SNS広告や動画広告を目にする機会が増える中、「これ本当?」と感じる広告を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
それが、近年問題になっている**フェイク広告(虚偽広告)**です。
芸能人の顔写真が無断で使われたり、ゲームアプリが実際と異なる映像で宣伝されたりと、被害は年々拡大しています。
この記事では、2025年現在の最新フェイク広告の事例と、企業が取るべき実践的な対策を紹介します。
広告運用・ブランド広報・法務担当の方が、信頼を守るための判断基準を整理できる内容です。
フェイク広告とは何かをわかりやすく理解する
フェイク広告とは、実際の内容や人物とは異なる情報を使い、消費者を誤認させる広告表現のことを指します。
英語では「Fake Advertisement」や「Misleading Ad」と呼ばれ、SNS・YouTube・アプリ広告で特に増加傾向にあります。
たとえば、実際には関係のない芸能人の画像を使用して「この商品を愛用しています」と偽るパターン。
あるいは、ゲーム広告で「誰でも簡単に勝てる」と誇張した映像を使い、実際は全く違う内容のアプリを配信するケースもあります。
フェイク広告が拡大している背景
近年、AI画像生成や動画編集ツールの発達により、「一見本物のように見える偽広告」を誰でも作れるようになりました。
また、SNS広告の審査はプラットフォームごとに異なり、すべてを人の目で確認することが難しいため、
巧妙なフェイク広告がすり抜けて配信されるケースが増えています。
企業側にとっても「関係のないフェイク広告に自社名や商品が使われる」被害が多発しており、ブランド価値の毀損リスクが急上昇しています。
芸能人の画像を悪用するフェイク広告の実例と企業の対応策
ここ数年で特に増えているのが、芸能人や有名人の画像・名前を無断で使用したフェイク広告です。
SNSやニュースサイトのタイムライン上に「〇〇さんが絶賛!」という見出しと共に表示される広告を、
一度は見たことがある方も多いでしょう。
実際に発生したフェイク広告事例(2024〜2025)
- 人気俳優の写真がAI合成され、健康食品を推薦しているように見せかけた広告がX(旧Twitter)上で拡散
- 有名タレントの顔写真を使った「投資アプリ」広告がYouTubeで表示され、本人が公式サイトで注意喚起
- 海外モデルの画像をAIで日本人風に加工し、「芸能人プロデュース」と虚偽表示
こうした広告の多くは、本人が一切関与していないにもかかわらず、信頼性を装ってクリックを誘導する手口です。
芸能人の無断使用フェイク広告に対する企業のリスク
- ブランド毀損:虚偽広告に自社商品やロゴが登場すると、消費者からの信頼が失われる
- 法的リスク:著作権・肖像権・不正競争防止法違反に問われる可能性がある
- SNS炎上リスク:ユーザーが誤認して拡散し、意図せず「詐欺商材と関係ある企業」と見られる
特に、芸能人の画像が使われた広告は「本物の広告」と誤解されやすく、削除対応の遅れが命取りになることもあります。
芸能人フェイク広告への企業の対応手順
- 発見時点でスクリーンショットを保存(証拠保全)
- プラットフォーム(X・YouTube・Instagramなど)へ通報
- 広告出稿主・代理店を特定し、停止・削除を要請
- 公式サイトやSNSで注意喚起を発信
実際、複数の芸能事務所は2024年以降、フェイク広告に関する共同声明や弁護士対応を行っており、
企業側も速やかに「無関係であること」を公表する動きが広がっています。
ゲーム業界で横行するフェイク広告の手口とユーザー心理
フェイク広告はエンタメ領域でも問題視されています。
特に「ゲーム広告」においては、実際のプレイ内容と異なる映像を使う手法が増加。
「やってみたら全然違った」というユーザーの不信感が口コミで広がり、
結果的に業界全体の信頼を損なうケースもあります。
よくあるフェイク広告の特徴
- ゲーム内に存在しないキャラクターや演出を使う
- 初心者でも簡単にクリアできるように見せる
- 実際のゲーム内容よりも派手な映像をAI合成で作成
- 「この広告の人が下手すぎる」と思わせる“イライラ系広告”でクリックを誘導
一見「マーケティング上の工夫」に見えますが、実際にはユーザーを誤導してダウンロードを促す虚偽表現に該当する場合があります。
フェイク広告が生まれる構造的な問題
ゲーム広告は成果報酬型(CPI)モデルが主流で、「インストール数」を最優先する傾向があります。
そのため、「まずはダウンロードしてもらえれば勝ち」という短期的な発想から、誇張表現が横行するのです。
しかし、ダウンロード後に「騙された」と感じるユーザーはリテンション(継続率)が極端に低く、
長期的には広告費の無駄遣い+ブランド信頼の損失につながります。
フェイク広告を避けるためのチェックポイント
企業や広告代理店がゲーム広告を出す際は、次の点を意識すると安全です。
- 映像内のすべての要素が実際のゲームで再現可能か確認する
- 体験要素(難易度・報酬など)を誇張していないかチェックする
- 事前に社内で広告表現ガイドラインを共有し、複数人でレビューする
また、ユーザーからの「広告と違う」というクレームは早期に拾い上げ、
広告内容を修正・削除するフローを明文化しておくことも重要です。
YouTubeで増えるフェイク広告の実態と通報の手順
YouTube上では、フェイク広告の被害が特に目立ちます。
動画の前後や途中に差し込まれる広告が、一見本物に見えて実は詐欺サイトへ誘導するというケースが増えています。
YouTubeフェイク広告の代表的な例
- 有名人のインタビュー風映像をAI生成し、投資詐欺サイトへ誘導
- 本物のニュース番組風に編集された“嘘の報道形式”広告
- 「Google公式」「Apple推薦」などと名乗る偽アプリ広告
これらはYouTube広告の審査をすり抜けて配信されることがあり、
一度でもクリックすると外部の詐欺ページへ遷移する危険性があります。
YouTubeフェイク広告を見分けるコツ
- チャンネル名・URLを確認(公式のチェックマークがない場合は要注意)
- コメント欄や概要欄が無い・不自然な英語表記
- 動画の品質が妙に粗い・声がAI合成風
- 「今すぐ申し込む」「限定オファー」など焦らせる文言
企業広告担当者がYouTube運用を行う際は、
**第三者の出稿を偽装した“なりすまし広告”**に自社ブランドが巻き込まれていないか定期的に確認する必要があります。
フェイク広告を見つけたときの通報手順(YouTube)
- 広告右上の「i」マークをクリックし、「広告を報告」を選択
- 「不正または誤解を招く広告」を選択して送信
- スクリーンショットを保存し、Google広告サポートに報告
また、企業としては「YouTube Ads認定代理店」を通して広告配信を行うことで、
不正広告への混入リスクを下げることが可能です。
SNSで拡散されるフェイク広告と企業のブランド防衛策
SNS上では「誰でも広告を出せる」ことがメリットである一方、
虚偽広告や詐欺広告が一般ユーザーに混ざって拡散されるリスクも高まっています。
特にX(旧Twitter)やInstagramでは、
- 芸能人の画像を使った投資・副業広告
- インフルエンサーが“紹介風”に投稿するステマ型フェイク広告
が多発しています。
SNSフェイク広告に巻き込まれた企業の実被害
- 関係のない企業ロゴを無断使用され、ユーザーから「詐欺企業」と通報される
- 広告代理店経由で出稿したSNSキャンペーンが誤解を招く表現となり炎上
- 偽アカウントが商品ページへ誘導し、個人情報を搾取
こうした被害を防ぐために、企業は**「フェイク広告対策=ブランド防衛」**と位置づける必要があります。
企業がSNSで行うべきフェイク広告対策
- 公式SNSアカウントを認証済みにして、なりすましを防ぐ
- ブランド名+詐欺ワードでのモニタリングを自動化(例:「〇〇 詐欺」「〇〇 偽広告」)
- 消費者庁・プラットフォームへの通報ルートを社内で共有
- 万一拡散された場合に備えた「危機管理広報マニュアル」を整備
これらの体制を整えることで、発生時に冷静かつ迅速な対応が可能になります。
フェイク広告を社内で検知・管理する仕組みをつくる方法
フェイク広告は、個人が通報するだけでは限界があります。
特に企業が被害者となるケースでは、社内での監視体制と通報フローの設計が欠かせません。
フェイク広告監視の仕組みづくりのポイント
- モニタリング体制を構築
広報・法務・広告担当が連携し、「SNS・検索・動画広告」を横断的にチェック。 - 自動検知ツールを導入
Brandwatch、TalkwalkerなどのSNS監視ツールでキーワード追跡。 - 外部通報・削除の窓口を明確化
プラットフォーム対応と弁護士連携のルートを決めておく。
このように体制を標準化することで、被害を最小限に抑えられます。
まとめ:フェイク広告を放置しない企業姿勢が信頼を守る
フェイク広告は、もはや一部の悪質業者だけの問題ではありません。
芸能人の顔写真を無断使用したもの、ゲームで誤解を招く演出、YouTubeやSNSで拡散される虚偽情報——。
すべての企業が「巻き込まれる可能性がある時代」に入りました。
重要なのは、「気づいた時点で即対応する」ことです。
削除依頼・通報・社内連携をスピーディに行う企業は、ユーザーからの信頼を守り続けています。
2025年の広告業界では、「どれだけ多くの人に見せるか」よりも、
**「どれだけ正確に・誠実に伝えるか」**が問われる時代に変わりました。
自社と顧客を守るために、今すぐフェイク広告への備えを強化しておきましょう。