切です。
まとめ|「乞われる」と「請われる」の違いを理解し、品格ある日本語を使おう
「乞われる」と「請われる」はどちらも「お願いされる」という意味を持ちますが、
感情的か形式的かというニュアンスで大きく異なります。
- 「乞われる」=人の想い・信頼によって求められる
- 「請われる」=正式な場で依頼を受ける
- 「乞う」=心からお願いする
- 「請う」=丁寧に依頼する
また、「教えを乞う」と「教えを請う」はどちらも敬意ある表現ですが、
「乞う」はより謙虚で個人的、「請う」は儀礼的で公的です。
言葉の違いを理解し、相手や場面に合わせて使い分けることで、
あなたのビジネス文書や会話はぐっと品格を増します。
一つひとつの言葉に込められた日本語の奥深さを感じながら、信頼を生む表現力を磨いていきましょう。