ビジネスの場やスピーチでよく耳にする「ご紹介に預かりました」。
一見フォーマルで丁寧な言葉に聞こえますが、実は誤用とされる場面も多く、正しく使えていない人が意外に多い表現です。
「自己紹介で使うのは正しいの?」「メールで書いたら失礼にならない?」「ご紹介いただきましたとの違いは?」といった疑問を持つ人も少なくありません。
この記事では、「ご紹介に預かりました」という言葉の正しい意味、ビジネスメールやスピーチでの自然な使い方、さらに言い換えや英語表現までを、例文つきで丁寧に解説します。
読み終えるころには、どんな場面でも恥をかかないスマートな日本語表現が使いこなせるようになりますよ。
「ご紹介に預かりました」の意味と使い方を正しく理解する
まずは、「ご紹介に預かりました」という言葉の正しい意味と構造を理解しましょう。
この表現は、丁寧に見えて実は意味の誤解が多い日本語です。
「ご紹介に預かる」の本来の意味
「預かる」という言葉には「自分のもとで保管する」「責任をもって受け持つ」という意味があります。
そのため「ご紹介に預かる」は直訳すると「紹介という行為を私が預かる(担当する)」という意味になり、**「紹介を受けた」ではなく「紹介した」**という側に立つ表現なのです。
つまり、
「ご紹介に預かりました◯◯です」
という自己紹介は、本来の意味では誤りということになります。
「ご紹介に預かりました」は誤用とされる理由
本来は、「紹介した側(紹介者)」が「ご紹介に預かりました〇〇です」と言うのが正しい日本語です。
ところが、実際には「紹介された側(被紹介者)」が使うケースが多く、これが誤用として広まりました。
たとえば、司会者から「本日登壇されるのは、株式会社〇〇の△△様です」と紹介されたあとに、本人が「ご紹介に預かりました△△です」と挨拶するのは、文法的には「紹介を受けた」側が「預かりました」と言っているため不自然なのです。
とはいえ、現代ではこの表現が広く定着しており、フォーマルな場でも慣用表現として許容されているのが実情です。
つまり、誤用ではあるけれど「相手に伝わりやすく、違和感を持たれにくい表現」として、実務的には問題なく使われています。
「ご紹介に預かりました」と「ご紹介いただきました」の違い
ビジネスシーンでよく混同されるのが、「ご紹介に預かりました」と「ご紹介いただきました」です。
この2つは似ていますが、立場と意味がまったく違うため、正しく区別する必要があります。
「ご紹介いただきました」は紹介された側の正しい表現
「ご紹介いただきました」は、「あなた(または第三者)に紹介してもらった」という意味で、**被紹介者(紹介された側)**が使うのが正しいです。
そのため、ビジネスやスピーチの場ではこちらが正式表現になります。
例文:
〇〇様よりご紹介いただきました、株式会社ロロントの新田と申します。
本日はこのような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
このように「〜よりご紹介いただきました〇〇です」とすれば、意味的にも自然で失礼がありません。
「ご紹介に預かりました」は紹介した側の表現
一方、「ご紹介に預かりました」は、**紹介を行った人(紹介者)**が使う表現です。
つまり、「自分が紹介の役を担いました」という意味になります。
例文:
ただいまご紹介に預かりました、株式会社ロロントの新田でございます。
このように使うのは誤用とされますが、司会者から紹介を受けたあとにこの一文を添えると、やや古風で礼儀正しい印象を与えるため、スピーチや挨拶文では定番の慣用句として定着しています。
「ご紹介に預かりました」はビジネスメールで使っていい?
「ご紹介に預かりました」は、会話やスピーチではよく使われますが、ビジネスメールで使う場合は注意が必要です。
メールでは「ご紹介いただきました」が基本
ビジネスメールでは文法の正確さが重視されます。
そのため、「ご紹介に預かりました」は誤用とされるため、正式には「ご紹介いただきました」を使うのが正解です。
正しいメール例文:
件名:ご紹介いただきました〇〇株式会社の△△です
株式会社□□の××様よりご紹介いただきました、△△と申します。
このたびはご挨拶の機会をいただき誠にありがとうございます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
「ご紹介に預かりました」を使うと、相手が敬語に敏感な場合に「日本語が少しおかしい」と感じることがあります。
したがって、ビジネスメールや文書では「ご紹介いただきました」を推奨します。
会話やスピーチでは慣用表現として使用OK
一方で、会議やセミナーなどの挨拶では、「ご紹介に預かりました〜」を使っても問題ありません。
むしろ、口頭表現としては「耳馴染みが良く、儀礼的に感じられる」ため、多くの社会人が使用しています。
「ご紹介に預かりました」を使う自己紹介・スピーチの例文
ここからは、実際のビジネスやイベントの場で使える自然な例文を紹介します。
自己紹介・挨拶・結婚式など、シーンごとに分けて見ていきましょう。
ビジネス自己紹介での例文
ただいまご紹介に預かりました、株式会社ロロントの新田でございます。
このような場にお招きいただき、誠にありがとうございます。
本日は当社の新プロジェクトについてご説明させていただきます。
ビジネススピーチやプレゼンでは、この表現が一般的です。
「ご紹介に預かりました」には丁寧な響きがあり、初対面の聴衆にも好印象を与えられます。
社外イベントでの例文
ご紹介に預かりました、〇〇株式会社の△△と申します。
このような貴重な機会をいただき光栄です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
会議や講演の冒頭で使うと、フォーマルかつ落ち着いた印象になります。
司会者の紹介直後にこの一文を添えることで、自然な流れが作れます。
結婚式スピーチでの例文
ただいまご紹介に預かりました、新郎の上司、株式会社〇〇の△△でございます。
このたびは誠におめでとうございます。お二人の晴れの門出に立ち会うことができ、大変光栄です。
結婚式などフォーマルな場では、「ご紹介に預かりました」は伝統的な言い回しとして非常に好まれます。
参加者が目上の人ばかりの場合も、違和感なく受け入れられる表現です。
「ご紹介に預かりました」の自然な言い換えと使い分け
同じ意味を持ちながら、もう少し柔らかく・正確に伝えられる言い換え表現もあります。
場面ごとに適した言い換えを選ぶことで、印象がさらに良くなります。
よく使われる言い換え表現
| 言い換え表現 | ニュアンス・使い方 |
|---|---|
| ご紹介いただきました | 正式で正確な表現。ビジネスメールや挨拶で最適。 |
| ご紹介を受けました | ややカジュアル。会話でも自然に使える。 |
| ご縁をいただきました | 取引開始や人脈を広げる文脈で好印象。 |
| ご紹介を賜りました | 非常にフォーマル。社外や上層部向けに最適。 |
| ご紹介がありました | 客観的・中立的に伝えるときに。 |
例文比較:
ご紹介に預かりました〇〇です。
→ ご紹介いただきました〇〇です。(より自然で正確)
→ ご紹介を賜りました〇〇です。(より丁寧で格式高い)
状況別のおすすめ表現
- メールや文書では:「ご紹介いただきました」「ご紹介を賜りました」
- スピーチや挨拶では:「ご紹介に預かりました」
- カジュアルな社内会話では:「ご紹介を受けました」「ご縁をいただきました」
このように場面で使い分けることで、相手に違和感を与えず自然な印象を残せます。
「ご紹介に預かりました」を英語で表現する場合
英語では「ご紹介に預かりました」にぴったり当てはまる表現はありません。
しかし、場面に応じていくつかの言い回しに置き換えることができます。
基本的な表現
- I’ve been introduced as ~.(〜として紹介されました)
- Thank you for the kind introduction.(ご丁寧なご紹介ありがとうございます)
- It’s an honor to be introduced today.(本日ご紹介いただけて光栄です)
例文:
Thank you for the kind introduction. My name is Hanako Nitta from Roront Corporation.
(ご紹介ありがとうございます。ロロント株式会社の新田と申します。)
スピーチやプレゼンの冒頭でよく使われる定番の表現です。
「ご紹介に預かりました」は自己紹介の常套句として定着している
「ご紹介に預かりました」は文法的には誤用ですが、自己紹介の定型句として日本社会に深く根付いています。
特に以下のような状況では、ごく自然に使うことができます。
- 講演・セミナーなどのスピーチ冒頭
- 社外イベントや会議での登壇挨拶
- 結婚式・表彰式などフォーマルな式典
むしろ、「ご紹介いただきました」よりも柔らかく聞こえるため、「挨拶の冒頭表現」としては定着しています。
ただし、文章やメールなど**“記録に残る場面”では使わない方が無難**です。
まとめ
「ご紹介に預かりました」は、文法上は「紹介する側」の表現ですが、現代では「紹介された側」が使う慣用表現として定着しています。
そのため、スピーチや口頭の挨拶では問題ありませんが、ビジネスメールや公式文書では「ご紹介いただきました」を使うのが正解です。
使い分けのポイントは次のとおりです。
- スピーチ・口頭挨拶 → 「ご紹介に預かりました」でもOK
- メール・文書 → 「ご紹介いただきました」または「ご紹介を賜りました」
- カジュアル会話 → 「ご紹介を受けました」「ご縁をいただきました」
状況に応じて自然な言葉を選べば、相手への印象が格段に良くなります。
正しい言葉遣いは、あなた自身の信頼にもつながりますよ。




























