バーチャルオフィスは、近年急速に普及しているビジネススタイルの一つです。特に個人事業主やフリーランス、スタートアップ企業にとって、オフィスの賃貸コストを削減しつつ、都心の一等地に住所を持つことができるメリットは大きいです。しかし、バーチャルオフィスを選ぶ際には、登記の可否、雇用保険の対応、さらには信頼性やコストなど、慎重に検討するポイントが多くあります。
本記事では、バーチャルオフィスの選び方、メリット・デメリット、法人登記の可否、雇用保険の申請に関する注意点を初心者にもわかりやすく解説します。実際にバーチャルオフィスを利用する際に注意すべき点や、利用者の口コミなども交えながら、あなたのビジネスに最適な選択肢を見つけられるようにサポートします。
目次
- 1. バーチャルオフィスとは?
- 1.1 バーチャルオフィスの基本概要
- 1.2 バーチャルオフィスの主なサービス内容
- 2. バーチャルオフィスのメリットとデメリット
- 3. バーチャルオフィスの選び方のチェックポイント
- 4. バーチャルオフィスの費用・料金相場は?
- 4.1 1. 住所貸しのみ(法人登記可能)
- 4.2 2. 住所貸し + 郵便物転送
- 4.3 3. 住所貸し + 郵便物転送 + 電話番号貸与・転送
- 4.4 4. 住所貸し + 郵便・電話 + 会議室利用
- 4.5 5. コワーキングスペース併設のバーチャルオフィス
- 4.6 バーチャルオフィスの初期費用・解約費用
- 4.7 バーチャルオフィスの費用を抑えるポイント
- 5. バーチャルオフィスで登記が可能な業種
- 5.1 登記可能な業種
- 5.2 バーチャルオフィスで登記できない業種
- 6. バーチャルオフィスと雇用保険
- 6.1 雇用保険の基本ルール
- 6.2 バーチャルオフィス利用時の注意点
- 7. まとめ
バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスの基本概要
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィスを持たずに、住所や電話番号を利用できるサービスです。オフィスの維持費を大幅に削減しながらも、事業を正式に展開できる仕組みとして、多くの企業や個人事業主が活用しています。
バーチャルオフィスの主なサービス内容
- 法人登記が可能(サービスによって制限あり)
- 郵便物の受け取り・転送
- 電話対応サービス(転送・代行)
- 会議室やコワーキングスペースの利用
- バーチャル秘書サービス
バーチャルオフィスのメリットとデメリット
メリット
1. コスト削減
通常のオフィスを借りる場合、賃貸料や光熱費、設備費がかかりますが、バーチャルオフィスなら月額数千円~1万円程度で利用でき、経費を大幅に抑えることが可能です。
2. 企業イメージの向上
都心の有名な住所(例:東京都千代田区、港区など)を利用できるため、企業の信頼性が向上し、取引先からの評価も高まります。
3. プライバシー保護
自宅住所を事業登録に使用すると、公開情報となるためプライバシーの懸念があります。バーチャルオフィスを利用することで、個人の住所を守ることができるため、安心して事業を運営できます。
デメリット
1. 信頼性の低下リスク
取引先によっては「バーチャルオフィス=実態のない会社」と見なされ、信用が低くなる可能性があります。特に銀行口座の開設などで影響を受ける場合があります。
2. 一部の業種では利用不可
弁護士や税理士、古物商などの業種は許認可申請に実態のある事務所が必要なため、バーチャルオフィスでは開業できません。
3. 追加コストが発生する可能性
郵便転送や電話対応などのオプションサービスを利用すると、基本料金に加えて追加費用が発生するため、契約前に料金プランをしっかり確認しましょう。
バーチャルオフィスの選び方のチェックポイント
バーチャルオフィスを選ぶ際に重要なポイントをより詳細に解説します。オフィスを単に「安いから」「有名だから」と選ぶのではなく、事業の発展に適した選択肢を見つけるための具体的な基準を整理しました。
バーチャルオフィスを選ぶ際の重要な要素
バーチャルオフィスには数多くの事業者が存在し、それぞれ提供するサービスや料金体系が異なります。以下の要素を考慮して、自分のビジネスに最適なオフィスを選びましょう。
法人登記の可否
バーチャルオフィスを選ぶ際に最も重要なポイントの一つが、法人登記が可能かどうかです。すべてのバーチャルオフィスが法人登記に対応しているわけではなく、住所を貸し出すだけのサービスもあります。
チェックポイント
- そのオフィスで法人登記が可能か?
- 過去に法人登記をした実績があるか?
- 銀行口座開設に問題が生じないか?
銀行口座開設時には、オフィスの実態が問われることがあるため、銀行が問題なく承認した実績のあるバーチャルオフィスを選ぶのがベストです。
住所の信頼性
バーチャルオフィスの住所は、事業の信用を高める要素の一つです。特にBtoBのビジネスを行う場合、住所のブランド力は意外と重要になります。
チェックポイント
- 住所が東京都心(千代田区、港区、渋谷区、新宿区など)か?
- 住所をGoogleマップで検索した際に、バーチャルオフィスの名前が明記されていないか?
- 過去にこの住所を使用した企業がトラブルを起こしていないか?
たとえば、銀座・青山・六本木などの高級エリアの住所を持つバーチャルオフィスは、取引先に対して良い印象を与えることができます。ただし、一部の住所はすでに「バーチャルオフィス専用」として広く知られているため、法人登記や銀行口座開設に影響が出ることがあります。

料金体系と追加費用
バーチャルオフィスの基本料金は低価格に見えても、追加料金が発生するケースが多いため、料金体系をしっかり確認する必要があります。
チェックポイント
- 月額基本料金の範囲(法人登記、郵便受取、転送サービスが含まれるか?)
- 郵便転送の頻度と料金(週1回?毎日?送料は別途かかる?)
- 電話転送・代行サービスの料金(月額固定か?従量課金制か?)
- 会議室利用の条件(無料で使えるのか?時間単位の課金か?)
特に「バーチャルオフィスの格安プラン」は、法人登記や郵便転送が別料金となることがあるため、トータルコストで判断することが大切です。
事業に適したサポートがあるか
バーチャルオフィスは単なる住所貸しではなく、業務をスムーズに行うためのサポート体制も重要です。
チェックポイント
- 郵便受取・転送の対応スピードは早いか?
- 電話代行の対応はプロフェッショナルか?
- 会議室が利用できるか?
- 秘書サービスが充実しているか?
- サポート体制(問い合わせ時のレスポンス)
法人の信用度を高めたい場合は、電話代行サービスが丁寧であるかどうかを確認することが大事です。適当な対応をされると、取引先の印象が悪くなってしまいます。
バーチャルオフィス選びで気をつけるべきリスク
バーチャルオフィスには、メリットだけでなく注意すべきリスクもあります。これらを理解したうえで選びましょう。
ブラックリスト化している住所
一部のバーチャルオフィスの住所は、過去に詐欺やトラブルを起こした企業が利用していたため、銀行や金融機関の審査で不利になる可能性があります。
対策
- オフィスの住所をGoogle検索し、過去に問題を起こした企業がないか調査する
- 法人口座を開設した実績のあるバーチャルオフィスを選ぶ
取引先の不信感
「バーチャルオフィス=実態のない会社」というイメージを持つ人もいます。そのため、契約前に取引先がどのように考えるかを考慮する必要があります。
対策
- 取引先には、リモートワークのための住所利用であると説明する
- コワーキングスペース併設型のバーチャルオフィスを選び、必要に応じて対面での打ち合わせを行う
- 電話番号もバーチャルではなく、固定回線の番号を用意する
業種による利用制限
バーチャルオフィスでは開業できない業種もあるため、事前に確認が必要です。
利用できない業種の例
- 弁護士、税理士、司法書士
- 古物商(リサイクルショップなど)
- 人材紹介・派遣業
- 金融・保険業
事業内容によっては、バーチャルオフィスだけでなくレンタルオフィスとの併用を検討するのも選択肢の一つです。
バーチャルオフィス選びで失敗しないための最終チェックリスト
バーチャルオフィス選びの際に、以下のポイントを確認しておくことで、失敗を防ぐことができます。
✅ 法人登記が可能か?
✅ 住所の信頼性は問題ないか?(Google検索で評判をチェック)
✅ 追加費用がどの程度かかるか?(郵便転送、電話代行など)
✅ サポートの質はどうか?(実際に問い合わせてレスポンスを確認)
✅ 過去に詐欺企業が使っていないか?(ブラックリスト化されていないか?)
✅ 事業内容がバーチャルオフィス利用可能な業種か?
✅ 銀行口座開設がスムーズにできるか?(銀行の審査に問題ないか?)
✅ コワーキングスペースが必要なら併設型か?
バーチャルオフィスの費用・料金相場は?
バーチャルオフィスの料金は、所在地・提供サービス・運営会社によって異なります。以下に、一般的な相場を詳しく解説します。
1. 住所貸しのみ(法人登記可能)
- 地方都市・郊外:月額 1,000円~5,000円
- 東京都心・大阪・名古屋の一等地:月額 5,000円~20,000円
▶ 特徴:
最も低コストなプラン。法人登記用の住所を確保するだけで、郵便物転送や電話サービスはオプションになることが多い。
2. 住所貸し + 郵便物転送
- 地方都市・郊外:月額 3,000円~8,000円
- 東京都心・大阪・名古屋の一等地:月額 8,000円~25,000円
- 郵便転送の追加費用:500円~1,500円/回(転送頻度による)
▶ 特徴:
住所利用に加え、届いた郵便物を転送してくれるサービス。週1回・月1回の転送頻度によって料金が変動する。
3. 住所貸し + 郵便物転送 + 電話番号貸与・転送
- 地方都市・郊外:月額 5,000円~15,000円
- 東京都心・大阪・名古屋の一等地:月額 10,000円~30,000円
- 電話転送の追加費用:1,000円~5,000円/月
▶ 特徴:
ビジネス専用の電話番号を取得し、転送またはスタッフが一次対応するオプションがある。
「信頼性向上」を目的とした法人・フリーランスにおすすめ。
4. 住所貸し + 郵便・電話 + 会議室利用
- 地方都市・郊外:月額 8,000円~20,000円
- 東京都心・大阪・名古屋の一等地:月額 15,000円~40,000円
- 会議室利用料:500円~3,000円/時間(利用時間に応じて追加料金)
▶ 特徴:
対面での打ち合わせが必要なビジネス向け。レンタル会議室を割安で利用できるプランもある。
5. コワーキングスペース併設のバーチャルオフィス
- 地方都市・郊外:月額 10,000円~25,000円
- 東京都心・大阪・名古屋の一等地:月額 20,000円~50,000円
- 専用デスク利用オプション:月額 10,000円~30,000円
▶ 特徴:
バーチャルオフィスとして住所を利用しながら、実際に作業スペースを利用できるプラン。
「たまにオフィスで作業したい」「クライアントと定期的に打ち合わせがある」人向け。
バーチャルオフィスの初期費用・解約費用
- 初期費用(登録料):5,000円~20,000円(運営会社による)
- 保証金・デポジット:無料~数万円(郵便・電話サービス付きの場合に発生することがある)
- 解約手数料:無料~10,000円(解約時の手続きに応じて発生)
バーチャルオフィスの費用を抑えるポイント
- 必要な機能だけ契約する → 郵便転送・電話代行が不要ならシンプルなプランにする
- 地方や郊外の住所を選ぶ → コストを抑えながら法人登記も可能
- 長期契約割引を活用する → 1年契約で月額が安くなることがある
- 口コミ・評判を確認する → 安すぎるバーチャルオフィスはトラブルが多いことも
バーチャルオフィスで登記が可能な業種
バーチャルオフィスは、企業や個人事業主が住所を借りる形で事業を運営できる便利なサービスですが、すべての業種が法人登記可能なわけではありません。業種によっては登記できるものと、実際のオフィスを持たなければならないものがあります。
バーチャルオフィスで法人登記ができる業種は、実店舗や物理的な拠点を必要としない業種が基本です。オンライン完結型のビジネスや、サービス提供がリモートで可能な業種が主な対象となります。
登記可能な業種
IT企業・フリーランス
✅ 登記可能な理由
- 事業のほとんどがインターネット上で完結し、オフィススペースを必要としないため。
- ソフトウェア開発やWeb制作など、リモートワークを基本とする業種が多い。
- 社員が在宅勤務可能であり、特定の場所で業務を行う必要がない。
⚠️ 注意点
- 一部の金融機関では、バーチャルオフィスを利用しているIT企業の法人銀行口座開設が難しい場合があるため、登記時の住所が審査に影響することを考慮する必要がある。
コンサルティング業
✅ 登記可能な理由
- クライアントとのやりとりはメールやビデオ会議で完結することが多い。
- 物理的なオフィスを必要としないビジネスモデルが一般的。
- 専門的な知識を提供するため、実店舗や拠点を持たなくても問題がない。
⚠️ 注意点
- 取引先によっては、「オフィスの所在地=企業の信頼性」と考えるケースもあるため、都心のバーチャルオフィス住所を選ぶことで、信頼性を高める工夫が必要。
ECサイト運営
✅ 登記可能な理由
- 商品の販売・発送業務は、倉庫業者や物流サービスを利用して対応できる。
- 実店舗を持たずにオンラインショップを運営する事業形態が一般的。
- 販売拠点が特定の場所に縛られないため、バーチャルオフィスの住所を利用できる。
⚠️ 注意点
- 古物商許可が必要な場合(中古品販売など)は、物理的な事務所が必要となるため、バーチャルオフィスでは対応できない。
- 一部の決済サービス(クレジットカード会社など)では、バーチャルオフィスの住所だと利用できない場合があるため、契約前に確認が必要。
マーケティング・広告代理店
✅ 登記可能な理由
- ほとんどの業務がオンラインで完結し、特定のオフィススペースが不要。
- クライアントとの連絡や打ち合わせもリモートで対応可能。
- クリエイティブ系業種と親和性が高く、バーチャルオフィスの活用事例が多い。
⚠️ 注意点
- 企業規模が大きくなると、クライアントとの信頼関係を構築するために、実際のオフィススペースを確保する方が有利な場合がある。
バーチャルオフィスで登記できない業種
バーチャルオフィスでは法人登記ができない、または許認可の関係で利用できない業種があります。特に、実際の事務所の存在が法律で求められる業種は、バーチャルオフィスが使えません。
弁護士・税理士・行政書士などの士業
❌ 登記不可の理由
- 各士業の法律や業界ルールにより、実際のオフィスを持つことが義務付けられている。
- 業務の特性上、顧客と直接対面する機会が多いため、バーチャルオフィスでは運営が難しい。
- 監督機関(弁護士会、税理士会など)が、物理的な事務所の有無を審査するため。
古物商(リサイクル業)
❌ 登記不可の理由
- 古物営業法により、営業所の実在が求められるため、バーチャルオフィスの住所では許可が下りない。
- 取引先や顧客との物品の受け渡しを行うため、事務所の実態が必要とされる。
⚠️ 対策
- 古物商を営む場合は、レンタルオフィスやシェアオフィスなど、実際に使用できる事務所を確保する必要がある。
金融・保険業
❌ 登記不可の理由
- 金融業(銀行、証券会社、貸金業など)や保険業は、監督機関(金融庁など)からの許可が必要。
- 許可取得時に「物理的なオフィスの実在」が条件となるため、バーチャルオフィスでは許可が下りない。
人材派遣業
❌ 登記不可の理由
- 人材派遣業・職業紹介業は、厚生労働省の許認可が必要で、事務所の面積や設備要件が細かく定められている。
- 実際に従業員が出社できる事務所が必要とされるため、バーチャルオフィスでは不可。
バーチャルオフィスと雇用保険
雇用保険は、企業が従業員を雇用する際に加入が必要となる社会保険の一つです。しかし、バーチャルオフィスを利用している場合、雇用保険の申請に問題が生じる可能性があります。
雇用保険の基本ルール
- 事業主が従業員を雇用し、一定の労働時間を超える場合、雇用保険の加入が義務となる。
- 事業所の所在地を基に、管轄の労働基準監督署やハローワークに申請する。
バーチャルオフィス利用時の注意点
- 事業所の実態が証明できるか
- 労働基準監督署が「実際に事業所として機能しているか」を審査するため、バーチャルオフィスのみでは事業の実態が認められないことがある。
- コワーキングスペースの活用
- コワーキングスペース併設のバーチャルオフィスなら、「従業員が働くオフィス」として認められる可能性がある。
- 法人銀行口座の開設と併せて検討
- 雇用保険の申請には法人銀行口座が必要な場合があるが、バーチャルオフィスでは銀行の審査が厳しくなることがある。
まとめ
バーチャルオフィスは、コスト削減やビジネスの信頼性向上に役立ちますが、法人登記や雇用保険の申請時に問題が発生することもあるため、事前にしっかりと確認することが大切です。
バーチャルオフィスを選ぶ際のチェックポイント
- 法人登記が可能か
- 信頼性の高い住所か
- 追加料金の有無を確認
- 雇用保険の加入可否を確認
最適なバーチャルオフィスを選び、スムーズにビジネスを展開しましょう!