ビジネスの現場でよく見かける「簡単ではございますが」という言葉。
送別の挨拶メールやお礼のメッセージ、スピーチの締めくくりなど、幅広く使われる表現ですよね。
一見すると便利な丁寧語ですが、実は使い方を誤ると「軽すぎる」「失礼」と思われてしまうこともあります。
この記事では、「簡単ではございますがご挨拶」「簡単ではございますがお礼」「簡単ではございますがご挨拶とさせていただきます」など、実際の場面での自然な使い方を具体例とともに解説します。
読後には、どんな相手にも好印象を与えるスマートな言葉選びができるようになりますよ。
「簡単ではございますが」の意味とビジネスシーンでの役割
まずは、この言葉の意味を正確に理解しておきましょう。
「簡単ではございますが」は、「簡単に済ませてしまうようで恐縮ですが」という意味を含んだへりくだりの表現です。
自分の言葉や行動を控えめに表現し、相手に敬意を示すためのクッションフレーズなのです。
「簡単ではございますが」が使われる代表的な場面
この表現は、特に以下のようなビジネスシーンでよく使われます。
- メールの冒頭や文末でお礼や挨拶を述べるとき
- スピーチや送別会の締めくくり
- お客様への手紙・メッセージカードで感謝を伝えるとき
- 年末年始のご挨拶や季節のご案内など
どの場面でも共通しているのは、**「長々と書くのは控えたいが、礼儀は尽くしたい」**という気持ちを伝えるときに使う、という点です。
「簡単ですが」との違い
「簡単ですが」と言うと少しフランクで、社内では自然でも社外や取引先向けにはカジュアルに響きます。
一方、「簡単ではございますが」と言えば、丁寧でフォーマルな印象を保てるため、ビジネスメールや挨拶文としても違和感がありません。
つまり、同じ「短く済ませる」という意味でも、「ございますが」をつけるだけで印象がぐっと大人びるのです。
「簡単ではございますがご挨拶」を使うときの自然な書き方と例文
「簡単ではございますがご挨拶」は、メールやスピーチの定番表現です。
ただし、前後の文脈によって印象が大きく変わるため、適切な使い方を知っておくことが大切です。
ビジネスメールでの使い方
ビジネスメールでは、次のような構成で使うと自然です。
- 軽い導入文(挨拶や背景)
- 本題(異動・就任・感謝など)
- 「簡単ではございますがご挨拶申し上げます」とつなげる
- 今後の関係性やお礼で締めくくる
例文1:異動の挨拶メール
株式会社ロロントの新田と申します。
このたび、〇〇部から〇〇部へ異動することとなりました。
簡単ではございますが、ご挨拶申し上げます。
在任中は格別のご支援を賜り、心より御礼申し上げます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
異動や退職など、感謝を伝える場面で「簡単ではございますが」を入れると、控えめながら誠実な印象を与えます。
例文2:就任の挨拶メール
平素よりお世話になっております。株式会社ロロントの新田でございます。
このたび、営業部部長に就任いたしました。
簡単ではございますが、ご挨拶を申し上げます。
引き続きご指導のほど、何卒よろしくお願いいたします。
ビジネス上の初対面では「簡単ですが」よりも「ございますが」を使うことで、礼儀正しさをしっかり伝えられます。
「ご挨拶申し上げます」と「ご挨拶とさせていただきます」の違い
似た表現ですが、意味合いが少し異なります。
- 「ご挨拶申し上げます」:これから挨拶を述べるとき
- 「ご挨拶とさせていただきます」:挨拶を終えるときの締め言葉
例文3:送別スピーチでの締めくくり
短い間でしたが、皆さまには本当にお世話になりました。
簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます。
これまでのご支援に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
「ご挨拶申し上げます」で始め、「ご挨拶とさせていただきます」で締めると、自然な流れになります。
「簡単ではございますがお礼」メールの書き方と印象アップのコツ
お礼メールに「簡単ではございますが」を入れると、控えめな印象を保ちながらも丁寧な気持ちを伝えることができます。
ただし、お礼の主旨が曖昧にならないよう、本文構成に注意が必要です。
基本構成
お礼メールでは、以下のように組み立てると自然です。
- 感謝を伝える前置き
- 相手がしてくれた行為の具体的な内容
- 「簡単ではございますが、お礼申し上げます」で気持ちをまとめる
- 今後のお願いや締めの言葉
例文1:商談後のお礼メール
本日はご多忙の中、お打ち合わせのお時間をいただきありがとうございました。
有意義なお話を伺うことができ、大変勉強になりました。
簡単ではございますが、お礼申し上げます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
例文2:研修会・講演へのお礼メール
このたびは貴重なお話を拝聴できる機会をいただき、誠にありがとうございました。
簡単ではございますが、心よりお礼申し上げます。
今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。
このように、「簡単ではございますが」を挟むことで、直接的すぎない柔らかいトーンになります。
「まずはお礼まで」との違い
「まずはお礼まで」は、ビジネスでも使われる表現ですが、ややカジュアルで社内向けのニュアンスです。
社外や上位者へ送る場合は、「簡単ではございますが、お礼申し上げます」とした方が無難です。
悪い例
取り急ぎお礼まで。
→ 口語的すぎて、フォーマルな文面には不向きです。
良い例
簡単ではございますが、心よりお礼申し上げます。
→ 丁寧で温かい印象を与えます。
スピーチで「簡単ではございますが」を上手に使うコツ
スピーチや朝礼などの口頭場面では、「簡単ではございますが」は締めくくりのクッション表現として効果的です。
ただし、読み上げる場合は文が長くなりすぎないようにするのがポイントです。
スピーチでの活用シーン
- 送別会や表彰式の挨拶
- 新年会・忘年会などの代表挨拶
- セミナーや講演会の終了時
例文1:送別スピーチ
皆さまの温かいご支援に支えられ、ここまで続けることができました。
簡単ではございますが、感謝の気持ちをお伝えし、ご挨拶とさせていただきます。
これまで本当にありがとうございました。
例文2:会議やプレゼンの締め
簡単ではございますが、本日のご報告とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。
ここでのポイントは、「簡単ですが」よりもフォーマルな印象を保つこと。
特に社外向けの発表や役員が同席する場面では、「ございますが」を選ぶだけで印象が大きく変わります。
「簡単ではございますが」の言い換え表現とその使い分け
同じ言葉ばかり使ってしまうと、形式的に見えることがあります。
そこで、意味を保ちながらトーンを変えられる代替表現を覚えておきましょう。
よく使われる言い換え例
| 言い換え表現 | ニュアンス・使う場面 |
|---|---|
| 手短ではございますが | スピーチや口頭で自然 |
| 略儀ながら | 手紙・フォーマル文書 |
| 恐縮ではございますが | 相手への敬意をより強調 |
| 取り急ぎ | 緊急メールや報告時 |
| まずは | 柔らかい印象で社内向けに適す |
例文1:「略儀ながら」の使用
略儀ながら書中をもちましてお礼申し上げます。
今後ともご厚誼のほどお願い申し上げます。
例文2:「手短ではございますが」
手短ではございますが、感謝の意を述べさせていただきます。
本日は誠にありがとうございました。
「簡単ではございますが」よりも自然なテンポで話せるため、スピーチや会話の場面に向いています。
「簡単ではございますが」を使うときの注意点とマナー
この言葉は便利ですが、使い方を間違えると逆効果になることもあります。
いくつかの注意点を押さえておきましょう。
1. 何度も繰り返さない
メール本文に2回以上出てくると、くどく感じられます。
1通につき1回を目安にすると、読み手に自然な印象を与えられます。
2. 本当に簡潔な内容のときに使う
長文メールに「簡単ではございますが」と書くと矛盾してしまいます。
2〜4行程度の軽いお礼や報告などに使うのが適しています。
3. カジュアルすぎる表現との混在を避ける
「簡単ではございますが」の直後に「〜です!」「〜でしたね」などを続けるとトーンが合いません。
文体は「です・ます」で統一しましょう。
4. 「取り急ぎ」との使い分け
「取り急ぎ」は急ぎの連絡を強調する表現であり、感謝や挨拶の文脈では避けるべきです。
「簡単ではございますが」は、スピードよりも礼儀を重んじたいときに適しています。
まとめ:「簡単ではございますが」は“短くても丁寧”を伝える魔法の一言
「簡単ではございますが」という言葉は、短く済ませたいけれど相手に敬意を伝えたいときに最適な表現です。
ポイントは、「言葉の控えめさの中に、誠実さを感じさせること」。
- 社外メールでは「簡単ではございますが、ご挨拶申し上げます」
- お礼の文では「簡単ではございますが、心よりお礼申し上げます」
- スピーチでは「簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます」
これらを適切に使い分けるだけで、文面全体の印象が格段に上がります。
言葉選びひとつで「思いやり」や「品格」は伝わるもの。
次にビジネスメールを書くときは、ぜひこの表現を自然に取り入れてみてください。
きっと、相手に「丁寧な人だな」と感じてもらえるはずです。




























