「さることながら」の正しい意味と使い方|ビジネスで恥をかかない例文と言い換え集

ビジネス文書やスピーチの中で見かける「さることながら」。一見フォーマルで格調高い表現ですが、正しく理解して使えている人は意外と少ないです。
「意味はなんとなく分かるけれど、どんな場面で使えばいいの?」「上司や取引先にも使って大丈夫?」と感じたことはありませんか?
この記事では、「さることながら」の正しい意味や文法的な成り立ちから、ビジネス文書・会話での自然な使い方、さらに「もさることながら」や言い換え表現までを詳しく解説します。
読み終えるころには、「さることながら」をスマートに使いこなせる“語彙力あるビジネスパーソン”になっているはずです。


目次

「さることながら」の意味と文法的な成り立ち

まずは、「さることながら」という言葉の基本的な意味と構造をしっかり理解しておきましょう。
文法的な理解があれば、使う場面やニュアンスも自然に判断できるようになります。

「さる」の漢字と意味

「さる」は漢字で書くと「然る」となります。
「然る」は“そのような”“しかるべき”という意味を持つ古語です。
つまり、「さることながら」は直訳すると「そのようなことであるのはもちろん」となり、現代語では「〜はもちろん」「〜も同様に」といった意味になります。

例:

経験もさることながら、人柄の良さが評価されている。
(=経験ももちろんだが、人柄の良さも高く評価されている)

このように、「AもさることながらB(AはもちろんB)」という形で使われるのが一般的です。

「さることながら」の文法構造

「さることながら」は、
「然る(さる)」+「こと」+「ながら」
という3つの要素から成り立っています。

  • 然る(さる) …「そのような」「それに関して」といった指示の意味
  • こと … 事柄を名詞化する助詞
  • ながら … 「〜でありつつ」「〜もまた」と並列を表す接続助詞

これらが合わさることで、「前の事柄もそうだが、後の事柄も〜だ」というニュアンスを作り出します。


「さることながら」の使い方と基本ルール

次に、「さることながら」を使う際の基本的な文法ルールと使い方を確認していきましょう。
特にビジネス文書では誤用されやすいので注意が必要です。

基本の使い方:「AもさることながらB」

「さることながら」は、基本的に**「AもさることながらB」という構文で使います。
つまり、「Aも重要だが、それ以上にBが大切」という
対比・強調の表現**です。

例文:

実績もさることながら、誠実な対応が信頼を生んでいる。
技術力もさることながら、チームの団結力が成功の鍵となった。

このように、Aの事実を認めつつ、Bをさらに強調したいときに使います。
逆に、「Aさることながら」だけでは文が不完全になります。
必ず「B(後半)」の要素を続けるのがルールです。

間違えやすい使い方

  • 誤り:「ご尽力いただいたこと、さることながら感謝申し上げます」
     →この場合、「さることながら」の前後が対比になっておらず不自然です。
  • 正しい形:「ご尽力もさることながら、ご指導いただいたことに感謝申し上げます」

このように、「さることながら」を使うときは、2つの事柄を対比的に並べるのがコツです。


「もさることながら」と「さることながら」の違い

ネット上では「もさることながら」と書かれている例を多く見かけます。
結論から言うと、「もさることながら」と「さることながら」はどちらも正しい日本語ですが、使い方に少し違いがあります。

「もさることながら」はより自然で一般的

現代の日本語では、「もさることながら」の方が自然で柔らかい印象になります。
これは、「も」をつけることで前の事柄をより強調できるためです。

例文:

経験もさることながら、熱意のある姿勢が印象的だった。
外見もさることながら、内面の優しさが魅力的だ。

このように「も」をつけることで、「〜もさることながら〜」という“並列+強調”のリズムが整い、聞き手にスッと入ります。

「さることながら」はやや硬い文語表現

一方、「さることながら」は少し堅い印象を与えます。
文語的・書き言葉的な響きがあり、ビジネス文書やスピーチ、新聞・社説などで使われることが多いです。

例文:

実績さることながら、理念への共感が採用の決め手となった。
品質さることながら、安全性の高さにもこだわっている。

つまり、口語では「もさることながら」、文語では「さることながら」と覚えると良いでしょう。


「さることながら」はビジネスで使える?敬語としての位置づけ

「さることながら」は古風な日本語表現なので、「ビジネスで使っても大丈夫?」と不安になる人も多いです。
ここでは、ビジネスシーンでの使い方と注意点を見ていきましょう。

ビジネス文書では使えるが、堅すぎないように注意

「さることながら」は目上の人や取引先に対して使っても問題ありません。
ただし、やや堅い印象になるため、ビジネスメールでは文調のバランスを意識することが大切です。

例文:

このたびはご多忙の中、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。
製品品質もさることながら、迅速な対応に深く感謝申し上げます。

フォーマルな印象を与えられますが、日常的なメールでは「〜もさることながら」はやや仰々しい印象になることも。
会議の議事録やプレゼン資料など、「文章として読む」場面での使用が適しています。

「目上」に使うときの注意点

「さることながら」は目上の人に使っても失礼ではありません。
ただし、「目上の人の行為を主語にする場合」には注意が必要です。
謙譲語ではないため、相手の行為に「〜もさることながら」とつけると、少し不自然になる場合があります。

悪い例:

部長がご尽力くださったこともさることながら〜(×)

良い例:

部長のご尽力もさることながら、チーム全体の協力も大きかったです。(〇)

このように、「さることながら」はあくまで“並列・強調”の構文であり、謙譲表現としての機能はありません。


「さることながら」の言い換え表現と自然な使い分け方

「さることながら」は便利ですが、連発すると重く感じることがあります。
ここでは、同じ意味を持ちながらビジネスメールでも使いやすい言い換え表現を紹介します。

使いやすい言い換え一覧

言い換え表現ニュアンス・使い方
〜はもちろん一般的で口語的。やや軽い印象。
〜もさることながらフォーマルでやや上品。書き言葉向き。
〜は言うまでもなく論理的で説明文に向く。
〜に加えて事実を並列に扱うときに自然。
〜のみならず硬めのビジネス文書で使いやすい。
〜だけでなく会話でも使える柔らかい表現。

例文比較:

経験もさることながら、誠実な対応が魅力だ。
経験はもちろん、誠実な対応が魅力だ。
経験に加えて、誠実な対応が魅力だ。

同じ意味でも、文体のトーンが微妙に変わります。
会話では「〜はもちろん」、報告書やプレゼン資料では「〜もさることながら」が自然です。


「さることながら」を使ったビジネス例文集

実際に使えるビジネスシーン別の例文を紹介します。
社内文書、スピーチ、プレゼン、メールなどで応用できます。

社内報告・資料での例

売上の拡大もさることながら、顧客満足度の向上を重視しています。
技術革新もさることながら、人材育成が今後の課題です。

挨拶・スピーチでの例

ご尽力もさることながら、常に温かいお心遣いを賜り感謝申し上げます。
成果もさることながら、皆さまの努力と協力の賜物です。

メールでの例

ご提案内容もさることながら、そのスピード感に感銘を受けました。
ご支援もさることながら、いつもご配慮いただきありがとうございます。

面接・自己PRでの例

経験もさることながら、課題解決への姿勢を評価いただけたと思います。
知識もさることながら、実行力の面で貢献できると考えています。


「さることながら」は方言?「さることながら 北見」という検索の真相

一部で検索される「さることながら 北見」というキーワード。
これは、北海道北見地方の方言と混同されるケースがあるようです。
しかし、「さることながら」は標準日本語であり、方言ではありません。

北見地方では「さる(猿)」という言葉が別の意味で使われることがあり、それが混同された形跡と考えられます。
つまり、「さることながら 北見」は偶然の一致であり、「方言起源」ではないというのが正確な情報です。


まとめ

「さることながら」は、「〜はもちろん」「〜も同様に」という意味を持つ格調高い日本語表現です。
「経験もさることながら」「品質もさることながら」のように、2つの事柄を対比して後者を強調するのが正しい使い方。
ビジネスでも使えますが、文章のトーンを見極めて使うのがポイントです。

  • カジュアルには「〜はもちろん」「〜に加えて」
  • フォーマルには「〜もさることながら」「〜のみならず」

を使い分けることで、文章の印象を自在に調整できます。
上手に活用すれば、あなたの文章は一段と洗練され、信頼感を与えるビジネス文書に仕上がりますよ。

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