ビジネスシーンでよく使われる「承知です」。一見シンプルで便利な返答ですが、実は「失礼」「気持ち悪い」「違和感がある」と感じる人も少なくありません。
上司や取引先への返事でつい使ってしまう人も多いですが、正しい場面で使わないと「敬語が使えない人」と思われることも。
この記事では、「承知です」の正しい意味と使い方、間違いやすいポイント、そして違和感を持たれないための言い換え例やビジネスメール文を徹底解説します。
読み終えるころには、あなたの返答が自然で印象の良い“できる人の言葉遣い”に変わります。
「承知です」は正しい?意味と使い方の基本を確認
まずは、「承知です」という言葉の意味と敬語としての正しさを整理しましょう。
普段使っている言葉でも、文法的な根拠を知ると使い分けがしやすくなります。
「承知」の意味とは
「承知(しょうち)」とは、本来「理解する」「納得して受け入れる」「承諾する」という意味を持ちます。
つまり「承知です」とは、「理解しました」「了解しました」とほぼ同じ意味で使える言葉です。
ただし、「承知」には「目上の人に対して受け入れる」というニュアンスがあり、もともとへりくだりの表現(謙譲語)に分類されます。
そのため、「承知いたしました」「承知しました」は謙譲語として正しく、「承知です」はややフラットな表現になるのです。
「承知です」は敬語として間違いではない
結論から言えば、「承知です」は日本語として間違いではありません。
しかし、ビジネスシーンでは「敬語としてやや不十分」と感じる人が多いため、使う相手や状況を見極める必要があります。
たとえば、次のように考えるとわかりやすいです。
- 「承知しました」…ビジネスで一般的・フォーマル
- 「承知いたしました」…さらに丁寧・目上や社外向け
- 「承知です」…ややカジュアル・社内や同僚向け
つまり、「承知です」は敬語として“間違い”ではありませんが、フォーマルさが足りないために「違和感がある」と受け取られやすいのです。
「承知です」が「失礼」「気持ち悪い」と言われる理由
SNSや知恵袋などで「承知です 気持ち悪い」「承知です 失礼」と検索されることがあります。
なぜそう感じる人が多いのか、その心理的な背景を具体的に見ていきましょう。
理由1:語感が固く、不自然に感じられる
「承知です」はもともと古風な表現で、口語的なやり取りには少し堅すぎる印象を与えます。
それを現代のチャットやメールで使うと、妙に機械的で冷たい印象になるのです。
たとえば、上司から「明日の会議は10時に変更です」と言われて「承知です」と返すと、
「了解しました」よりも無機質に感じられ、「温度のない返事だな」と思われることがあります。
理由2:敬語として中途半端に聞こえる
「承知しました」や「承知いたしました」は敬語として完成された形です。
一方、「承知です」は謙譲の助動詞「する」や「いたす」が抜けているため、「語尾が未完成」に感じられる人もいます。
そのため、「承知です」と言われると「何か足りない」「違和感がある」と感じる人が出てくるのです。
理由3:使い方次第で“上から目線”に見える
ビジネスでは、「承知しました」は相手の指示や依頼を「謙って受け入れる」表現ですが、「承知です」はややドライな印象になります。
特に上司や取引先に使うと、「はい、わかってますけど?」というぶっきらぼうな印象を与える場合があります。
つまり、「承知です」が“失礼”と感じられる背景には、言葉そのものよりも相手との関係性や文脈が大きく関わっているのです。
「承知です」と「承知しました」「承知いたしました」の違いと使い分け方
敬語は相手との距離や立場に応じて使い分けるのが基本です。
ここでは、「承知です」「承知しました」「承知いたしました」の3つの違いを整理し、どの場面で使うのが適切かを明確にしましょう。
「承知しました」:もっとも汎用的で自然な敬語
「承知しました」はビジネスの現場で最もよく使われる表現です。
相手の指示や要望を受けて「理解しました」「了解しました」と伝える意味があります。
フォーマルな場面でも違和感がなく、社内外を問わず安全に使えます。
例文:
ご連絡の件、承知しました。
明日の会議は10時開始で承知しました。
このように、上司や取引先に対しても丁寧で自然に伝わります。
「承知いたしました」:最上級の丁寧表現
「承知いたしました」は、「承知」に謙譲語の「いたす」を加えた形で、よりへりくだった表現になります。
相手が目上・社外の人である場合はこちらを使うと安心です。
例文:
ご指示の件、承知いたしました。
ご案内のとおり進めさせていただきます。
言葉の響きが柔らかく、「お客様対応」「上司報告」など最もフォーマルな場面で適しています。
「承知です」:同僚や社内チャット向けの略式
「承知です」は、社内チャット(Teams、Slackなど)や日常的なやり取りで軽く返すときに使えます。
たとえば、同僚から「会議の資料、午後までに共有しますね」と言われた際の返答などです。
例文:
承知です!ありがとうございます。
承知です、ではその方向で進めますね。
ただし、相手が上司や顧客の場合は避け、「承知しました」「承知いたしました」に置き換える方が無難です。
「承知です」を自然に使うコツと失礼にしないポイント
「承知です」は間違いではないものの、使い方を誤ると失礼に聞こえます。
ここでは、違和感を与えずに自然に使うためのコツを紹介します。
ポイント1:チャットや短文では「承知です」でOK
チャットや社内メッセージなど、テンポの早いやり取りでは「承知です」が最もスムーズです。
特に「了解しました」よりもフォーマルに聞こえるため、同僚や上司とのコミュニケーションにも使えます。
ただし、「!」を加えたり、語尾に柔らかさを持たせると印象がぐっと良くなります。
承知です!ありがとうございます。
承知です、よろしくお願いします。
ポイント2:メールでは「承知しました」「承知いたしました」に言い換える
メール文面では丁寧さが重視されます。
特に社外メールでは「承知いたしました」を使うのが安全です。
件名:会議日程変更の件
〇〇株式会社 〇〇様
ご連絡ありがとうございます。
ご案内の件、承知いたしました。
当日は10時にお伺いさせていただきます。
このように、「承知いたしました」+感謝の一文を添えると、より自然で印象が良くなります。
ポイント3:会話ではトーンに注意する
口頭で「承知です」と返すときは、声のトーンがとても重要です。
低く淡々と言うとぶっきらぼうに聞こえますが、明るくハキハキ言えば自然です。
×(悪印象):「承知です(淡々と)」
〇(好印象):「承知です!(明るく)」
「ありがとうございます」「助かります」などを後に添えると、柔らかい印象になります。
「承知です」に違和感を持たれたときの言い換え・フォロー表現
相手が年上や取引先など、少し距離のある関係では「承知です」だけだと軽く見られることもあります。
そんなときに使える自然な言い換えをいくつか紹介します。
丁寧に言い換えるなら
- 承知いたしました。
- 承知しました。
- かしこまりました。
- ご指示の件、拝受いたしました。
「かしこまりました」は接客業でよく使われ、柔らかく上品な印象を与えます。
一方、「拝受いたしました」は書き言葉でフォーマルな書面に適しています。
柔らかく言い換えるなら
- 了解しました。
- わかりました、ありがとうございます。
- 承知しました、よろしくお願いいたします。
「了解しました」は社内向けなら自然ですが、社外では避けた方が良いです。
上司や取引先には「承知しました」「承知いたしました」がベターです。
「承知です」は英語でどう言う?ビジネス英語での自然な言い回し
海外とのやり取りでは、「承知しました」「理解しました」を英語で表現する必要があります。
「承知です」に相当する英語は、状況によって変わります。
基本的な言い換え表現
- I understand.(理解しました)
- Noted.(了解しました)
- I got it.(わかりました)
ビジネスメールでは “Noted with thanks.”(承知いたしました、ありがとうございます)という表現が定番です。
チャットでは “Got it!” や “Understood!” なども自然です。
英文メールの例
Subject: Re: Meeting Schedule
Dear Mr. Smith,
Noted with thanks.
I will attend the meeting at 10 a.m. as scheduled.Best regards,
Hanako Yamada
「Noted with thanks」は簡潔かつ丁寧で、英語圏のビジネス現場でも非常によく使われます。
「承知です」が変に聞こえるときの実例と対処法
「承知です」は文脈を誤ると、“変な返答”に聞こえることもあります。
実際の会話やメール例をもとに、どうすれば自然に直せるかを見ていきましょう。
変に聞こえる例1:謝罪に対して「承知です」
A「ご迷惑をおかけしました」
B「承知です」
この場合、「承知です」は冷たく聞こえます。
「お気になさらないでください」「今後気をつけましょうね」などのフォローが自然です。
変に聞こえる例2:感謝の言葉に「承知です」
A「ありがとうございます」
B「承知です」
感謝に対して「承知です」は違和感があります。
この場合は「こちらこそありがとうございます」「助かりました」で返すのが自然です。
変に聞こえる例3:依頼前に「承知です」
A「資料をお願いできますか?」
B「承知です」
依頼に対しては「かしこまりました」「承知しました」と答えるのが適切です。
承知=理解した後の返答なので、依頼段階ではまだ早いのです。
まとめ
「承知です」は間違いではありませんが、敬語としてはややフラットでカジュアルな表現です。
社内チャットでは自然に使えますが、上司や取引先など目上の相手には「承知しました」「承知いたしました」が安心です。
違和感を持たれないポイントは、
- 相手との関係性を意識する
- 文脈に合わせて言葉を選ぶ
- 「ありがとうございます」「よろしくお願いいたします」を添える
そして、英語では “Noted with thanks.” が最も近い表現です。
つまり、「承知です」は使い方次第で印象が180度変わる言葉。
正しく使い分ければ、相手から「言葉が丁寧で感じの良い人」と思われるようになりますよ。




























