新入社員や中途採用者の育成において、「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」は欠かせない要素です。しかし、教育担当者に適した人物を選ばなければ、OJTは形骸化し、職場の生産性や人材定着率を大きく下げる結果につながります。
「ojtという名の放置」「教える側に余裕がない」「人に教えるのが向いていない」──これらの課題は、多くの企業現場で起こっている問題です。本記事では、OJTに向いていない人の具体的な特徴や、その見極め方、教育を成功させるために知っておくべきポイントをビジネス視点から解説します。
OJTとは何か?その目的と基本的な役割
OJTとは、「On-the-Job Training」の略で、実際の業務を通じて仕事の知識やスキルを身につけさせる育成手法を指します。座学や研修室では学べない、現場特有の判断力やコミュニケーション力などを養う目的で広く導入されています。
教育担当者が新人に付き添いながら、リアルタイムで指導するスタイルが主流です。具体的には、業務フローの説明、報連相の仕方、顧客対応のシミュレーションなど、実務と直結した内容を教えることが求められます。
OJTに向いていない人の典型的な特徴
教育は「スキル」だけでなく、「相手の立場に立って教える姿勢」や「人間性」も問われる領域です。OJT担当に向いていない人には、いくつかの共通した特徴があります。
自分の仕事で手一杯になっている
「ojt 余裕がない」状態のまま教育担当を任されると、本人にとっても新人にとっても不幸な結果になります。常に業務に追われている人は、細かい指導やフィードバックを後回しにしがちで、結果として「教えていないのに、やったことにされる」状態が生まれます。
教え方が一方通行で押しつけがましい
「なんでこんなこともできないの?」という態度を取る人は、相手の理解レベルを無視して自分本位に教えてしまう傾向があります。これは「人に教えるのが向いてない」タイプの典型で、相手の思考や理解のプロセスに寄り添う意識が欠けています。
相手の成長に無関心
そもそも「新人の成長=自分の評価」と感じていない人は、教えることに対するモチベーションが低く、フィードバックも表面的になります。こうした態度が続けば、育成どころか退職リスクを高める要因にもなります。
「ojtという名の放置」が起きる原因と実態
OJT制度があるにもかかわらず、実際には新人が放置されてしまう職場も存在します。これは制度の問題というより、「誰がOJTを担っているのか」という人的要素によるものが大きいです。
放置が発生しやすい環境とは
- 教育担当者の業務が多忙で余裕がない
- 組織としてOJTに対する評価指標がない
- 新人からの質問がしづらい雰囲気がある
- 教える内容のマニュアル化が進んでいない
これらの条件が揃うと、表面上はOJTが行われているように見えても、実際は「誰にも相談できない新人」が孤立し、早期離職につながりやすくなります。
OJTに向いている人の特徴とは
一方で、OJT担当者として優れている人には、次のような要素が見られます。
相手の理解度に合わせて伝えられる
説明の際に「この人はどこで詰まっているのか?」と考え、言葉を変えたり、例を交えたりして伝え直せる人は、OJTで高い成果を上げやすい傾向があります。
自分の経験を言語化できる
自分が仕事を「なんとなく」ではなく、仕組みとして理解し直し、それを言語化して他人に伝えるスキルを持つ人は、教育役として非常に頼りになります。
相手の成長にやりがいを感じられる
「教えて終わり」ではなく、相手が成長していく過程に喜びを感じられるタイプは、自然と継続的な関わりを続けられます。こうした姿勢が、職場全体にポジティブな影響を与えます。
指導者に向いてない人を見抜くポイント
実務では、「経験年数が長いから」「人当たりが良いから」といった安易な理由で教育担当が任命されてしまうケースもあります。しかし、OJTに向いていない人を見極めるには、以下の点をチェックすべきです。
教える場面で感情的になりやすいかどうか
ミスを許容できない、厳しく叱責する、冷たい態度を取る──こうした傾向がある人は、相手の学習意欲を削ぎやすく、教育現場には向いていません。
過去にOJTで問題を起こしていないか
以前に「新人がすぐ辞めた」「教え方に問題があると指摘された」などの実績がある場合、再度OJTを任せることはリスクになります。社内レビューや人事評価と照らし合わせることが重要です。
OJTの受ける側に求められるスタンスとは
OJTがうまくいかない原因を全て指導者側に押しつけるのは正しくありません。受ける側にも、適切なスタンスが求められます。
自分から質問できる勇気を持つ
わからないことを「わからない」と言える雰囲気がなかったとしても、自ら確認・質問できることは、新人として非常に重要なスキルです。
受け身にならず、仮説を持って動く
「これで合ってますか?」という確認を入れながら行動することで、指導者も適切なフィードバックを返しやすくなります。OJTの学習効率は、双方向の姿勢で初めて高まります。
新人教育に向いていない人を選ばない組織づくりのコツ
教育制度を制度だけに頼らず、実効性のある仕組みにするためには、以下のような観点が重要です。
教育担当に選定基準を設ける
「誰でもいい」ではなく、「向き・不向きを見極める仕組み」を人事主導で設計し、教育スキルや適性を評価に組み込むことで、選任の精度を上げることができます。
教えるスキルを社内研修で育成する
OJTそのものに「教え方」の研修がセットになっている会社は非常に少数です。教えることはスキルであるという認識を持ち、OJT担当者にも学びを提供する仕組みがあると効果的です。
まとめ:OJTは「誰が教えるか」で9割決まる
OJTが機能するかどうかは、制度よりも“人選”にかかっています。教育担当に向いていない人に任せてしまえば、新人は早期に辞めてしまい、職場全体の雰囲気も悪化しかねません。
逆に、適性のある人が指導すれば、新人は早く戦力化し、社内の人材育成が好循環で回り始めます。人に教えることは簡単ではありません。だからこそ、企業として「任せてはいけない人」を見抜く目と、「育てられる人」をサポートする体制が求められています。
OJTの質は、組織の未来そのものを左右します。担当者選定は、慎重すぎるくらいがちょうどいいのです。