プロセスオーナーとは?役割から権限と責任範囲をわかりやすく整理

職場の中で、自分の部署の仕事は完璧なのに、なぜか会社全体の業務がスムーズに進まないと感じることはありませんか。それは、部門をまたぐ業務の「流れ」を管理する責任者がいないことが原因かもしれません。この記事では、業務効率化の鍵を握るプロセスオーナーという役割について、その定義や具体的な責任、権限の範囲を徹底的に解説します。この記事を読めば、組織の壁を取り払い、成果を最大化するための具体的な手法が手に入りますよ。

目次

プロセスオーナーの役割とは?ビジネスプロセス管理(BPM)における定義をわかりやすく解説

ビジネスの現場でよく耳にするようになったプロセスオーナーという言葉ですが、直訳すると「業務プロセスの所有者」という意味になります。具体的には、特定の業務がスタートしてからゴールにたどり着くまでの「一連の流れ(プロセス)」に対して、全責任を持つ人のことを指します。従来の組織では、営業部長は営業の数値、製造部長は製造の効率といったように、自分の担当範囲だけを見るのが一般的でした。しかしプロセスオーナーは、部署の垣根を越えて、顧客に価値が届くまでの全体の流れを俯瞰して管理します。

例えば、製品を注文してから顧客の手元に届くまでのプロセスを考えてみましょう。ここには営業、受注管理、在庫確認、出荷、配送といった複数の部署が関わっています。各部署が自分たちの効率だけを追求すると、部署間の引き継ぎで待ち時間が発生したり、情報の食い違いが起きたりすることがあります。プロセスオーナーは、このような「部署の谷間」で起きる問題を解消し、プロセス全体のパフォーマンスを最適化する役割を担っているのです。

プロセスオーナーが求められる背景には、ビジネスプロセス管理(BPM)という考え方があります。これは、業務の流れを継続的に改善し続けるマネジメント手法のことです。変化の激しい現代では、一度作った仕組みがすぐに古くなってしまいます。そのため、常にプロセスを監視し、必要に応じて柔軟に作り変えていくリーダーが必要なのです。具体的にどのような活動を行うのか、いくつかの重要なポイントに分けて見ていきましょう。

  • 業務プロセス全体の設計と標準化を行い、誰がやっても同じ品質で成果が出る仕組みを作る
  • プロセスの成果を測定するための指標(KPI)を設定し、定期的に進捗をチェックする
  • 現場の課題を吸い上げ、ボトルネック(全体の流れをせき止めている箇所)を解消するための改善策を実行する
  • 部署間で利害が対立した際に、全体最適の視点から調整を行い、意思決定を下す

これらの活動を通じて、プロセスオーナーは単なる管理職ではなく、業務のデザイナーとしての役割を果たします。現場の担当者が迷わず動けるように、明確なルールや手順を整備することが、組織全体の生産性向上に直結するのです。

業務プロセス全体の設計図を描き、エンドツーエンドの視点で最適化を進める方法

プロセスオーナーの最も基本的かつ重要な仕事は、業務の「エンドツーエンド(端から端まで)」の設計です。これは、顧客のニーズが発生してから、そのニーズが満たされるまでの全工程を一つの線として捉えることを意味します。多くの場合、業務はマニュアル化されていても、それは部署単位のものに留まりがちです。プロセスオーナーは、それらを統合し、会社全体の視点で最も効率的なルートを描き出します。

設計の段階では、現状の業務フローを可視化することから始めます。誰が、いつ、どのような情報を使い、何を出力するのかを明確にしていきます。この作業を行うと、驚くほど多くの「無駄な作業」や「重複した確認工程」が見つかるものです。例えば、前工程ですでにチェック済みの内容を、後工程でもう一度最初から確認しているようなケースです。これらを整理し、スムーズな流れを再構築することが、プロセスオーナーの腕の見せ所と言えるでしょう。

また、標準化も欠かせない要素です。特定のベテラン社員にしかできない「属人化した業務」を排除し、誰でも高い水準で実行できるプロセスを構築します。これにより、担当者の交代や急な欠勤があっても、業務が滞るリスクを最小限に抑えられます。標準化されたプロセスは、後で説明するデジタル化や自動化(RPAの導入など)を進めるための土台にもなります。

プロセスの成果を可視化し、定量的なデータに基づいて改善の意思決定を行うコツ

プロセスを設計しただけでは十分ではありません。そのプロセスが本当に機能しているのか、狙い通りの成果が出ているのかを数字で把握する必要があります。プロセスオーナーは、リードタイム(作業開始から完了までの時間)、コスト、エラー率、顧客満足度などの指標を設定し、これらをリアルタイムで監視する仕組みを整えます。

データに基づいた管理を行う最大のメリットは、感情や主観に左右されない議論ができる点にあります。例えば、「最近なんとなく忙しい」という現場の声に対し、データを見れば「特定の承認工程で平均2日停滞している」という事実が判明します。原因が明確になれば、対策も打ちやすくなりますよね。プロセスオーナーは、こうしたデータを武器に、経営層や現場に対して納得感のある改善案を提示します。

さらに、定期的なプロセスレビューを実施することも大切です。月に一度、あるいは四半期に一度、設定したKPIを振り返り、目標に届いていない場合はその真因を分析します。外部環境の変化に合わせて、プロセス自体を修正する必要があるかもしれません。このように、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)をプロセス全体の単位で回し続けることが、長期的な競争力を生み出すのです。

プロセスオーナーの権限と責任範囲はどこまで?業務改善を成功させるための決定権の持ち方

プロセスオーナーがその役割を全うするためには、適切な権限が与えられている必要があります。責任だけを押し付けられて、何も決める権利がない状態では、組織を変えることは不可能です。では、具体的にどのような権限を持つべきなのでしょうか。一般的に、プロセスオーナーには「プロセスの設計権」「改善の実施権」「リソースの配分に対する影響力」が必要だと言われています。

まず「プロセスの設計権」についてですが、これは業務のやり方そのものを決定する権利です。例えば、新しいITツールを導入して入力作業を自動化するとか、不要な承認ステップを廃止するといった決断が含まれます。この時、各部署のマネージャーとの調整が必要になりますが、最終的なプロセスの形についてはプロセスオーナーが決定権を持つのが理想的です。そうでなければ、各部署の都合が優先され、結局は非効率な「妥協の産物」が出来上がってしまうからです。

次に「責任範囲」について考えてみましょう。プロセスオーナーの責任は、単に「作業を管理すること」ではなく、「成果を出すこと」にあります。プロセスの最終的なアウトプットが顧客を満足させているか、会社に利益をもたらしているかという結果に対して責任を負います。もしプロセスの中でトラブルが発生すれば、それがどの部署で起きたものであっても、解決のために動かなければなりません。このように、広い視野と強い当事者意識が求められる役職なのです。

  • 業務フローの変更や、使用するツールの選定に関する最終的な決定を下す権限
  • 部署をまたぐタスクの優先順位を整理し、全体にとって最適な順序を指示する権限
  • 設定したKPIの達成状況を監視し、未達の場合に是正措置を講じる責任
  • プロセスに関わる各部署の担当者に対し、必要な教育やトレーニングを促す責任

プロセスオーナーの権限は、従来の「ライン(階層)組織」の権限とぶつかることがよくあります。例えば、営業部の社員の働き方について、営業部長とプロセスオーナーの意見が食い違う場合です。このような衝突を避けるためには、あらかじめ組織内でプロセスオーナーの立ち位置を明確にし、トップマネジメントがその権限を公式に認めていることが不可欠です。権限と責任が明確であればあるほど、プロセスオーナーは自信を持って変革をリードできるようになりますよ。

各部署の利害を調整し、全体最適を実現するためのコミュニケーションの進め方

プロセスオーナーが直面する最大の壁は、各部署の「個別最適」との戦いです。各部署にはそれぞれの目標があり、都合があります。例えば、在庫を減らしたい物流部門と、欠品を防ぎたい営業部門では、意見が対立するのは当然です。ここでプロセスオーナーは、どちらか一方に肩入れするのではなく、「会社全体として、顧客に最高の価値を届けるにはどうすべきか」という視点で調整を図ります。

調整をスムーズに進めるコツは、共通のゴールを再確認することです。対立が起きたとき、それぞれの部署の担当者は「自分の仕事を楽にしたい」「自分の評価を上げたい」という視点に陥りがちです。そこでプロセスオーナーが、「このプロセスを改善することで、お客様への納期が3日短縮され、解約率が下がります。それは結果的に全部署の利益になります」と、より高い次元の目的を提示するのです。

また、日頃からのコミュニケーションも欠かせません。現場の苦労を知らずに机上の空論でプロセスを押し付けても、誰もついてきてくれません。定期的に各現場に足を運び、ヒアリングを行うことで、「この人は自分たちのことを理解してくれている」という信頼関係を築くことが大切です。信頼があるからこそ、耳の痛い改善案であっても、現場は受け入れてくれるようになるのです。

リソースの最適配分と予算のコントロールにおけるプロセスオーナーの立ち回り

業務プロセスの改善には、多くの場合、ITシステムの改修や新しいツールの導入、あるいは人員の配置換えなど、コストやリソースが必要になります。プロセスオーナーは、これらのリソースをどこに重点的に投入すべきかを判断する役割も担います。限られた予算の中で、最も大きな効果が得られるのはどの部分かを見極める「投資対効果」の視点が求められます。

具体的には、経営層に対して改善プロジェクトの予算承認を求めるためのビジネスケースを作成します。現状のプロセスでどれだけの損失(時間、コスト、機会損失)が発生しており、改善によってそれがどう変わるのかを数字で証明するのです。プロセスオーナーが明確な根拠を持って予算を獲得し、それを適切に分配することで、現場の改善活動は加速します。

リソースに関しては、人の配置も重要なテーマです。特定のプロセスに負荷が集中している場合、部署の枠を超えて応援を出すような柔軟な仕組みを提案することもあります。プロセスオーナーが全体を見渡しているからこそ、「今、会社全体でどこに人を充てるべきか」という最適な判断が可能になるのです。

プロセスオーナーとプロセスマネージャーの違いを比較|それぞれの役割分担と連携のコツ

プロセスオーナーについて調べていると、「プロセスマネージャー」という言葉もよく出てきますよね。この二つは名前が似ているため混同されやすいのですが、役割の性質は大きく異なります。簡単に言うと、プロセスオーナーは「戦略と設計(What / Why)」を担当し、プロセスマネージャーは「実行と運用(How)」を担当します。この違いを正しく理解し、連携させることが、スムーズな業務運営には欠かせません。

プロセスオーナーは、プロセスの「持ち主」として、そのプロセスが将来どうあるべきかというビジョンを描きます。どのような指標で評価するのかを決め、必要なリソースを確保するのが主な仕事です。いわば、オーケストラの指揮者のような存在です。一方のプロセスマネージャーは、その設計図に基づいて、日々の業務が計画通りに動いているかを管理します。現場で問題が起きれば即座に対応し、作業の進捗を管理する、いわば「現場監督」のような役割です。

多くの企業では、プロセスオーナーには役員や部長クラスの意思決定者が任命され、プロセスマネージャーには課長やチームリーダークラスの実務に精通した人が選ばれます。この二人がタッグを組むことで、戦略的な視点と現場の実践力の両方を兼ね備えた、強いプロセスが出来上がります。もし、この役割分担が曖昧だと、戦略はあるけれど実行が伴わない、あるいは現場で必死に動いているけれど方向性がバラバラ、といった状況に陥ってしまうかもしれません。

  • プロセスオーナーは「プロセスの形」を決め、プロセスマネージャーは「プロセスの運用」に責任を持つ
  • プロセスオーナーは中長期的な改善を、プロセスマネージャーは短期的なトラブル対応や進捗管理を行う
  • 予算の獲得や他部署との交渉はオーナーが行い、メンバーへの具体的な作業指示はマネージャーが行う
  • 成果の報告はマネージャーからオーナーへ、フィードバックや新しい方針の提示はオーナーからマネージャーへ流れる

このように、役割が分かれているからこそ、お互いの信頼関係が重要になります。プロセスオーナーが現場の細かな作業に口を出しすぎるとマネージャーの主体性が失われますし、逆にマネージャーが現場の都合ばかりを優先してオーナーの決めたルールを無視すると、全体最適は崩れてしまいます。週に一度のミーティングを持つなど、密な連携を通じて、同じ目標に向かって進む体制を作ることが成功の秘訣ですよ。

戦略的な意思決定を行うオーナーと現場の運用を支えるマネージャーの理想的な関係

プロセスオーナーとプロセスマネージャーがうまく機能している組織では、情報の流れが非常にスムーズです。マネージャーは現場で気づいた小さな改善点や、プロセスの不具合をオーナーに報告します。オーナーはその情報を元に、より大きな視点でのプロセス変更や、他部署との調整が必要かどうかを判断します。このキャッチボールが高速で回ることで、組織は常に進化し続けることができるのです。

例えば、新しい受注システムを導入した場面を想像してみてください。オーナーは「全社の受注スピードを20%上げる」という目標を掲げ、システムの導入を決定しました。マネージャーは現場の社員に対して操作方法をレクチャーし、実際の入力作業が滞りなく行われるよう見守ります。もし現場から「この入力画面が使いにくい」という不満が出れば、マネージャーがそれを吸い上げ、オーナーがシステムベンダーに対して改修の交渉を行う、といった具合です。

このような理想的な関係を築くためには、お互いの「責任範囲の境界線」を明確にしておくことが大切です。どこまではマネージャーの判断で決めてよくて、どこからはオーナーの承認が必要なのか。これをドキュメント化しておくことで、無駄な確認作業が減り、意思決定のスピードが格段に上がります。お互いの専門性を尊重し、補完し合える関係を目指したいですね。

部門長(ラインマネージャー)との役割の違いを整理してコンフリクトを防ぐ方法

ここで、もう一つの重要な役割との違いも整理しておきましょう。それは「部門長(ラインマネージャー)」です。営業部長や経理部長といった、従来の組織図における垂直的な責任者のことです。プロセスオーナーは業務の流れを横断的に見る「横の責任者」であるのに対し、部門長は部下の評価や教育、専門スキルの向上を担う「縦の責任者」です。

この「縦」と「横」が交差するマトリックス組織では、どうしても権限の衝突(コンフリクト)が起きやすくなります。例えば、プロセスオーナーが「プロセスのためにこの作業を優先してほしい」と指示しても、部門長が「自分の部署の目標達成のために別の作業をしろ」と部下に命じるようなケースです。これでは現場の社員が誰の指示に従えばいいか迷ってしまいます。

この問題を解決するには、評価制度を見直すのが効果的です。社員の評価を部門長だけで決めるのではなく、プロセスオーナーからの評価も一定の割合で組み込むようにします。そうすることで、部門長もプロセスの成功に協力する動機が生まれます。また、定期的な三者協議の場を設け、全社的な優先順位を共有することも有効です。「誰が偉いか」ではなく「どの仕事が優先か」を基準に判断できる文化を、プロセスオーナーが中心となって育てていきましょう。

プロセスオーナーに必要なスキルと資質とは?社内横断的なリーダーシップを発揮するポイント

プロセスオーナーという大役を任される人には、どのような能力が求められるのでしょうか。単に実務に詳しいだけでは務まりません。なぜなら、その仕事の本質は「変革」にあるからです。現状維持を好む組織の中で、新しいやり方を提案し、反対勢力を説得し、最後には結果を出さなければなりません。そのためには、非常に高度でバランスの取れたスキルセットが必要になります。

まず第一に挙げられるのは、「システム思考(物事を全体像で捉える力)」です。目の前の小さな問題に囚われるのではなく、それがプロセス全体のどこに影響しているのか、根本的な原因はどこにあるのかを構造的に理解する力です。チェスのように、一つの駒を動かすことで盤面全体がどう変わるかを先読みする能力と言ってもいいでしょう。この視点があるからこそ、部分最適ではない、本質的な改善策を打ち出すことができるのです。

次に不可欠なのが、「コミュニケーション能力と交渉力」です。プロセスオーナーは、自分に直接的な人事権がない他部署の人たちを動かさなければなりません。命令ではなく、論理と共感によって人を動かす必要があります。「このプロセスを変えることが、あなたたちの部署にとってもこれだけのメリットがあるんです」と粘り強く説得し、合意を取り付ける力は、技術的な知識以上に重要かもしれません。

  • 複雑な業務フローを論理的に解き明かし、ボトルネックを特定する分析力
  • 現場の不満や懸念を真摯に聞き、それを踏まえた解決策を提示する高い共感力
  • データを活用して現状を可視化し、客観的な証拠に基づいて周囲を動かすデータリテラシー
  • 困難な状況でも目的を見失わず、最後までやり遂げる強い意志とリーダーシップ

また、ビジネスプロセス管理(BPM)に関する専門知識や、ITツール(BPMツールやERPなど)への理解も、もちろん大切です。しかしこれらは、後から学ぶことができます。それよりも、変化を恐れず、組織の壁を越えてより良い仕組みを作りたいという「マインドセット」こそが、プロセスオーナーの最も重要な資質と言えるでしょう。周囲から「あの人が言うなら協力しよう」と思われるような、人間的な魅力も大きな武器になりますよ。

複雑な問題をシンプルに構造化し、改善の道筋を提示する論理的思考の鍛え方

多くの部署が関わるプロセスは、放っておくとどんどん複雑になります。例外処理が増え、場当たり的な対応が積み重なり、誰も全貌がわからない「ブラックボックス」になってしまうことも珍しくありません。プロセスオーナーは、この複雑に絡まった糸を解きほぐし、誰もが理解できるシンプルな構造に整理する役割を担います。

このスキルを磨くためには、日頃から「なぜ?」を繰り返すことが有効です。ある作業が遅れているとき、担当者のスキルのせいにするのではなく、「なぜその作業が必要なのか?」「なぜそのタイミングなのか?」「なぜその情報が必要なのか?」と深掘りしていきます。そうすると、実は前工程からの情報が不十分であるとか、承認ルールが古いままであるといった、構造的な問題が見えてきます。

構造化ができたら、それを視覚的に表現する力も重要です。フローチャートや図解を使って、「現状はこうですが、ここをこう変えるとこうなります」と一目でわかるように示すのです。複雑なことを難しく説明するのは簡単ですが、複雑なことをシンプルに説明するのは高い知性が必要です。プロセスオーナーがクリアなビジョンを示すことで、現場のメンバーも「これならできそうだ」という希望を持つことができるようになります。

変化を嫌う現場の抵抗を乗り越え、協力体制を築くための心理的アプローチ

どんなに素晴らしい改善案であっても、人は「変化」に対して本能的に抵抗を感じます。今まで慣れ親しんだやり方を変えるのは面倒ですし、自分の役割がなくなるのではないかという不安も生じます。プロセスオーナーは、こうした人間の心理を深く理解し、優しく、かつ力強く、組織を導いていかなければなりません。

抵抗を和らげる一つの手法は、「クイックウィン(小さな成功)」を早めに作ることです。いきなり全社的な大改革をぶち上げるのではなく、まずは特定の小さな工程で確実に成果が出る改善を行い、その喜びを現場と共有します。「本当だ、楽になった!」という実感があれば、その後の大きな変化に対しても前向きになってもらえます。成功体験こそが、最大の説得材料になるのです。

また、「巻き込み」の技術も重要です。プロセスオーナーが一人で決めて押し付けるのではなく、初期の段階から各部署のキーマンをプロジェクトに招き入れ、一緒にプロセスを設計するようにします。自分の意見が反映されたプロセスであれば、人はそれを自分事として捉え、積極的に守ろうとするものです。「私たちが作った新しいやり方」という誇りを持ってもらえるような仕掛け作りを、常に意識したいですね。

組織でプロセスオーナーを任命・導入する際の手順と失敗しないための注意点

ここまでプロセスオーナーの重要性についてお話ししてきましたが、「よし、うちの会社でも導入しよう!」と思ったときに、何から始めればいいのでしょうか。ただ誰かに「今日から君がプロセスオーナーだ」と告げるだけでは、うまくいきません。組織としての正式な導入プロセスが必要です。失敗しないための導入手順と、よくある落とし穴について詳しく見ていきましょう。

最初のステップは、改善すべき「コア・プロセス」を特定することです。会社にとって最も価値を生み出している、あるいは最も問題が起きている重要なプロセスを一つ選びます。例えば「受注から代金回収まで」や「新製品開発」などです。最初からすべての業務にプロセスオーナーを置こうとすると、力が分散してしまいます。まずは一つのプロセスで成功モデルを作るのが定石です。

次に、そのプロセスのオーナーとして最適な人物を任命します。先ほど説明したスキルや資質に加え、組織内での一定の影響力を持つ人物が望ましいでしょう。任命の際には、社長や役員が全社に向けて「このプロセスについては、彼(彼女)に決定権を委ねる」と公式に宣言することが非常に重要です。このスポンサーシップ(バックアップ)がなければ、他部署との調整で必ず行き詰まってしまいます。

  • どの業務を誰が管理するのかを定義した「プロセス・ガバナンス(統治ルール)」を策定する
  • プロセスの現状を調査(アズ・イズ分析)し、目指すべき姿(トゥー・ビー設計)を描く
  • 定期的にプロセスオーナーが集まり、全社的な優先順位やリソース配分を話し合う会議体を設ける
  • プロセスオーナーとしての活動を正当に評価し、キャリアパスの一部として位置づける

導入にあたっての注意点は、プロセスオーナーを「孤独」にさせないことです。一人の力で組織を変えるのは限界があります。専門のBPM推進チームをサポートにつけたり、外部のコンサルタントのアドバイスを受けたりできる体制を整えましょう。また、導入初期は成果が出るまで時間がかかることもあります。短期的な数字だけでなく、業務の可視化が進んだ、コミュニケーションが改善されたといった、定性的な変化も評価してあげることが、息の長い取り組みにするためのポイントですよ。

任命されたプロセスオーナーが最初に手をつけるべき現状把握の具体的なステップ

プロセスオーナーに選ばれた人が、初日にやるべきことは何でしょうか。それは、現場のリアルな姿を徹底的に知ることです。書類上のマニュアルを読むだけでは不十分です。実際に作業が行われている現場に行き、担当者がどのような画面を操作し、どのような会話をし、何に困っているのかを自分の目で確かめることから始まります。

具体的な手法としては、「シャドーイング(作業者の後ろについて観察すること)」や「ワークショップ」が有効です。各部署から代表者を集め、巨大な模造紙に業務の流れを付箋で書き出していく作業を行うと、驚くほど多くの発見があります。「えっ、あの部署ではそんな作業をしていたの?」「そのデータ、こっちの部署ではもう使ってないよ」といった声が上がれば、それは改善の宝の山です。

現状が可視化されたら、次に「データの裏付け」を取りに行きます。感覚的な「大変さ」だけでなく、実際にどこで何時間かかっているのか、過去1年のミスは何件だったのかという数字を集めます。この「現場の感覚」と「客観的なデータ」が組み合わさったとき、初めて説得力のある改善の土台が完成します。急がば回れ。この現状把握に時間をかけることが、後の改善スピードを大きく左右することになります。

導入後に陥りがちな「形骸化」を防ぎ、改善を継続させるための仕組み作り

プロセスオーナー制度を導入してしばらくすると、当初の熱量が下がり、活動が形式的になってしまうことがあります。これを防ぐためには、改善活動を「日常の仕事」の中に組み込む必要があります。特別なプロジェクトとしてではなく、毎日のルーティンとしてプロセスをチェックし、改善する文化を育てていくのです。

一つの方法は、ITツールを活用した「プロセスマイニング」の導入です。これは、システムのログデータから実際の業務フローを自動的に可視化する技術です。これを使えば、プロセスオーナーはわざわざ現場に行かなくても、どこで遅延が起きているかをリアルタイムで把握できます。テクノロジーを味方につけることで、管理の負担を減らしつつ、精度の高いガバナンスを維持できるようになります。

また、プロセスオーナー同士のコミュニティを作ることも有効です。異なるプロセスのオーナーが集まり、成功事例や失敗談、他部署との交渉のコツなどを共有します。孤独になりがちな変革リーダーたちが互いに励まし合い、学び合う場があることで、モチベーションを維持しやすくなります。組織全体で「プロセスを良くすることが、自分たちの未来を良くすることだ」という共通認識を持てるよう、プロセスオーナー自身が発信し続けることも大切ですね。

まとめ

プロセスオーナーとは、単なる管理職ではなく、組織に新しい風を吹き込み、業務の流れを最適化する変革のリーダーです。部署の壁を越え、エンドツーエンドでプロセスを管理することで、会社はよりスピーディーに、より高い価値を顧客に提供できるようになります。

その役割は多岐にわたりますが、中心にあるのは「全体最適」という信念です。適切な権限と責任を持ち、データと共感を武器に周囲を動かしていくプロセスオーナーの存在は、これからの変化の激しい時代を生き抜く企業にとって、なくてはならないものになるでしょう。

もし、あなたの組織で仕事が滞っていると感じるなら、それはプロセスオーナーが必要なサインかもしれません。まずは小さなプロセスから、その「持ち主」を決めてみることから始めてみませんか。きっと、組織の可能性が大きく広がっていくはずですよ。

今回の内容について、より具体的な導入事例や、プロセスオーナーを支援するためのツールの選び方などについて、さらにお手伝いできることはありますか?

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