受付は、企業・病院・イベントの「顔」ともいえる存在です。
初めて来社した人にとって、受付スタッフの言葉遣いや立ち居振る舞いが、その組織全体の印象を決めることも珍しくありません。
この記事では、ビジネス現場で恥をかかないための受付対応の基本マナーと言葉遣いを、来客・電話・イベント・結婚式などあらゆる場面別に解説します。
これを読むことで、どんな受付対応でも自信をもって臨める「信頼される接客スキル」が身につきます。
受付で求められる言葉遣いの基本と役割
受付は「会社の印象を決める窓口」
受付担当は単なる案内係ではなく、組織の第一印象を左右する広報的存在です。
「最初の3秒で印象が決まる」と言われるように、言葉遣いや声のトーン、姿勢ひとつで「丁寧」「感じが良い」「信頼できる」といった評価を得られます。
そのため、受付では「正しい敬語」と「柔らかい対応」の両立が不可欠です。
実際、多くの企業では受付対応が商談や契約に影響することもあります。たとえば、営業先を訪れた取引先が受付で冷たい対応を受けた場合、その企業全体に対する印象が下がってしまうこともあります。
つまり、受付は企業ブランドを背負う重要なポジションなのです。
受付業務での敬語の基本3原則
- 尊敬語・謙譲語・丁寧語を使い分ける
来客には尊敬語、自分や自社に関する話は謙譲語を使うことでバランスを保ちます。
例:「お越しいただきありがとうございます」「少々お待ちいただけますでしょうか」など。 - 常に“相手目線”で言葉を選ぶ
相手が年上・顧客・初対面であることを前提に、馴れ馴れしい言葉や省略語は避けます。
×「少々待ってください」→〇「少々お待ちいただけますか」 - 丁寧語の重ねすぎを避ける
「おっしゃられる」「ご覧になられますか」などの二重敬語は、過剰に聞こえるため注意が必要です。
正しくは「おっしゃいます」「ご覧になります」と言い換えます。
受付で避けたい言葉遣いとその理由
受付対応では、つい日常的な表現を使ってしまいがちですが、次のような言葉は要注意です。
| NG表現 | 理由 | 正しい言い方 |
|---|---|---|
| 「〜になります」 | 説明語として不自然(形容詞・名詞には不要) | 「〜でございます」「〜です」 |
| 「了解しました」 | 目上に使うのは失礼 | 「承知いたしました」「かしこまりました」 |
| 「少々お待ちください」 | 命令形でやや強い | 「少々お待ちいただけますか」 |
| 「〜のほう」 | 曖昧な表現 | 「〜を」「〜に」など明確に言い切る |
これらを正しく使い分けることで、受付としての信頼度が格段に上がります。
来客対応で信頼される言葉遣いと丁寧な接客フレーズ
来客時の第一声で印象を左右する
来客対応で最初に発する一言は、相手の印象を大きく左右します。
受付では笑顔で姿勢を正し、相手の目を見て挨拶しましょう。
基本フレーズ例:
- 「いらっしゃいませ。〇〇株式会社でございます。」
- 「ご来社ありがとうございます。ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
- 「恐れ入りますが、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか。」
この際、「どうされましたか?」という聞き方は避けましょう。相手によっては高圧的に感じられることがあります。
代わりに「ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか」と許可を得る言い方が自然で上品です。
案内・取次ぎの場面での適切な言葉遣い
来客を担当者に取り次ぐ際には、正確かつ丁寧な言葉選びが求められます。
受付での対応例:
- 「ただいま担当者をお呼びいたしますので、少々お待ちくださいませ。」
- 「〇〇でお間違いないでしょうか。少々お待ちくださいませ。」
- 「担当の△△が参りますまで、こちらでお待ちいただけますでしょうか。」
また、電話や内線での取次ぎ時には、「〜様がいらっしゃいました」と伝えるとスマートです。
たとえば、「A社の田中様がご来社されました」と報告することで、相手にもわかりやすく伝わります。
お見送りのときの言葉選びと注意点
来客対応の最後も印象を残す大切な場面です。
お見送りの際は、ドアを開けながら目線を合わせて丁寧に挨拶します。
おすすめフレーズ:
- 「本日はご来社いただき、誠にありがとうございました。」
- 「お気をつけてお帰りくださいませ。」
- 「またのご来社を心よりお待ちしております。」
なお、ドアを閉めるタイミングにも注意しましょう。
相手が完全に外に出てから静かにドアを閉めることで、細やかな心遣いを感じさせます。
電話応対で信頼される言葉遣いとトーンの作り方
電話応対は“声だけの受付”
電話応対は、相手が顔を見られない分、声の印象と言葉選びがすべてです。
第一声の明るさやテンポが、その後の会話の空気を決定づけます。
電話応対の基本フレーズ一覧:
| シーン | フレーズ例 |
|---|---|
| 受電時 | 「お電話ありがとうございます。〇〇株式会社、受付の△△でございます。」 |
| 相手の名を確認 | 「失礼ですが、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか。」 |
| 取次ぎ | 「少々お待ちくださいませ。担当者におつなぎいたします。」 |
| 担当不在 | 「申し訳ございませんが、ただいま席を外しております。戻り次第、折り返しご連絡いたします。」 |
| 終話時 | 「お電話ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。」 |
電話応対で注意すべき言葉遣い
電話は相手の表情が見えない分、少しの言葉遣いの違いが印象を大きく左右します。
以下の点に気をつけましょう。
- 「もしもし」は社外の電話では使わない。
- 名乗りは会社名→部署→名前の順に。
- 「わかりました」ではなく「かしこまりました」を使う。
- メモを取る際の沈黙時間は「少々お待ちくださいませ」と一言添える。
また、声のトーンは普段より半音高く・スピードはややゆっくりが理想です。
聞き取りやすさと安心感を両立できます。
電話応対マニュアルを整備するメリット
企業や施設では、電話対応の質を一定に保つために受付接客マニュアルや電話応対マニュアルを整備することが多くあります。
これにより、誰が出ても同じ印象を与えられる「組織としての信頼性」が高まります。
マニュアル化のポイントは以下の3点です。
- 挨拶・名乗り・確認の流れを統一する
- よくある問い合わせへの定型フレーズを共有する
- クレーム・緊急対応時の言葉遣いを具体的に明記する
こうした仕組み化は業務効率にも直結し、教育コストを削減できます。
病院受付・イベント受付・結婚式受付の言葉遣いの違い
病院受付での言葉遣いは「安心感」が最優先
病院受付は、患者が不安や緊張を抱えて来院することを前提に、優しさと落ち着きのある言葉遣いが求められます。
適切なフレーズ例:
- 「おはようございます。本日はどういったご用件でしょうか。」
- 「保険証をお預かりいたします。」
- 「少々お待ちいただけますか。順番にご案内いたします。」
避けたいのは、事務的で冷たい印象の言葉です。
「ちょっと待ってください」「名前は?」などの短い命令口調は、不安を増幅させてしまいます。
代わりに「恐れ入りますが」「〜いただけますか」といったクッション言葉を使いましょう。
イベント受付では「明るさ」と「臨機応変さ」が鍵
イベント受付は、来場者数が多く、スピーディーな対応が求められます。
そのため、明るくハキハキした声と要点を押さえた言葉遣いが重要です。
フレーズ例:
- 「ようこそお越しくださいました。ご予約のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
- 「受付はこちらで完了です。どうぞ会場内へお進みください。」
- 「パンフレットをお渡しいたします。お時間までこちらでお待ちくださいませ。」
混雑時こそ、笑顔と落ち着いた口調を意識しましょう。
焦って早口になると、伝達ミスやクレームにつながることがあります。
結婚式の受付での言葉遣いは「格式」と「温かさ」を両立
結婚式受付では、主催者に代わってゲストを迎えるため、フォーマルさと柔らかさのバランスが大切です。
受付での基本対応フレーズ:
- 「本日はおめでとうございます。ご出席ありがとうございます。」
- 「こちらにお名前のご記入をお願いいたします。」
- 「お祝いをお預かりいたします。」
- 「お席のご案内まで、少々お待ちくださいませ。」
また、会場スタッフとしての受付の場合も、笑顔と落ち着いた声で案内することが信頼感につながります。
受付対応マニュアルを整備して対応品質を上げる方法
マニュアルを作る目的と効果
受付対応マニュアルは、対応の標準化・品質向上・教育効率化を目的とします。
たとえば「誰が受付しても同じ印象を与える」状態を作ることで、顧客満足度を安定させられます。
マニュアルに含めるべき基本項目
- 来客・電話・イベント・緊急時などの対応フロー
- 言葉遣い・敬語のルールと具体例
- 服装・姿勢・笑顔のガイドライン
- クレーム時の対応例と禁止表現
- 代表的なNG行動と改善ポイント
このように整理しておくと、新人教育でも使いやすく、引き継ぎの負担も減ります。
教育担当者が気をつけたいポイント
マニュアルは作って終わりではなく、実際に使えるかどうかの検証が重要です。
月に一度ロールプレイを行い、改善点を反映することで、常に現場に合った内容を維持できます。
また、受付担当の声のトーンや表情を動画でチェックするのも効果的です。
まとめ|受付対応は「丁寧な言葉遣い」と「思いやり」で印象が決まる
受付は、単に人を案内するだけの仕事ではありません。
相手の心に安心感を与え、会社や施設全体の印象を形づくる重要なポジションです。
この記事で紹介したように、
- 「敬語の使い分け」
- 「クッション言葉の活用」
- 「シーン別フレーズの選び方」
- 「受付対応マニュアルの整備」
これらを意識するだけで、あなたの受付対応は一段と洗練されます。
“感じが良い受付”は、最終的に組織全体の信頼を高める接客力へとつながります。
今日から一つひとつの言葉に心を込め、誰にとっても心地よい受付対応を目指していきましょう。




























