DX推進担当に任命されたら何をする?初日から押さえるべき5つの実務と心構え

突然「DX推進担当に任命されました」と言われ、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は企業変革の要。しかし実際に何をどう進めるのか、最初の一歩で悩む人がほとんどです。
この記事では、DX推進担当に任命されたときに押さえるべき実務の進め方や、現場での立ち回り方、成功するための心構えをわかりやすく解説します。
読み終えるころには、「DXを自分の言葉で説明し、最初の行動に移せる」状態になれるはずです。


目次

DX推進担当の役割とは?企業の中で何を担うポジションか

DX推進担当は「変革の調整役」

DX推進担当の役割は、一言でいえば「組織のデジタル変革を推進する調整役」です。
システム導入の責任者ではなく、「現場の課題をデジタルでどう解決するか」を設計し、経営層と現場の橋渡しをするポジションです。

そのため、ITスキルよりもまず課題発見力と巻き込み力が求められます。
部署横断で動くことが多く、「調整」「共有」「合意形成」こそが日々のメイン業務になります。

具体的な役割には次のようなものがあります。

  • 社内のデジタル課題を可視化し、優先順位をつける
  • 業務プロセスを分析し、ツール・システム導入を検討する
  • 経営層に対してDX計画や進捗を報告する
  • 社員へのITリテラシー教育や変革意識の醸成を行う

つまり、**「現場を知るプロジェクトマネージャー」**のような立ち位置です。
専門知識よりも、現場の声を拾い上げ、経営と同じ目線で対話できることが強みになります。


DX推進担当に任命されたら最初にやること

DX推進担当に任命された初日に、まずすべきことは「自分の役割の範囲を明確にする」ことです。
DXの定義やゴールが曖昧なまま走り出すと、何から手をつけていいか分からずに頓挫するケースが多いのです。

初期段階で確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 経営層が描いているDXの目的(売上拡大?業務効率?新規事業?)
  • 既存のITシステムや業務フローの現状
  • どの部署が協力対象になるのか
  • DX推進チームが単独か、他部門と兼任か

この4点を整理することで、あなたのDX推進の方向性が見えてきます。
たとえば「全社的なDX」なのか「部門単位の効率化」なのかで、取るべきアプローチはまったく違います。


DXとは何か?流行語で終わらせない正しい理解

DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質

DXとは、「デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを変革すること」です。
単なるIT導入やペーパーレス化ではなく、企業の仕組みそのものを再設計するという意味を持っています。

経済産業省は「DX推進ガイドライン」で次のように定義しています。

デジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること。

つまり、「ITツールを使うこと」ではなく、「経営と現場をデジタルでつなぐこと」がDXの本質です。

たとえば次のような事例があります。

  • 営業担当がエクセル管理からCRM(顧客管理ツール)に移行し、顧客対応のスピードを改善
  • 製造業でIoTセンサーを導入し、故障予知や品質データをAI分析することでコスト削減
  • 小売企業がECデータと実店舗の購買データを統合し、顧客体験を最適化

これらに共通するのは、「デジタルが経営課題の解決に直結している」点です。


DX担当に求められる基本知識とスキル領域

DX推進担当は、IT部門のエンジニアでも、経営企画でもありません。
両者の“翻訳者”として、ビジネス課題とデジタル技術をつなぐスキルが求められます。

DX担当に求められる主なスキルは次の通りです。

  • 業務理解力:自社の業務プロセスを俯瞰し、非効率な部分を特定する力
  • デジタルリテラシー:AI、クラウド、RPA、IoTなどの基本的な仕組みを理解する力
  • コミュニケーション力:現場と経営層の間に立ち、共通言語で説明する力
  • プロジェクトマネジメント力:計画、進捗管理、リスク対応を整理して推進する力

最初から完璧である必要はありません。
まずは「現場の課題を見つけて、デジタルで解決できる可能性を考える」ことから始めましょう。


DX推進担当が押さえるべき5つの実務ステップ

DX推進を成功させるには、行き当たりばったりではなく、明確なプロセスを踏むことが重要です。
ここでは、任命直後から着手すべき「5つのステップ」を解説します。


1. 現状の業務を可視化し、課題を整理する

まずやるべきは「現状把握」です。
多くの企業がここを飛ばしてツール導入に走り、結果的に失敗します。

現場インタビューやフローチャート作成を通して、次の3点を明確にしましょう。

  • どの業務が手作業に依存しているか
  • 情報共有に時間がかかっている部分はどこか
  • データが分断されている部署はどこか

課題が可視化できると、DX化の優先順位が見えてきます。
「まずは業務改善」「次にデータ活用」「最終的に新規価値創出」といった段階的な計画を立てられるようになります。


2. DX推進スキル標準を活用してスキルギャップを見極める

DX推進スキル標準とは、経済産業省が策定した「DX人材に求められるスキルを体系化した基準」です。
DX人材のタイプを「戦略」「実装」「推進支援」の3つに分類し、スキルセットを明確にしています。

これを自社に当てはめて、次のように整理します。

  • 経営層:DX戦略を描ける人材がいるか
  • IT部門:技術的に支援できるエンジニアがいるか
  • 現場:デジタル活用を実行できる担当者がいるか

こうしてギャップを見える化することで、どの層を強化すべきかが明確になります。
DX推進担当自身のスキルアップにも役立つ指針になりますよ。


3. DX人材スキルマップを作成し、役割分担を明確にする

DX人材スキルマップとは、組織内のDX人材のスキルレベルや得意分野を一覧化したものです。
これを作ることで、誰がどの領域を担当できるかを整理できます。

スキルマップに記載すべき項目は以下の通りです。

  • 名前・部署
  • 担当領域(例:業務改善/データ分析/AI開発など)
  • 現状スキルと今後の目標スキル
  • 対応可能なツール・技術

たとえば、「営業部のAさんはCRM運用が得意」「経理のBさんはRPAツールを扱える」などを見える化するだけでも、DXの推進力は格段に上がります。

このスキルマップを活用すれば、外部パートナーに依頼すべき部分と、社内で内製できる部分の線引きも明確になります。

DX推進担当に必要な資格とキャリア形成の考え方

資格は「信頼」と「共通言語」を得るためのツール

DX推進担当としての仕事は、社内の調整や改革を伴うため、単に知識だけでなく「説得力」が求められます。
その際に役立つのが資格です。資格そのものがすべてではありませんが、特に異業種からDX領域に入った方にとっては、一定の信頼を得る助けになります。

DX関連の代表的な資格には以下のようなものがあります。

  • DX検定(日本イノベーション融合学会):DXの全体像を理解し、戦略から技術まで幅広く学べる入門資格。
  • ITパスポート(IPA):国家資格。デジタル技術やITマネジメントの基本を体系的に学べる。
  • プロジェクトマネージャ試験(IPA):大規模プロジェクトの計画・進行・管理を理解する中級〜上級者向け。
  • データサイエンティスト検定(DS検):DXで必要なデータ分析・AI活用の基礎知識をカバー。
  • DXアドバイザー(民間団体):企業支援やコンサルティング寄りのスキルを証明する資格。

どれも「学ぶ過程でDXの全体像を理解できる」点に意味があります。
資格取得そのものが目的ではなく、「学びを実務にどう活かすか」を意識して取り組むとよいでしょう。


キャリア形成は「専門×横断」で考える

DX推進担当のキャリアは、従来の職種のように一方向のキャリアパスではありません。
むしろ、**「自分の専門+デジタル横断力」**という掛け算で強みを作ることが重要です。

たとえば次のようなキャリア展開があります。

  • 営業職出身 → DX推進担当 → データドリブン営業マネージャー
  • 経理出身 → 業務改善DXリーダー → 経営企画室DX統括
  • 情報システム部門出身 → DXプロジェクトマネージャー → 事業戦略担当

どのルートでも共通しているのは、「デジタル×ビジネス」の両視点を持つことです。
DX推進担当の経験は、今後どの業界でも**“変革をリードできる人材”**として高く評価されるようになります。


DX人財とは何か?求められるマインドセット

「DX人財(じんざい)」とは、単にITスキルを持つ人ではありません。
「デジタルを使って、組織や仕事のあり方を変えられる人」を指します。

経済産業省の定義では、DX人財は次の3タイプに分類されています。

  1. ビジネスアーキテクト:戦略を描き、事業変革を推進する人
  2. データサイエンティスト/エンジニア:データや技術を活用して課題を解く人
  3. デジタルリーダー/推進者:現場を巻き込み、実行を支える人

DX推進担当はこの中で3番目の「デジタルリーダー」にあたります。
技術そのものよりも、「人と組織を動かす力」「変化を受け入れる姿勢」が鍵になるのです。

特に中堅社員やマネージャー層がこの役割を担うケースが多く、業務経験を活かした“リアルな変革提案”ができる人が重宝されています。


DX推進担当が失敗しやすい3つの落とし穴と回避策

1. DX=IT導入と誤解してしまう

最も多い失敗は、DXを「新しいシステムを導入すること」と誤解してしまうことです。
DXの本質はあくまで業務と組織の変革であり、ツールはその手段にすぎません。

たとえば、ペーパーレス化をしたのに承認フローが旧来のままで業務スピードが変わらない。
これは「デジタル化」には成功しても「トランスフォーメーション(変革)」には至っていません。

導入の前に「何を変えたいのか」「なぜ変えるのか」を明確にすることが最優先です。


2. 現場の反発を軽視してしまう

DX推進で必ず直面するのが「現場の抵抗」です。
「余計な仕事が増える」「今のやり方で十分だ」という声はどの会社でも出てきます。

この壁を乗り越えるには、「現場に寄り添う姿勢」と「小さな成功体験の積み重ね」が重要です。
たとえば、まずは部署単位で改善を実施し、成果を可視化して他部署に展開する流れが有効です。

DX推進担当が一方的に進めるのではなく、共に改善を作るパートナーとして関係を築くことが、長期的な成功につながります。


3. 成果を定量化できずに終わる

もうひとつの落とし穴は、「DXの成果が曖昧なまま終わってしまう」ことです。
どれだけ便利なツールを入れても、定量的に成果を示せなければ継続的な投資は得られません。

成果を測る指標(KPI)は、初期段階で設定しておくことが重要です。
たとえば以下のようなものが代表的です。

  • 業務時間の削減率(例:月間作業時間を20%削減)
  • 顧客満足度(例:問い合わせ対応満足度が90%に上昇)
  • コスト削減効果(例:年間経費を500万円削減)

これらを定期的に可視化することで、DXが“成果を生む活動”であることを社内に示せます。


DX推進担当が成果を出すための実践テクニック

現場の言葉で説明する

DXの専門用語や英語をそのまま使っても、現場には伝わりません。
たとえば「クラウド化」と言う代わりに「どこからでも社内データにアクセスできる仕組み」と言い換えるだけで理解度が上がります。

難しいことをわかりやすく伝えることが、DX推進担当に求められる最大のスキルです。


小さく始めて早く検証する

完璧なプランを立てるよりも、「小さく試して結果を早く共有する」方が成功確率は高まります。
たとえば、1部署でRPAを導入して効果を測定し、次の部門へ横展開する流れが理想的です。

「まずやってみてから改善する」というアジャイル思考が、DXを動かすスピード感を生みます。


社内外のネットワークを広げる

DX推進は一人で完結しません。外部パートナーや専門家とのネットワークを持つことで、視野が広がり、解決の選択肢が増えます。
セミナー参加やオンラインコミュニティで、他社のDX事例を知ることも有効です。

特に「同業他社がどのようにDXを進めているか」を把握することで、自社に取り入れられる実践ヒントが得られます。


DX推進担当に向いている人の特徴

DX推進担当に向いているのは、次のようなタイプの人です。

  • 新しいことに興味があり、変化をポジティブに受け止められる人
  • 部署や立場を超えて人と話すのが苦にならない人
  • 論理的に考えつつも、相手に合わせて柔軟に説明できる人
  • 失敗を恐れず、試行錯誤を楽しめる人

DXはゴールがない挑戦です。
正解を見つけるというより、「より良い働き方を模索し続ける」ことそのものが仕事といえます。


まとめ|DX推進担当は「未来の働き方を形にする役割」

DX推進担当に任命されたとき、最初は戸惑うかもしれません。
しかし、そのポジションは会社の未来を左右する、とても価値あるミッションです。

この記事で紹介したように、まずは

  • 現状把握と課題整理
  • スキル標準とスキルマップの活用
  • 必要な資格やスキルの習得
  • 現場を巻き込んだ小さな成功の積み重ね

この流れを丁寧に進めていけば、確実に成果を出せます。

DX推進担当は、単に「デジタルの担当者」ではなく、「組織をより良くする変革リーダー」です。
自分の強みとデジタルを掛け合わせて、あなたの職場の“次の未来”をつくっていきましょう。

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