春を迎える前のこの時期、多くの企業で内定者研修が始まります。学生から社会人への移行期間に設けられるこの研修は、単なる形式的イベントではなく、企業と内定者双方にとって重要な意味を持ちます。一方で「給料が出ない」「拘束時間が長い」「内容がつまらない」といったネガティブな声も多く聞かれ、法的リスクや運用上の課題も見逃せません。本記事では、内定者研修の目的と実態、違法とされるケース、そして企業が求める“地ならし”の意味まで詳しく解説します。
内定者研修とは何か?その目的と基本構造
内定者研修とは
内定者研修とは、企業が内定通知を出した学生に対し、入社までの期間に実施する教育・指導プログラムです。目的は、入社前に必要なマインドセットやビジネスマナー、会社の価値観などを共有し、スムーズな社会人スタートを切ってもらうことにあります。
目的1:ビジネスマインドの醸成
社会人としての基本的な心構えや、責任感を植え付けるのが主な狙いです。「学生気分の払拭」が求められるポイントになります。
目的2:企業文化への理解と適応
企業理念やビジョン、行動指針などを共有することで、入社後のカルチャーギャップを最小化します。
目的3:業務の基本理解・技術習得
営業職や技術職など、職種によっては簡単な実務体験を行うケースもあり、特にIT系企業ではPCやツールの操作研修も含まれることがあります。
実際の内定者研修で「何をする」?
オリエンテーション
会社紹介や事業内容の説明、人事制度などのレクチャーが行われます。
グループワーク(内定者研修 グループワーク 内容)
内定者同士でディスカッションやプレゼンを行うワーク形式が一般的。協調性や主体性の確認が目的です。
マナー研修・敬語トレーニング
名刺交換、電話対応、敬語の使い方など、社会人に必須のビジネスマナーを習得します。
ワークショップ・課題提出
企業によっては、実際の業務に関する課題(営業企画案の立案など)を提出させることもあります。
社員との交流会・懇親会
配属予定部署の社員との交流機会を設け、入社後の人間関係構築をサポートします。
内定者研修が「辛い」と感じる理由と背景
拘束時間が長く自由が奪われる
長時間にわたる座学やレポート提出が負担になりやすく、大学生活やアルバイトとの両立が困難に感じるケースも。
内容が抽象的・実践性に欠ける
「自己分析の再確認」や「将来のビジョン」など抽象的な内容ばかりで、現場との接点を感じられないという不満もあります。
チームワークのストレス
グループワークでの発言量やリーダーシップが求められる一方、人見知りの人には大きなストレスになります。
給料が出ない内定者研修は違法?労働か教育かのグレーゾーン
教育か労働かの判断基準
厚労省の見解では、指揮命令下に置かれ、企業側に利益をもたらす作業を行っている場合は「労働」とみなされ、最低賃金の支払いが必要になります。
違法となる可能性があるケース
- 実務を代行させる(電話応対、データ入力など)
- 長時間拘束し報酬が一切ない
- 無報酬での成果物提出を義務化する
正当な内定者研修の条件
- あくまで教育的目的である
- 就労義務がない
- 研修期間が明確に定められている
「内定者研修がない」企業は問題なのか?
研修の有無は企業の方針次第
中小企業やスタートアップでは、内定者研修を設けていないケースも珍しくありません。コストやリソースの観点から判断されています。
研修がない企業=ブラック企業ではない
重要なのは、入社後のオンボーディング設計や、配属先でのOJT体制。内定者研修がなくても、入社後のフォローが丁寧な企業も多く存在します。
内定者研修で迷いやすい「服装」「準備」の正解とは?
服装の基本:スーツが無難
明確な指示がない場合、男女ともにリクルートスーツが最も安全です。企業によってはビジネスカジュアルでOKなケースもあるため、案内文をよく確認しましょう。
持ち物・準備しておくべきこと
- 筆記用具
- 配布資料を挟むフォルダ
- スケジュール帳やメモ帳
- 質問事項を事前に用意しておくと好印象
「面白い内定者研修」を実施している企業事例
ゲーミフィケーション型ワークショップ
某IT企業では、謎解きやRPG形式でのチーム課題を通じて、協調性や課題解決力を養うプログラムが人気。
社員巻き込み型インターン研修
部署横断でメンターをつけ、実際のプロジェクトを疑似体験させる企業も。実践的なスキルと社内ネットワーク形成の一石二鳥。
社会課題解決型のディスカッション
社会問題やSDGsをテーマにした企画提案など、時事性と自社理念をかけあわせた先進的な取り組みも注目されています。
まとめ|内定者研修は“企業との接続準備”の場、リスクにも目を向けて
内定者研修は、企業が入社前に内定者へ提供する“地ならし”の場であり、カルチャーギャップや早期離職を防ぐ重要なプロセスです。ただし、あまりに業務的すぎたり、無報酬での拘束が長引いたりすれば、違法リスクも孕みます。企業側は適切な設計を、内定者側はその目的を理解し、有意義に参加する姿勢が求められます。
この記事を参考に、自社の内定者研修を見直すきっかけにしてみてください。