手紙やメールを書く際に欠かせない「時候の挨拶」。しかし、かしこまりすぎる表現では堅苦しくなりすぎてしまい、受け取る相手にプレッシャーを与えることもあります。特に親しい相手やビジネスシーンでのやりとりでは、やわらかい表現を使うことで、より自然で心地よい印象を与えることができます。本記事では、季節ごとのやわらかい時候の挨拶の使い方や例文を紹介し、2月や3月、5月、10月などの具体的なシーン別に活用できる表現も取り上げます。さらに、コロナ禍に配慮した時候の挨拶や、結びの言葉も併せて解説し、初心者でも簡単に取り入れられるように分かりやすく解説します。
やわらかい時候の挨拶とは?
日本の四季は、日々の生活の中に自然な変化と豊かさをもたらしてくれます。そのため、手紙やはがきといった文書の冒頭では、季節の移り変わりを表す「時候の挨拶」がよく用いられます。中でも「やわらかい表現」の時候の挨拶は、堅苦しすぎず親しみやすいため、ビジネスとプライベートのどちらの場面でも重宝されています。
この記事では、やわらかく親しみを込めた時候の挨拶の意味や使い方を解説しながら、春夏秋冬の季節ごとに具体的な例文も紹介していきます。相手にやさしく思いを伝える一文を選ぶ際の参考になれば幸いです。
漢語調との違い
時候の挨拶には大きく分けて2つのスタイルがあります:
- 漢語調:「新緑の候」「寒冷の候」など、格式高い表現。
- 口語調(やわらかい表現):「暖かい日差しに春を感じる季節となりました」など、話し言葉に近い柔らかい表現。
ビジネス文書には漢語調が使われることが多い一方、口語調の表現は、親しい間柄や少しカジュアルなビジネスシーンでも使いやすい点が特徴です。
使い分けのポイント
使用シーン | 適した表現スタイル |
---|---|
フォーマルなビジネス文書 | 漢語調 |
カジュアルな社内連絡や社外メール | 口語調(やわらかい表現) |
親しい人への手紙 | 口語調 |
かしこまりすぎず、自然な言葉を使う
時候の挨拶は、季節感を伝えながら相手への気遣いを表す表現です。しかし、「○○の候」「○○のみぎり」といった古風な表現は、特にビジネスメールやカジュアルな手紙では堅苦しく感じられることがあります。やわらかい表現を取り入れることで、より親しみやすく、自然なやりとりが可能になります。
例:
- 「春の訪れを感じる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。」
- 「秋風が心地よい季節となりましたね。」
- 「梅雨空が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。」
相手の状況に配慮する
季節の変化だけでなく、相手の体調や社会状況に配慮する表現を加えると、より温かみのある文章になります。
例:
- 「寒さが厳しくなってきましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。」
- 「今年の夏も暑さが厳しいですが、体調を崩されませんように。」
- 「秋の長雨が続きますが、お元気でいらっしゃいますか。」
コロナ禍を意識したやわらかい表現
近年は、コロナ禍における配慮を含めた時候の挨拶が求められることもあります。
例:
- 「感染対策が続く日々ですが、ご健康をお祈り申し上げます。」
- 「外出が難しい時期が続きますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。」
- 「新しい生活様式にも少しずつ慣れてきた頃かと思います。どうぞご自愛くださいませ。」
時候の挨拶とは?基本と役割
季節の移ろいを言葉に込めた冒頭表現
「時候の挨拶」とは、手紙やビジネス文書の冒頭に使われる、季節感を表すあいさつ文のことです。特に「拝啓」などの頭語の直後に添えられる一文として、自然な流れを生むために重要な役割を果たします。
たとえば、寒さが残る春先には「まだ寒さの名残がございますが」といった気遣いの言葉が使われるように、日本独特の四季感が盛り込まれています。
なぜ書くのか?──顔が見えないコミュニケーションの潤滑油
時候の挨拶を書くことで、読み手への思いやりや気遣いが伝わります。いきなり本題に入るのではなく、まず相手の体調や気分を伺うことで、手紙にやわらかな印象を持たせ、信頼感を高めることができるのです。
季節ごとのやわらかい時候の挨拶
春は出会いや別れの季節。やさしい言葉で相手の心に寄り添う表現が多く使われます。
春(3〜5月)のやわらかい時候の挨拶
日差しのあたたかさに、春の訪れを感じるようになりましたね。
桜の便りが待ち遠しい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
花粉が気になる時期ですが、やわらかな陽気に心がほぐれる毎日です。
季節の変わり目、ご体調にはお気をつけください。
【3月】春の訪れと新生活の準備
- 「暖かな日差しが心地よい季節となりましたね。」
- 「桜の便りが聞こえる頃となりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。」
- 「新生活の準備でお忙しいかと存じますが、どうぞご無理のないように。」
【5月】爽やかな気候と新緑の季節
- 「新緑がまぶしい季節となりました。いかがお過ごしでしょうか。」
- 「心地よい風が吹き抜ける季節となりましたね。」
- 「初夏の訪れを感じる頃ですが、ご体調にお変わりありませんか。」



夏(6〜8月)のやわらかい時候の挨拶
梅雨の晴れ間が嬉しい季節となりましたね。
雨の中にも、夏の気配が少しずつ感じられるようになってきました。
暑さが増してきましたが、元気にお過ごしでしょうか。
冷たい飲み物が恋しい季節ですね。どうぞご自愛ください。
日差しが強くなり、いよいよ夏本番ですね。
体調を崩しやすい時期でもありますので、無理のないようお過ごしください。



秋(9〜11月)のやわらかい時候の挨拶
朝夕が少しずつ涼しくなり、秋の気配を感じるようになりましたね。
今年もあと数ヶ月かと思うと、時間の早さに驚かされます。
空が高く澄みわたり、過ごしやすい季節になってきました。
木々の色づきとともに、心も落ち着く毎日ですね。
秋の風が心地よくなってまいりましたが、いかがお過ごしですか?
朝晩の冷え込みにお気をつけて、あたたかくしてお過ごしください。

【10月】秋の深まりと温かみのある表現
- 「秋風が涼しく、過ごしやすい季節になりましたね。」
- 「実りの秋を迎え、心も豊かになる頃かと存じます。」
- 「朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりましたので、ご自愛くださいませ。」


冬(12〜2月)のやわらかい時候の挨拶
冷たい風が身にしみる季節になりましたね。
街のイルミネーションに心がほっとする冬のはじまりです。

吐く息も白くなり、冬本番を感じる毎日ですね。
年末に向けて慌ただしくなる頃かと思いますが、体調には十分お気をつけください。
寒さが一段と厳しくなってきました。
お身体を大切に、ぬくもりのある年末をお過ごしくださいね。

【2月】寒さの中にも春の気配を感じる季節
- 「寒さの中にも少しずつ春の気配が感じられる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。」
- 「立春を迎え、少しずつ日が長くなってまいりました。」
- 「梅の花がほころび始め、春の訪れが待ち遠しい季節となりました。」

ポイント|やわらかい時候の挨拶を作るときの工夫
- 「季語」+「相手への気づかい」を自然な日本語でつなぐ
- 「ですね」「でしょうか」などの語尾で会話のようなやさしさを出す
- 「空」「光」「風」「香り」など五感を刺激する描写を取り入れると◎

やわらかい表現での時候の挨拶の結び
やわらかい時候の挨拶には、結びの言葉も丁寧に選ぶことで、文章全体の印象がよりよくなります。
例:
- 「季節の変わり目ですので、くれぐれもご自愛くださいませ。」
- 「どうぞお体を大切に、穏やかな日々をお過ごしください。」
- 「今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。」
時候の挨拶を使う際の注意点
文章全体のバランスを意識する
時候の挨拶が長すぎると、本題が埋もれてしまうことがあります。文章全体の構成としては、以下のように整えると読みやすくなります。
- 頭語(例:「拝啓」)
- 時候の挨拶(やわらかい表現で季節感を出す)
- 相手の健康や繁栄を祈る一文
- 本文(伝えたい内容)
- 結語(例:「敬具」)
気候や地域に合った表現を選ぶ
同じ季節でも地域によって気温や自然の様子は異なります。たとえば、北海道では5月でも寒い日がありますので、「春うらら」などの表現を使う際は注意が必要です。
まとめ
時候の挨拶をやわらかい表現にすることで、相手に親しみやすく、心地よい印象を与えることができます。2月、3月、5月、10月など、季節ごとの適切な言葉を使い分けることで、より自然なコミュニケーションが可能になります。ビジネスシーンやカジュアルなやりとりにも活用できるよう、時候の挨拶の工夫を取り入れてみてください。