「派遣なのに社員と同じ仕事を任されている」「業務量がどんどん増えて辞めたい」と感じていませんか。派遣社員として働く上で、本来の契約範囲を超える仕事を求められるケースは少なくありません。しかし、それを放置すると心身に負担がかかるだけでなく、法律的にも問題が発生する場合があります。この記事では、派遣社員が抱えやすい“責任の重さ”の実態を掘り下げながら、業務範囲の線引きと、無理な仕事を正しく断る方法を具体的に解説します。働く自分を守るために、ぜひ最後まで読んでください。
派遣なのに社員と同じ仕事を任されるのはなぜか
多くの派遣社員が最初に戸惑うのは、「派遣なのに社員と同じような責任を求められる」という状況です。立場や契約上の線引きが曖昧なまま仕事が増え、「気づいたら社員と変わらない業務量」という声も少なくありません。
派遣と社員の役割の違いを整理しておく
まず大前提として、派遣社員は「派遣元(派遣会社)」と雇用契約を結び、「派遣先企業」で働きます。つまり、雇用主は派遣先ではなく派遣元です。
一方、正社員は派遣先企業との直接雇用。組織の責任や人事権、経営判断にも関与する立場にあります。
派遣社員の目的は「一時的な人員補充」であり、社員の代替や管理職的な立場になることは想定されていません。にもかかわらず、現場では次のような構造が問題を引き起こしています。
- 人手不足によって社員の仕事が派遣に回ってくる
- 派遣期間が長くなり、熟練を理由に責任が拡大する
- 「頼みやすい人」に業務が集中する
- 派遣契約書の業務内容が具体的でない
結果として、「派遣社員なのに社員と同じ仕事」「派遣社員なのに新人教育」など、責任の重い業務を任されてしまうのです。
派遣社員に“頼られすぎる”心理的背景
真面目な派遣スタッフほど、「頼まれたことは断れない」「嫌な顔をされたくない」と思ってしまいがちです。
しかし、この姿勢が続くと、「あの人ならやってくれる」と認識され、さらに仕事が集中していきます。
これが“業務拡張スパイラル”と呼ばれる悪循環です。
本来、派遣社員は契約上決められた範囲の業務を遂行すれば十分。責任感を持つことは大切ですが、過剰な業務を抱え込むのはあなたの義務ではありません。
派遣なのに仕事量がおかしいと感じたときの正しい対応
「最近明らかに仕事量が増えた」「社員よりも負担が重い気がする」と感じたら、それは我慢すべきことではありません。
派遣労働の仕組みを理解し、適切に対処することが大切です。
契約内容と実際の業務を照らし合わせる
まず行うべきは、契約書の確認です。
派遣契約書には、担当業務・勤務時間・就業場所などが明記されています。契約に書かれていない業務を継続的に行っているなら、それは「契約外労働」です。
たとえば、次のような業務は注意が必要です。
- 社員の評価や採用に関わる仕事
- 契約書・請求書など法的責任を伴う文書作成
- 新人教育や部下の管理
- 部署全体の進捗管理・承認権を持つ業務
これらは本来、派遣社員が担う範囲を超えています。
派遣元(自分の所属会社)へ必ず相談する
派遣社員の相談窓口は、派遣先ではなく派遣元です。
「契約外の業務をさせられている」「仕事量が異常に多い」と感じたら、担当営業やコーディネーターに早めに相談しましょう。
派遣元には、あなたの労働環境を守る義務があります。
相談の際は、次の3点を整理して伝えるとスムーズです。
- どの業務が契約外なのか(できれば証拠付きで)
- いつからどのような経緯で増えたのか
- 体調や業務にどんな支障が出ているか
これらを具体的に伝えることで、派遣元は派遣先に対し正式に改善を要請できます。
曖昧な訴え方ではなく、事実ベースで報告することが大切です。
直接伝える場合は「確認ベース」で冷静に
現場で派遣先の上司に直接話す場合は、感情的に「やりません」と突っぱねるのではなく、冷静なトーンで伝えるのがポイントです。
例として次のような言い方が有効です。
- 「こちらの業務は契約範囲に含まれているか確認させてください」
- 「派遣元と共有のうえで対応を検討してもよいですか」
こうした言い方なら、相手を責める印象を与えず、線引きを明確にできます。
“断る”のではなく“確認する”という姿勢をとるのがコツです。
派遣社員に社員並みの仕事をさせる職場の問題点
「派遣なのに社員並みの仕事をさせられている」という状況は、派遣本人だけでなく企業側にも大きなリスクを伴います。
派遣法上の違法リスク
派遣社員に責任の重い業務や新人教育などを任せると、「労働者派遣法」の定めに反する可能性があります。
派遣法では、派遣社員に「指揮命令権」を伴う業務を行わせることを禁止しています。
つまり、部下の評価・教育・業務指示などは、派遣社員が行ってはいけないのです。
この規定に違反すると、派遣先企業が「違法派遣」とみなされ、行政指導や契約停止などの処分を受ける可能性もあります。
派遣元もそのリスクを避けるために、派遣先との調整を行う責任を持っています。
「派遣なのに新人教育」を任される職場の危険性
「新人の教育をお願い」と言われた経験はありませんか?
一見すると“頼られている証拠”のように思えますが、これは派遣として非常に危険な状況です。
新人教育には、マニュアルの作成や進捗管理、業務評価といった“指揮命令”の要素が含まれます。
つまり、派遣社員の立場を超えた業務です。
教育の補助や研修資料の作成までなら問題ありませんが、直接指導を任されるのは契約外の可能性が高いです。
その場合は、派遣元に「教育補助の範囲を超えている可能性がある」と報告しましょう。
責任を押しつける職場はチームの生産性を下げる
派遣社員に責任を押しつける職場では、社員の責任感が薄れ、チーム全体の士気が低下します。
結果として「派遣任せの文化」が根付き、離職率が上がる悪循環に陥ります。
特に管理職が「派遣だから何でもやってもらえばいい」という認識を持つと、職場全体の信頼関係が崩れます。
派遣社員に負担をかけることは、長期的には企業の生産性低下につながるのです。
派遣なのに難しい仕事を任されたときの対処法
スキルアップのために新しい仕事を任されるのは悪いことではありません。
しかし、それが契約外の範囲だったり、責任が重すぎたりする場合は注意が必要です。
難しい仕事を任されたときの3つの確認ポイント
- 契約範囲に含まれるか
契約書を確認し、該当業務が記載されているかをチェックします。 - 自分のスキルで安全に遂行できるか
無理な業務は、ミスを招き責任問題に発展することがあります。 - 報酬や契約条件が見合っているか
責任や難易度が上がるなら、契約更新時に条件を見直してもらうのが妥当です。
スキルアップの機会に変える考え方
もし新しい業務が将来に活かせる内容であれば、「この業務は契約にないのですが、経験としてチャレンジしたいです」と伝える方法もあります。
その際は派遣元を通じて正式に契約変更を行いましょう。
曖昧なまま受け入れると、後で「前もやってもらった」と言われ、恒常化してしまいます。
派遣社員にやらせてはいけない業務の代表例
派遣社員には「やってはいけない仕事」が明確に存在します。法律で禁止されているもの、または契約範囲を逸脱するものです。
- 部下や後輩の教育・指導・評価
- 採用・面接など人事権を伴う業務
- 契約交渉・見積作成など会社の意思決定を代行する業務
- 社員の勤怠管理・シフト作成など管理職業務
- 財務・会計での決裁・承認権限
これらを任されると、責任の所在が不明確になり、トラブルのもとになります。
「派遣社員にやらせてはいけない業務」を理解しておくことは、自分を守る最大の武器です。
仕事を増やされて辞めたいと感じたときの判断基準
「もう限界」「辞めたい」と感じたときは、まず冷静に現状を分析してみましょう。
辞める前にできる選択肢を整理しておくと、後悔を防げます。
辞める前に確認すべき3つのステップ
- 派遣元に正式な改善要請を出す
担当者に「業務量が契約外である」と伝え、改善交渉を依頼します。 - 派遣先との信頼関係を見直す
理解のある上司がいれば、改善の余地はあります。 - 別の派遣先・契約形態を検討する
登録型・無期雇用型など、自分に合う働き方を模索しましょう。
もし相談しても改善されない場合は、退職を選ぶのも正しい判断です。
「辞める=逃げる」ではなく、「自分を守るための決断」と考えて構いません。
無理な仕事を断るための伝え方と実践フレーズ
断り方一つで印象は大きく変わります。角を立てず、かつ明確に線を引く言葉を選ぶことが大切です。
- 「申し訳ありませんが、その業務は契約範囲を超えているため、派遣元に確認いたします」
- 「新しい業務については、派遣会社と相談のうえで進めたいです」
- 「業務内容の確認をお願いしてもよろしいでしょうか」
どれも丁寧で、相手に“拒否”ではなく“確認”の印象を与えます。
強く言わなくても、自分の立場を守ることができます。
派遣社員が自分を守るための働き方のコツ
- 契約内容を定期的に見直す
更新時に「実務と契約が一致しているか」を必ず確認しましょう。 - 派遣元と密に連絡を取る
月1回は状況を共有し、トラブルの芽を早期に摘むことが大切です。 - 記録を残す習慣を持つ
指示メールやチャット履歴を保存しておくと、後の証拠になります。 - キャリア視点で“線を引く”意識を持つ
どこまでが“経験の積み重ね”で、どこからが“搾取”かを見極めましょう。
まとめ|派遣の責任範囲を守ることは、自分と企業を守ること
派遣なのに責任が重すぎると感じる背景には、現場の人手不足や契約の曖昧さがあります。
しかし、派遣社員が担うべき範囲は法律で定められており、それを超える業務を続ける必要はありません。
無理な業務を引き受けて心身をすり減らすより、契約を確認し、派遣元と連携して解決することが最も現実的です。
あなたの責任は「契約どおりに仕事をすること」であり、それ以上ではありません。
正しい線引きを知り、必要なときは“断る勇気”を持つこと。
それこそが、派遣という働き方で長く健やかにキャリアを築くための第一歩ですよ。