「無料でここまでできるなんて、逆に怪しくない?」
高機能なAIコーディングアシスタントとして話題のCodeium(コーディアム)。GitHub Copilotの強力なライバルとして、個人開発者だけでなく企業での導入検討も増えています。しかし、会社のPCにインストールするとなると、気になるのがその「素性」です。
どこの国の誰が作っているのか? 入力したコードが勝手に学習されて流出したりしないのか?
セキュリティに厳しい企業の担当者やエンジニアなら、当然の懸念ですよね。
この記事では、Codeiumの運営企業の実態から、ビジネスで利用する際に必ずチェックすべき安全性の仕組み、そしてVSCodeでの具体的な使い方までを徹底解説します。これを読めば、Codeiumが単なる「便利な無料ツール」ではなく、信頼に足る「エンジニアの強力な相棒」であることがわかるはずですよ。
Codeiumとは?どこの国の企業が開発しているのか
まずは一番気になる「Codeiumの正体」についてです。名前の響きから「海外製だろうな」とは予想がつきますが、具体的にどこの国のどんな企業が運営しているのでしょうか。
運営会社Exafunctionの拠点とシリコンバレーでの背景
Codeiumを開発・運営しているのは、Exafunction(エクサファンクション) というアメリカの企業です。
- 本社所在地:アメリカ合衆国 カリフォルニア州 マウンテンビュー
- 設立:2021年
マウンテンビューといえば、Google(Alphabet)の本社があることでも有名な、シリコンバレーの中心地です。Codeiumは、このテック企業の聖地で生まれました。
実はこの会社、ただのスタートアップではありません。創業メンバーのVarun Mohan氏とDouglas Chen氏は、自動運転車開発のNuroや、VR技術のOculusといった最先端テック企業の出身です。彼らは元々、AI開発のためのインフラストラクチャ(GPUを効率よく動かす仕組み)を提供する事業を行っていました。
つまり、「AIを動かす土台」を知り尽くしたインフラのプロフェッショナルたちが、その技術力を活かして作ったのがCodeiumなのです。ぽっと出のアプリ開発会社ではなく、技術的なバックボーンが非常にしっかりしている企業と言えます。
Codeiumの読み方とサービスの特徴
「Codeium」という名前、初見だとどう読むか迷いますよね。「コディウム」「コーディアム」などと呼ばれていますが、日本国内のエンジニアの間では**「コーディアム」**と読むのが一般的になりつつあります。元素記号のような響きが、エンジニア心をくすぐりますね。
Codeiumの最大の特徴は、**「個人利用であれば、驚くほど高機能なAI補完が永年無料で使える」**という点です。競合のGitHub Copilotが有料(月額10ドル〜)であるのに対し、Codeiumは基本機能を無料で開放しています。
- 超高速なコード補完:タイプした瞬間に次のコードを提案
- チャット機能:AIに質問してコードを書かせる
- 幅広いIDE対応:VSCodeはもちろん、JetBrains系、Vim、Eclipseなど40以上のエディタに対応
「なぜ無料なの?」と不安になるかもしれませんが、彼らは企業向けの「Enterpriseプラン」で収益を上げるビジネスモデルを採用しています。個人エンジニアに広く使ってもらって性能を高め、企業には高度な管理機能を有料で提供する、というフリーミアム戦略ですね。
なぜ今、世界中のエンジニアに注目されているのか
Codeiumが急速にシェアを伸ばしている理由は、「無料だから」だけではありません。**「開発スピードの速さ」と「精度の高さ」**が評価されているからです。
創業チームが元々インフラの専門家であるため、AIのレスポンス速度が非常に高速です。コーディング中にAIの提案を待ってイライラすることが少なく、思考のスピードを止めずに書き続けられます。
また、2024年以降は**「Windsurf(ウィンドサーフ)」**という、Codeiumの機能を統合した独自のコードエディタ(IDE)もリリースし、話題をさらっています。「ただのプラグイン」を超えて、「開発環境そのもの」を変えようとしている姿勢が、世界中の開発者をワクワクさせているのです。
企業で導入しても大丈夫?Codeiumの安全性とセキュリティ
「便利そうなのはわかったけど、会社のコードが流出したら責任問題だ…」。企業導入で最大の壁となるのがセキュリティです。結論から言うと、Codeiumは企業利用を前提とした強固なセキュリティ対策をとっていますが、設定やプランの選び方には注意が必要です。
コードデータが学習に使われない仕組み(Opt-out)
多くの企業が最も恐れるのは、「自社の独自コードがAIに学習され、他社のコード補完として提案されてしまうこと」でしょう。
Codeiumの公式サイトでは、この点について明確なスタンスを示しています。
- 個人版(Free/Pro):基本的に、生成モデルの学習にユーザーのコードは使用されません(Codeiumは「ユーザーのコードで生成モデルをトレーニングしない」と明言しています)。ただし、サービス改善のための利用状況データ(テレメトリー)などは送信される場合があります。
- 企業版(Teams/Enterprise):より厳格なセキュリティが適用されます。特にEnterpriseプランでは、データが一切保存されない「ゼロデータリテンション」ポリシーや、学習への利用を完全に遮断する契約が可能です。
重要なのは、Codeiumが**「GPLなどのライセンス汚染リスクがあるコードを学習データから除外している」**という点です。これにより、生成されたコードを使ったら著作権侵害になった、というリスクを最小限に抑えています。
SOC 2コンプライアンスへの準拠と信頼性
セキュリティの信頼性を測る客観的な指標として、CodeiumはSOC 2 Type 2の認証を取得しています。
- SOC 2(Service Organization Control 2)とは?米国公認会計士協会(AICPA)が定めた、セキュリティ、可用性、機密保持などに関する厳格な監査基準です。
特に「Type 2」は、ある一時点だけでなく、長期間にわたって運用状況が適切であったかを監査されるものです。これを取得しているということは、Codeiumのセキュリティ管理体制が、国際的な基準で見ても「企業レベルで合格点」であることを意味します。上司やセキュリティ部門を説得する際は、この「SOC 2 Type 2準拠」というキーワードが強力な武器になりますよ。
企業版(Enterprise)と個人版の違い
業務で利用する場合、できれば有料のTeamsプランやEnterpriseプランを検討することをおすすめします。無料版との決定的な違いは「管理機能」です。
| 機能 | 個人版 (Free) | 企業版 (Teams/Enterprise) |
| コード補完 | 無制限 | 無制限 |
| 学習への利用 | しない方針だが管理不可 | 契約レベルで保証・管理可能 |
| ユーザー管理 | なし | あり(シート管理) |
| デプロイ形態 | SaaS(クラウド) | SaaS / VPC / オンプレミス |
特にEnterpriseプランでは、自社のAWSやGoogle Cloud環境(VPC)の中にCodeiumを構築したり、完全にインターネットから隔離されたオンプレミス環境で動かしたりすることも可能です。金融機関や政府機関など、絶対にコードを外に出せない組織にとっては、この選択肢があることがCodeiumを選ぶ決定打になっています。
Codeium vs GitHub Copilot徹底比較!どちらを選ぶべきか
「結局、GitHub Copilotとどっちがいいの?」
これはエンジニアにとって永遠のテーマかもしれません。両者は非常に似ていますが、細かい使い勝手や思想に違いがあります。比較表を交えて解説します。
料金プランとコストパフォーマンスの違い
まず圧倒的な違いはコストです。
- GitHub Copilot:
- 個人:月額10ドル(約1,500円)
- ビジネス:月額19ドル〜
- 無料プラン:なし(学生などは除く)
- Codeium:
- 個人:完全無料
- 企業:月額15ドル〜(Pro)、Teamsは要確認
「とりあえずAIコーディングを試してみたい」「副業や趣味の開発でコストをかけたくない」という場合は、間違いなくCodeiumに軍配が上がります。一方で、すでに会社でGitHub Enterpriseを契約している場合は、Copilotの方が請求を一本化できるメリットがあります。
対応しているIDEとプログラミング言語の比較
対応環境の広さでは、Codeiumが驚異的な対応力を見せています。
- GitHub Copilot:VSCode, Visual Studio, JetBrains, Vimなど主要なものに対応。
- Codeium:上記に加え、Eclipse, Xcode, Sublime Text, Emacs, Jupyter Notebooks, Google Colabなど、40以上のエディタに対応。
特に、Webブラウザ上で動くGoogle ColabやJupyter Notebookで無料で使える点は、データサイエンティストやPython使いにとって大きなメリットです。言語対応については、両者ともPython, JavaScript, TypeScript, Go, Javaなどの主要言語はほぼ完璧に対応しており、大差はありません。
生成されるコードの精度と速度の体感差
肝心の「賢さ」はどうでしょうか。
これは使う言語や状況にもよりますが、一般的な評価としては以下の通りです。
- GitHub Copilot (GPT-4ベース):文脈を読む力が強く、複雑なロジックを一発で生成するのが得意。「やりたいこと」をコメントで書くと、意図を汲み取ってくれる精度が高いです。
- Codeium (独自モデル):とにかく速いです。入力に対するレスポンスが爆速で、サクサクと補完してくれます。精度もCopilotに肉薄しており、日常的なコーディング(定型文やループ処理など)では遜色ありません。
「じっくり考えてすごいコードを出してほしいならCopilot」「軽快にタイピングをアシストしてほしいならCodeium」という使い分けもアリかもしれませんね。
VSCodeへの導入手順とCodeiumの基本的な使い方
ここからは、最も利用者が多いであろう**VSCode(Visual Studio Code)**への導入方法を、実際の画面をイメージしながら解説します。3分もあれば終わる簡単な作業ですよ。
拡張機能のインストールからアカウント作成まで
- 拡張機能の検索VSCodeを開き、左側のブロックアイコン(拡張機能)をクリックします。検索バーに「Codeium」と入力してください。
- インストール紫色のアイコンの「Codeium: AI Coding Autocomplete…」という拡張機能が表示されるので、「インストール」をクリックします。
- アカウント連携インストールが完了すると、右下にポップアップが出たり、ブラウザが開いたりします。Codeiumのアカウントを作成(Googleアカウントなどでログイン可能)し、VSCodeとの連携を許可(Authorize)すれば準備完了です。
これだけで、もうあなたのエディタにはAIが宿っています。
チャット機能で日本語を使って指示を出すコツ
Codeiumのサイドバーアイコンをクリックすると、チャット画面が開きます。ここではChatGPTのようにAIと会話ができます。
Codeiumのインターフェースは英語ですが、チャットは日本語で入力しても大丈夫です。
【おすすめの聞き方】
- 「このコードのバグを見つけて修正案を出して」
- 「この関数をPythonからTypeScriptに書き換えて」
- 「ReactでTODOリストを作るための基本構造を書いて」
日本語で入力すれば、基本的に日本語で返してくれます。もし英語で返ってきた場合は、「日本語で答えて」と追加で指示すればOKです。
補完機能を使いこなしてコーディングを爆速化する方法
Codeiumの真骨頂は、エディタ上でリアルタイムに行われる「ゴーストテキスト(薄い文字での提案)」です。
- コメントを書くコードの上に // 1から100までの素数を判定する関数 とコメントを書くと、AIがその下の行に関数の中身を提案してくれます。
- Tabキーで確定提案された薄いグレーのコードが気に入れば、Tabキーを押すだけで確定されます。
- 提案を切り替える複数の候補がある場合(例えば Alt + ] や Option + ] など、OSの設定による)で次の候補を見ることができます。
最初はAIの提案に慣れないかもしれませんが、「書き始める前に一瞬待つ」癖をつけると、驚くほどタイプ量が減りますよ。
業務効率を最大化するCodeiumの実践的な活用シーン
導入したら、具体的にどんな場面で使えばいいのでしょうか。「ただコードを書かせる」だけではもったいない! 業務効率が劇的に上がる3つの活用シーンを紹介します。
リファクタリングやテストコード作成の自動化
「動くけど汚いコード」をきれいにするリファクタリングや、面倒なテストコード(単体テスト)の作成。これらは重要ですが、時間がかかってモチベーションも上がりにくい作業ですよね。Codeiumに丸投げしましょう。
- リファクタリングコードを選択して、チャット欄で「このコードをもっと読みやすく、効率的にリファクタリングして」と指示します。変数名の改善や、重複処理の削除を提案してくれます。
- テストコード生成「この関数の単体テストをJestで書いて。エッジケースも考慮して」と頼めば、考慮漏れしがちな異常系のテストケースまで含めて生成してくれます。
これだけで、品質担保にかかる時間を大幅に短縮できます。
未知の言語やライブラリ学習のサポート役として使う
新しいプロジェクトで、触ったことのない言語(例えばGo言語など)を担当することになった時、Codeiumは最強の家庭教師になります。
「Pythonでいうところの pandas.DataFrame は、この言語ではどう書くの?」といった質問や、わからないエラーメッセージをそのまま貼り付けて「これどういう意味?」と聞くことで、ドキュメントを読み漁る時間を節約できます。
Codeiumは**「文脈」を理解する**ので、あなたのプロジェクトの他のファイルを見て、「このプロジェクトではこのライブラリを使っているから、こういう書き方がいいよ」と、空気を読んだ提案をしてくれるのも嬉しいポイントです。
エラー修正とデバッグ作業の効率化
バグの原因がわからず、1時間も画面を睨みつけていた経験はありませんか?
Codeiumには、エラー修正ボタン(Fix機能)があります。
コード上でエラーが出ている波線の部分をクリックし、「Codeium: Explain Problem(問題を説明)」や「Quick Fix(修正)」を選ぶと、AIが「なぜエラーになっているか」を解説し、修正コードを提示してくれます。
単なる文法ミスだけでなく、「この変数は初期化されていません」や「型の不一致です」といった論理的なミスも指摘してくれるので、デバッグの強力な助っ人になります。
導入前に知っておきたい注意点とトラブルシューティング
最後に、導入してから「こんなはずじゃなかった」とならないための注意点をお伝えします。
日本語の精度や対応状況のリアル
Codeiumは日本語に対応していますが、やはりベースは英語のAIです。
- コード内の日本語コメント:問題なく生成されますが、たまに不自然な翻訳調になることがあります。
- チャットの回答:専門的な内容になると、急に英語で回答し始めることがあります。「日本語で」としつこく言えば直りますが、ご愛嬌といったところです。
また、複雑なビジネスロジックを日本語で説明するよりも、簡単なコードや英語のコメントでヒントを与えた方が、AIの意図通りに動きやすい傾向があります。
意図しないコードが生成された時の対処法
AIは完璧ではありません。堂々と間違ったコード(ハルシネーション)を提案することもあります。
- 鵜呑みにしない:提案されたコードは必ず人間がレビューし、動作確認を行ってください。「AIが書いたから正しいはず」という思い込みは危険です。
- セキュリティリスクのあるコード:稀に、脆弱性のある古い記述方法や、ハードコードされたパスワード(ダミーですが)などを提案することがあります。セキュリティチェックは人間の目で必ず行いましょう。
社内規定やセキュリティポリシーとの兼ね合い
勝手に個人の判断で導入すると、会社のセキュリティポリシー違反になる可能性があります(シャドーIT)。
- 導入前に確認すること:
- 会社の規定で「生成AIの利用」が許可されているか?
- VSCodeの拡張機能を自由にインストールして良い環境か?
- データの外部送信に関する規定はどうなっているか?
もし許可が必要な場合は、前述した「SOC 2準拠」や「学習データとして使わない設定(Opt-out)」の情報を資料にまとめて、情報システム部門に相談してみましょう。
まとめ
Codeiumは、アメリカのシリコンバレー発の企業Exafunctionが開発する、信頼性の高いAIコーディングアシスタントです。
- 信頼性:GoogleやOculus出身のエンジニアが開発し、SOC 2認証も取得済み。
- コスト:個人なら完全無料。企業でもCopilotより安価に導入できる可能性が高い。
- 安全性:ユーザーのコードを学習させない方針を明確にしており、企業向けの管理機能も充実。
「まずは無料で試してみたい」「VSCode以外でも使いたい」という方にとって、Codeiumは現時点で最強の選択肢と言えるでしょう。
食わず嫌いでAIを使わないのは、手書きで帳簿をつけているのと同じくらいもったいないことです。まずは個人の環境でインストールして、その「爆速コーディング」の世界を体験してみてください。きっと、もう元の開発スタイルには戻れなくなりますよ!




























