「リバースブルートフォース攻撃って聞いたことはあるけれど、実際にどんなものなのか分からない」「自社のセキュリティ対策として必要なのか不安」と感じている情報システム担当者も多いのではないでしょうか。近年のサイバー攻撃は高度化・巧妙化しており、特にログイン認証の突破を狙った攻撃は企業にとって深刻な脅威となっています。この記事では、リバースブルートフォース攻撃の仕組みや実例、一般的なブルートフォース攻撃との違い、そして企業が取り組むべき具体的な対策まで、わかりやすく解説します。
リバースブルートフォース攻撃とは?
攻撃の定義と概要
リバースブルートフォース攻撃とは、1つのパスワードに対して多数のユーザーIDを試すことでログイン突破を狙う攻撃手法です。通常のブルートフォース攻撃が「特定のユーザーIDに対して複数のパスワードを試す」のに対し、リバースブルートフォースでは「よくあるパスワード(例:123456)」を使って多くのIDで試行します。
目的と狙い
この攻撃の目的は、弱いパスワードを使っているアカウントを特定し、そこから情報漏洩やシステム侵入につなげることです。特にメールアドレスがユーザーIDになっているサービスは、SNSや企業サイトなどからID情報を取得しやすいため、狙われやすい傾向にあります。
ブルートフォース攻撃との違い
基本的な違い
攻撃手法 | ブルートフォース | リバースブルートフォース |
---|---|---|
試行パターン | 1つのID × 複数パスワード | 1つのパスワード × 複数ID |
ターゲットの絞り方 | 特定のID | よくあるパスワード使用者 |
成功率の傾向 | 時間はかかるが成功率が高め | 弱パスワード使用者に対して高リスク |
レインボー攻撃との違い
レインボー攻撃は、事前に作成したハッシュ化されたパスワード一覧(レインボーテーブル)を使って、パスワード解析を高速化する攻撃です。対して、リバースブルートフォースはIDとパスワードの組み合わせを実際に試す手法であり、攻撃対象が異なります。
実際にあったリバースブルートフォース攻撃の事例
事例1:グローバルなメールサービスでの大量ログイン試行
ある大手メールサービスでは、よく使われるパスワード「password」や「123456」を使って、大量のメールアドレスに対して不正ログインが試行されたケースがあります。多くのユーザーがパスワードを使い回していたため、複数のアカウントが実際に乗っ取られました。
事例2:企業向けVPNログインへの攻撃
コロナ禍以降、VPNの利用が拡大する中、企業のVPNログイン画面に対して「admin」や「test」などの初期IDと推測されるパスワードでリバースブルートフォース攻撃が行われ、数社で一時的な侵入が報告されました。
リバースブルートフォースの脅威:企業へのリスク
被害に遭うとどうなる?
- アカウント乗っ取り → 顧客情報や社内機密が漏洩
- サービスの停止 → 業務が一時停止、顧客対応が必要に
- 信頼失墜 → ブランドイメージの低下、顧客離れ
中小企業も例外ではない
「うちは狙われないだろう」と思われがちですが、無作為に行われるリバースブルートフォース攻撃においては、IDが存在すること自体がターゲットになり得ます。
リバースブルートフォース攻撃への対策方法
対策1:強固なパスワードポリシーの導入
- 辞書に載っている単語を使わない
- 生年月日や社員番号など予測しやすいものを避ける
- パスワードの長さを12文字以上に設定
対策2:多要素認証(MFA)の導入
パスワードが万が一突破されても、SMSやアプリによる二段階認証を導入すれば、不正アクセスを未然に防げます。
対策3:アカウントロック・レートリミット
- 一定回数ログインに失敗した場合、アカウントを一時ロック
- 同一IPアドレスからの大量リクエストを制限
対策4:ログ監視と異常検知
- ログイン履歴を自動監視し、異常なアクセスを検出
- 地理的に不自然なログインがあればアラートを出す
対策5:社員への教育と啓発
- リバースブルートフォースの存在を社内周知
- 年に数回、セキュリティ研修を実施
IPA試験・資格に出題される可能性も
IPA試験での出題傾向
「情報セキュリティマネジメント試験」など、IPA関連の資格試験では、リバースブルートフォースやブルートフォース、レインボー攻撃の違いについて問われるケースがあります。
該当する問題例
次のうち、リバースブルートフォース攻撃に該当するものはどれか。
- 一つのユーザーIDに対し、多数のパスワードを試行する
- 一つのパスワードに対し、多数のユーザーIDでログインを試行する
- 辞書に登録された単語を用いてパスワードを試す
- ハッシュ化されたパスワードをレインボーテーブルで解析する
→ 正解は 2。
英語での表記と解説
- 英語表記:Reverse Brute Force Attack
- 関連語:Credential Stuffing(資格情報詰め込み攻撃)、Password Spray Attack
まとめ:リバースブルートフォース対策は“基本の徹底”から
リバースブルートフォース攻撃は、企業のアカウントセキュリティにおける盲点を突く手法です。弱いパスワードの使い回しや、ユーザーIDが推測しやすい構成になっていると、すぐに狙われてしまう可能性があります。
しかし、基本的なパスワードポリシーの設定や多要素認証の導入、ログの監視体制の整備を行うだけでも、リスクは大きく下げられます。特に中小企業でも、今日から実践できる対策ばかりです。
今後さらに巧妙化するサイバー攻撃に備えるためにも、日常的なセキュリティ意識の向上と、継続的な対策の見直しが欠かせません。