会社の周年式典や表彰式、講演会や地域イベントなどで「司会をお願いします」と言われた瞬間、頭が真っ白になる人は多いものです。進行表はあるけれど、どんな言葉でつなげばいいのか分からない。参加者の前に立つと思うと声が震える。そんな悩みを抱える方のために、この記事では実際の現場でそのまま使える司会進行の例文・台本・話し方のコツをすべて紹介します。ビジネス・式典・講演会・発表会など、さまざまなシーン別に「言葉の温度感」を変えながら、失敗しない流れを徹底解説します。
イベント司会進行の基本構成と成功の原則
イベントの司会は、単に台本を読む仕事ではありません。
「場の空気を整える」「人の気持ちをつなぐ」「時間を管理する」という三つの役割を同時に担う、“ステージ上の調整役”です。プロの司会者も、最初はこのバランスを掴むのに苦労します。
イベント進行の基本構成
どんなイベントでも、大まかな流れは以下の5段階に分けられます。
- 開会あいさつ(オープニング)
参加者の注目を集め、雰囲気を和らげる。 - 主催者や来賓のあいさつ
主催側の目的やメッセージを伝える重要なパート。 - メインコンテンツ(講演・発表・余興など)
イベントの中心部分。時間管理が要です。 - 質疑応答・交流・感想発表
双方向コミュニケーションの時間。 - 閉会の言葉(エンディング)
印象をまとめ、自然に締める。
この流れを一度理解しておけば、どんな場面でも応用できます。
司会者にとって最も大切なのは、「次に何が起こるか」を常に把握しておくことです。
つまり、段取りを“前のめり”に理解しておくことが、成功の鍵なのです。
司会が下手な人・うまい人の違い
司会が苦手な人は、往々にして“原稿に頼りすぎる”傾向があります。
逆に上手な人は、原稿を見ずに人を見ています。
相手の表情、会場の温度、拍手のタイミングなど、“人の呼吸”を読む力が磨かれているのです。
特にビジネスイベントでは、タイムキープだけでなく、雰囲気作りが「会社の印象」に直結します。
開会式の司会進行で使える実践的な例文と雰囲気づくり
1. フォーマルな企業式典・周年行事の場合
皆さま、本日はご多忙の中ご出席いただき、誠にありがとうございます。
ただいまより「株式会社〇〇 創立20周年記念式典」を開会いたします。
本日の司会を務めさせていただきます、広報部の□□でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
フォーマルな場では、「開会いたします」という表現が最も無難で丁寧です。
言葉を一つひとつ丁寧に区切りながら話すと、式の格が上がります。
また、初めに「ご多忙の中」という一言を入れることで、参加者への敬意が自然に伝わります。
2. 社内イベント・懇親会の場合
皆さん、こんにちは。本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
今日の司会を務めます、人事部の△△です。
今日は社員同士のつながりを深めながら、楽しい時間を過ごしていただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!
親しみやすい雰囲気を出すためには、声のトーンを上げることが大切です。
また、「〜してください」ではなく「〜していただけたら嬉しいです」と表現すると柔らかくなります。
ビジネスの場でも“温度”が伝わる挨拶ができる人は信頼されます。
講演会やセミナーでの司会進行のコツと例文
講演会やセミナーの司会は、プロの講師や専門家を引き立てる“黒子”の役割です。
司会が話しすぎると、主役の印象を損ねてしまうことがあります。
講師紹介の例文
それでは早速、本日の講師をご紹介いたします。
株式会社〇〇 代表取締役の△△様です。
△△様は人材育成の専門家として、これまで全国各地で講演を行い、多くの企業の組織改革に携わってこられました。
本日は「リーダーに求められるコミュニケーション力」というテーマでお話しいただきます。
それでは△△様、よろしくお願いいたします。
講師紹介では、“長すぎず・端的に・敬意を込めて”が鉄則です。
講師が登壇するタイミングでは、司会が一歩下がる姿勢を取ることで、自然な流れになります。
質疑応答パートの進行例
それではここで、参加者の皆さまからご質問をお受けしたいと思います。
ご質問のある方は、挙手のうえお名前をお知らせください。
〇〇様、ありがとうございます。講師の△△様、よろしくお願いいたします。
質疑応答では、質問者と講師をつなぐ“通訳”のような立場になります。
声のトーンを一定に保ち、混乱しないようシンプルに伝えるのがコツです。
発表会やプレゼン大会での司会例文と実践ポイント
発表会では、発表者が緊張していることを前提に、司会者が“場を温める”必要があります。
社内プレゼン大会、学生の発表会、地域の作品展などでは、「拍手のリード」が非常に効果的です。
オープニングの例文
皆さん、こんにちは。ただいまより「第10回〇〇アイデア発表会」を開催いたします。
本日の司会を務めさせていただきます、企画部の□□です。
発表者の皆さんが練習の成果を発揮できるよう、温かい拍手で応援をお願いいたします。
司会者自身が笑顔で言うことで、会場全体の緊張が一気に和らぎます。
発表順を読む際には、発表者の名前をはっきり発音し、語尾を上げてリズムをつくりましょう。
切り替え文例(発表後)
素晴らしい発表をありがとうございました。
続きまして、〇〇部の△△さんです。準備が整いましたらお願いいたします。
この「続きまして〜」という言葉が、司会進行の“つなぎ”で最も多用されます。
シンプルですが、場のテンポを維持する効果があります。
式典・表彰式でのフォーマルな司会文例
式典の司会では、“格調のある言葉選び”が必要です。特に社外来賓が出席する場合、口調ひとつで印象が変わります。
式典の開会あいさつ
皆さま、本日はお忙しい中ご臨席賜り、誠にありがとうございます。
ただいまより「株式会社〇〇 創立30周年記念式典」を開会いたします。
本日の司会を務めさせていただきます、総務部の□□でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
フォーマルな場では「ご臨席賜り」など、やや堅めの敬語を使うことで、式全体に重みを出せます。
また、語尾は「〜いたします」「〜でございます」を意識すると統一感が出ます。
表彰パートの進行文例
続きまして、永年勤続者の表彰に移らせていただきます。
受賞者の皆さまのお名前をお呼びいたしますので、壇上までお越しください。
表彰状授与のあとに記念撮影を行います。皆さま、拍手でお祝いください。
この場面では、声のテンポを少し落として“重み”を出すのがコツです。
あえてゆっくり話すことで、感動の瞬間を演出できます。
子ども向け・地域イベントでの司会テンプレート
地域のお祭りや学校行事などでは、“楽しく・わかりやすく・テンポよく”が基本。
子どもたちの集中力は短いため、1文を短くし、表情と声で引き込みます。
例文(子ども向け司会)
みんなー!今日は「なかよしフェスタ」に来てくれてありがとう!
これからゲーム大会をはじめるよ!勝っても負けても、みんなで楽しもうね!
司会者自身が楽しむことが、最大の演出です。
少しオーバーなくらいのジェスチャーで話すと、会場の空気が一気に明るくなります。
イベント司会進行のシナリオ・台本を作る方法
台本の作り方ステップ
- 進行表を基に構成を整理
時間配分を確認し、開始・終了時刻を明確にします。 - 各パートごとに“つなぎ文”を挿入
「続きまして」「それでは」「ただいまより」などの接続句を入れる。 - 緊張しやすい場面ほど文章化する
自己紹介・開会・閉会部分だけは一字一句書いて練習しておきましょう。
プロの司会者でも、最初に全部を暗記しようとする人はいません。
要所だけ書いて、あとは流れを掴む。これが“自然な司会”のコツです。
当日うまく進行するための準備と心構え
- マイクチェックは必ず事前に行う
リハーサルで音量・ハウリングを確認。 - 名前の読み間違いを防ぐ
ふりがなを台本に書き込む。 - 余白を用意しておく
急な時間調整(遅延や延長)に備え、調整トークを2〜3パターン用意しておく。
たとえば急な機材トラブルのとき、
「少々準備にお時間をいただきます。今しばらくお待ちください。」
と一言添えるだけで、会場の空気は落ち着きます。
“沈黙が怖い”と思わず、“間”こそ信頼の余裕です。
シーン別テンプレートまとめ
開会の定番フレーズ
- 「ただいまより〜を開催いたします」
- 「本日はご多忙の中ご参加いただき、誠にありがとうございます」
つなぎのフレーズ
- 「それでは、続きまして〜」
- 「ここで〇〇様よりご挨拶を頂戴いたします」
閉会のフレーズ
- 「本日は誠にありがとうございました。これをもちまして閉会いたします」
- 「皆さまの今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます」
こうした言い回しをあらかじめ台本にメモしておくと、現場で焦らず進行できます。
まとめ|司会進行は“話術”ではなく“準備力”で決まる
司会のうまさは、アドリブよりも事前準備の量で決まります。
イベントの構成、登壇者のプロフィール、時間配分、トラブル時の言葉。
それらを一度整理しておけば、当日は自然に笑顔が出ます。
司会進行とは、いわば「人の気持ちを動かす仕事」です。
たとえ初めてでも、あなたが落ち着いて言葉を紡ぐだけで、会は確実に成功に近づきます。
完璧を目指すより、「誠実に」「丁寧に」「温かく」。
その3つを意識するだけで、どんなイベントでも安心して進行できますよ。




























