仕事をしていると、計画していたスケジュールをどうしても変更せざるを得ない場面があります。その際によく使われる表現が「後ろ倒し」です。しかし、この言葉は正しく理解されていない場合も多く、誤解を招くこともあります。この記事では「後ろ倒し」の正しい意味や「先送り」との違い、そしてビジネスメールでの適切な伝え方と例文を詳しく解説します。取引先や上司に失礼にならない表現を身につければ、信頼関係を損なわずにスケジュール調整ができるようになりますよ。
後ろ倒しの意味を正しく理解する方法
「後ろ倒し」という言葉は、ビジネスシーンで頻繁に使われますが、その意味を正確に説明できる人は意外と少ないです。まずは基本から整理しましょう。
後ろ倒しの正しい意味とは
「後ろ倒し」とは、予定していたスケジュールや締め切りを、元の計画よりも後の日程にずらすことを指します。たとえば「来週月曜日に予定していた会議を水曜日に変更する」といった場合です。つまり、スケジュールが遅れることをやわらかく表現しているのです。
一方で、「後倒し」と表記される場合もあります。この場合も意味は同じですが、どちらを使うか迷う方も多いでしょう。一般的には「後倒し」が辞書的に正しい表現ですが、ビジネスメールや会話の中では「後ろ倒し」も広く使われています。
後ろ倒しと先送りの違い
似た言葉に「先送り」がありますが、こちらはニュアンスが少し異なります。「先送り」は明確な日程を示さず、ただ延期するという意味で使われることが多いです。つまり「後ろ倒し」は具体的にスケジュールを再設定しているのに対し、「先送り」は期限を曖昧にする可能性があるのです。
- 後ろ倒し:日程を後ろにずらし、明確な新しい期日を提示する
- 先送り:期限を決めずに延ばす、あるいは判断を保留する
業務上の信頼関係を考えると、相手には「先送り」よりも「後ろ倒し」と伝えた方が安心感がありますよ。
後ろ倒しは間違いなのか
「後ろ倒し」という表現に違和感を覚える人もいます。「正しくは『後倒し』では?」と思う方もいるでしょう。実際に国語辞典に載っているのは「後倒し」で、「後ろ倒し」は俗に広がった言葉といえます。ただし、ビジネスシーンではすでに定着しているため「間違い」とまでは言えません。相手によっては「後倒し」と使った方が無難なケースもあります。
スケジュールを後ろ倒しするときに失礼にならない伝え方
相手に「後ろ倒し」を伝えるときは、ただ延期を伝えるのではなく、相手の都合に配慮しながら調整する姿勢が大切です。
そのまま「後ろ倒し」と書くのは避ける
ビジネスメールで「後ろ倒しします」とストレートに書くと、ややぶっきらぼうに見えることがあります。そのため、できれば別の表現に言い換えると丁寧さが増します。
たとえば以下のような言い換えが使えます。
- 「日程を変更させていただきます」
- 「納期を延期させていただければと存じます」
- 「スケジュールを調整し、後日に変更させていただきます」
このように伝えることで、相手に配慮している印象を与えられます。
後ろ倒しを依頼するときのポイント
自分の都合でスケジュールを変える場合は、必ず理由を簡潔に伝えることが大切です。曖昧なままだと「本当に必要な変更なのか?」と疑問を持たれてしまうからです。理由を伝えるときは、業務上のやむを得ない事情にフォーカスすると理解されやすいですよ。
- 「関連部署の確認に時間を要しており」
- 「品質確認の工程を追加したため」
- 「相手方との調整により」
このような背景を添えると、相手も納得しやすくなります。
スケジュール変更をお願いするときのクッション言葉
メールで「後ろ倒し」を伝える際は、いきなり本題に入らず、クッション言葉を添えると柔らかい印象になります。
- 「大変恐れ入りますが」
- 「ご迷惑をおかけして恐縮ですが」
- 「誠に勝手ながら」
これらを文頭に入れるだけで、受け取る側の印象はぐっと良くなりますよ。
後ろ倒しを伝えるビジネスメール例文
実際に「スケジュールを後ろ倒ししたい」と伝える場面を想定し、メール例文を紹介します。
プロジェクト進行を後ろ倒しするときの例文
件名:納期変更のお願い
株式会社〇〇
△△様
いつも大変お世話になっております。〇〇株式会社の□□です。
このたびご依頼いただいておりますプロジェクトにつきまして、工程の調整が必要となり、当初〇月〇日を予定しておりました納期を、〇月〇日に変更させていただきたく存じます。
ご迷惑をおかけして誠に恐縮ですが、品質を担保するための対応でございますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
〇〇株式会社
□□
会議の日程を後ろ倒しするときの例文
件名:打ち合わせ日程変更のお願い
△△株式会社
〇〇様
お世話になっております。□□です。
来週予定しておりました打ち合わせですが、都合により〇月〇日に後ろ倒しさせていただければ幸いです。ご多用のところ恐れ入りますが、ご調整いただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
後ろ倒しと後倒しの使い分けを理解する
「後ろ倒し」と「後倒し」はどちらも似た意味を持ちますが、正しく使い分けることで、ビジネスメールや会話においてより的確で信頼感のある表現ができます。
後倒しが本来の正しい表現
国語辞典に掲載されているのは「後倒し」です。意味は「予定を後の日程にずらすこと」で、正式な日本語表現といえます。公的な文書や取引先へのフォーマルな場面では「後倒し」と書いた方が無難です。
後ろ倒しが使われる理由
一方で「後ろ倒し」は、社内の会話や日常的なやり取りで多く使われています。「スケジュールを後ろに倒す」という直感的なイメージから浸透した表現で、特に口語では違和感なく使われています。
使い分けの目安
- 社内の会話やカジュアルなやり取り → 「後ろ倒し」でも問題なし
- 社外へのメールや正式な報告書 → 「後倒し」を使用した方が安全
相手や場面に応じて使い分けることが、誤解や違和感を避けるコツですよ。
後ろ倒しを誤解されないための注意点
便利な表現である「後ろ倒し」ですが、使い方を誤ると相手にネガティブな印象を与えてしまうこともあります。
曖昧な日程にしない
「スケジュールを後ろ倒しします」とだけ伝えると、「結局いつになるの?」と相手に不安を与えてしまいます。必ず新しい日程や納期を明示しましょう。
例:「当初〇月〇日を予定しておりましたが、〇月〇日に変更させていただきます」
相手に責任転嫁しない
「先方の都合により後ろ倒しになりました」など、責任の所在を強調すると、場合によっては相手に不快感を与える可能性があります。あくまで「調整の結果」として柔らかく伝えるのが良いです。
頻繁な後ろ倒しは信頼を損なう
たびたび後ろ倒しが発生すると、「この人は計画性がない」と思われてしまいます。どうしても必要な場合に限定し、他の業務に影響が出ないよう工夫することが大切です。
業務効率を下げないスケジュール調整のコツ
「後ろ倒し」を使う状況は、業務上どうしても発生します。しかし、その都度対応が場当たり的になると、効率が下がってしまいます。以下のコツを押さえておきましょう。
バッファを設けて計画する
最初から余裕を持ったスケジュールを組んでおけば、多少の遅れが発生しても「後ろ倒し」を繰り返す必要がなくなります。納期を提示する際は、想定よりも少し長めに設定しておくのがコツです。
関係者との早めの共有
後ろ倒しが避けられない場合、できるだけ早い段階で関係者に伝えることが重要です。直前の連絡は相手の調整を難しくするため、信頼を損ねる原因になります。
後ろ倒しをポジティブに伝える
「後ろ倒し=遅延」と受け止められがちですが、伝え方次第で印象は変わります。「品質をより高めるために工程を見直し、納期を調整しました」といったように、改善の意図を込めると前向きに理解してもらえますよ。
後ろ倒しの例文をさらに活用する
実務で使えるよう、もう少しバリエーション豊かな例文を紹介します。
社内調整での後ろ倒し
「お打ち合わせの準備に追加の資料が必要となったため、日程を後ろ倒しさせていただきます。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
クライアント向けの後ろ倒し
「当初ご提示した納期ですが、品質確認の工程を追加したため、〇日まで後ろ倒しさせていただければ幸いです。ご迷惑をおかけいたしますが、より良い成果物をお届けするための調整ですので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。」
社外パートナーとの後ろ倒し
「共同プロジェクトにつきまして、スケジュールを調整し、開始日を〇日後ろ倒しとさせていただきます。進行上ご不便をおかけいたしますが、今後の進め方についても改めてご相談させてください。」
後ろ倒しの言葉選びで失敗しない工夫
ビジネスの現場では「後ろ倒し」という表現ひとつで相手の印象が変わります。適切な言葉選びを意識することで、信頼を損なわずにスムーズな調整ができます。
ネガティブな印象を避ける表現
「後ろ倒し」という言葉はどうしても遅延を連想させます。そこで以下のような表現を組み合わせると柔らかく伝えられます。
- 「調整の結果、日程を変更させていただきます」
- 「品質向上を目的に、納期を再設定いたしました」
- 「進行を見直し、開始日を〇日に変更いたしました」
これらの言い換えによって、「遅れ」ではなく「前向きな調整」というニュアンスを加えることができます。
相手への配慮を必ず添える
日程変更を伝える際には「ご不便をおかけし恐縮ですが」や「ご理解賜れますと幸いです」といったクッション言葉を添えることで、相手に与える印象が大きく変わります。特に社外のやり取りでは、このひと言が信頼を保つポイントになります。
社内では簡潔に、社外では丁寧に
社内のチャットでは「明日の会議を後ろ倒しします」と簡潔に伝えても問題ありません。ただし社外や上司に対しては「ご都合を踏まえ、会議を〇日に後ろ倒しとさせていただきます」といった形で丁寧にする方が安全です。相手との関係性やシーンに合わせて調整しましょう。
英語で後ろ倒しを伝える方法
グローバルな取引が増えている今、「後ろ倒し」を英語でどう表現するかを知っておくことも大切です。直訳はできないため、文脈に応じた言い換えが必要になります。
よく使われる英語表現
- postpone(延期する)
もっとも一般的な表現で、会議や納期を「後ろ倒し」するときに使えます。
例: The meeting has been postponed until next week.
(会議は来週に後ろ倒しとなりました。) - push back(後ろに押す)
カジュアルな表現で、社内メールや口頭でよく使われます。
例: We need to push back the deadline by two days.
(締め切りを2日後ろ倒しする必要があります。) - reschedule(再調整する)
「後ろ倒し」だけでなく「前倒し」にも使える便利な表現です。
例: The project has been rescheduled to start in April.
(プロジェクトの開始が4月に後ろ倒しとなりました。)
英語表現を使う際の注意点
「postpone」はフォーマル、「push back」はカジュアルと使い分けると自然です。また、相手に不快感を与えないように「due to additional quality checks(追加の品質確認のため)」や「to better align with your schedule(貴社のスケジュールに合わせるため)」など、理由を添えると誠意が伝わります。
まとめと実務での活用ポイント
ここまで「後ろ倒し」の意味や使い方、メールでの例文、誤解されない伝え方、そして英語表現までを解説してきました。最後に実務で活用するためのポイントを整理します。
ポイントのおさらい
- 「後倒し」が辞書的には正しいが、口語では「後ろ倒し」も広く使われている
- 相手や場面に応じて「後ろ倒し」と「後倒し」を使い分けることが大切
- メールで伝える際は日程を具体的に示し、責任転嫁せず、理由や配慮を添える
- 頻繁な後ろ倒しは信頼を損なうため、計画段階でバッファを設ける工夫を
- 英語では「postpone」「push back」「reschedule」を場面に応じて使い分ける
実務に活かす工夫
日程の変更は避けられない場面が多いですが、その伝え方次第で信頼関係を深めることもできます。「後ろ倒し」はただの言葉の問題ではなく、ビジネスの進め方そのものに関わる表現です。常に相手の立場を意識し、誠実に伝えることが最も重要ですよ。