Webサイトでもリアル店舗でも「回遊率」という言葉が使われるようになりましたが、その意味を正しく理解し、業務に活かせているケースはまだ多くありません。この記事では、回遊率の定義、読み方、業種別の平均、計算方法、さらにはGA4での確認方法やリアル店舗での応用例まで幅広く解説します。Webマーケティングや販売戦略の一環として、回遊率の見直しと改善は欠かせない視点です。初心者の方でも理解できるよう、実務に役立つ視点でお届けします。
回遊率の意味と読み方を明確に理解する
回遊率(かいゆうりつ)とは、ユーザーや来店者がどれだけ多くのページや売場を回ってくれたかを表す指標です。Webサイトの場合は、訪問者が1回のセッション内で何ページ閲覧したか、店舗の場合は、どれだけの売場を回ったかといった回遊の広さを測ることができます。
英語では”circulation rate”または”site navigation rate”とも訳されることがありますが、国内マーケティングでは「回遊率」として定着しています。読み方は「かいゆうりつ」で、ビジネス現場では日本語のままで問題なく使用されています。
たとえば、ユーザーがECサイトに訪問して、トップページだけを見て離脱した場合は、回遊率は非常に低い状態です。逆に、複数の商品ページを行き来したり、カートに追加して他のカテゴリも見ているような行動があれば、それは回遊率が高いということです。このように、ユーザーのページ遷移や関心の深さを可視化できる指標として、回遊率は活用されています。
Webサイトにおける回遊率とは?
Webにおける回遊率とは、訪問者がサイト内でどれだけ多くのページを閲覧したか、またそのページ遷移が自然に設計されているかを評価するものです。単にページビューが多いか少ないかではなく、「ユーザーが意図的に、あるいは導線に沿ってどれだけのページを経由しているか」を重視します。
たとえば、サービス紹介ページから料金プラン、導入事例、お問い合わせページへと移動していく動線が組まれていれば、自然と回遊率が高まります。これに対して、1ページ目で情報が完結しすぎていたり、次の行動が不明瞭であれば、ユーザーはそこで離脱し、回遊率は低下します。
GA4で回遊率を確認するには?
Googleアナリティクス4(GA4)では、旧来のユニバーサルアナリティクスと違い、「ページ/セッション」という項目が初期状態では表示されていません。しかし、カスタム探索やレポート編集で、イベント数やページビュー数をセッション単位で分割表示することができます。
たとえば、探索レポートで「セッションごとのページビュー数」を表示すれば、ユーザーが1回の訪問で何ページ見たかを分析でき、これを平均すれば実質的な回遊率となります。また、イベントベースの構造により、「どのページに遷移した際に離脱が増えるか」といった回遊阻害要因の特定も可能になります。
GA4では単なる量的指標から、質的行動(エンゲージメント)への分析が進んでいるため、回遊率とあわせて「平均エンゲージメント時間」なども確認することで、さらに深い改善ヒントが得られるでしょう。
回遊率の計算方法と目安
Webサイトにおける回遊率は、基本的には「平均ページビュー数(PV)」として表現されます。具体的な計算式は以下の通りです。
回遊率(ページ/セッション)= 総ページビュー ÷ 総セッション数
たとえば、サイトの月間PVが30,000、セッション数が10,000であれば、回遊率は3.0(1人あたり3ページ閲覧)となります。
この数値の目安は業種やサイトの構造によって異なります。
- ニュース・ブログサイト:1.2~2.0程度(情報が1記事完結の傾向)
- ECサイト:3.0~5.0(複数商品やカテゴリを回る構造)
- 企業のサービスサイト:2.0~3.5(トップ→詳細→お問い合わせの導線)
- オウンドメディア型:2.5~4.0(関連記事へ誘導しやすい設計)
極端に回遊率が低い(1.0前後)場合、ページ間のリンク設計が不足していたり、CTAが明確でなかったり、ページ単位での読了後の“次の提案”が弱いケースが多く見られます。
反対に、数値が高すぎる(7.0以上など)場合には、目的の情報にたどり着けず“迷っている”可能性も考慮し、直帰率や平均滞在時間とのバランスで読み解く必要があります。
店舗における回遊率とは?売場の設計と顧客行動
実店舗における回遊率とは、来店客がどれだけ多くの売場エリアを移動し、店内を「回遊」しているかを測るものです。これは顧客導線の可視化であり、買い回り率や購買率と並んで店舗分析でよく使われる指標です。
たとえば、スーパーマーケットでお客様が野菜コーナーだけで買い物を終えるより、鮮魚・精肉・惣菜まで立ち寄る方が、購買点数・客単価は高くなる傾向があります。つまり、回遊率が高い店舗ほど、売上も上がりやすい傾向があるのです。
計算方法の例は以下の通りです:
回遊率=(訪問顧客が巡回したエリア数 ÷ 訪問可能な売場エリア数)×100
センサーによる動線分析や、店舗アプリのGPS、RFIDデータなどを活用すれば、より正確に回遊行動をトラッキングできます。
小売や百貨店では、「主通路→目的売場→偶然の出会い→衝動買い」という流れが重要視されており、この“偶発的な立ち寄り”の機会を増やすことで、自然な回遊率の向上が期待できます。
サイトと店舗で回遊率を高める施策
回遊率を改善するには、「次の行動を自然に誘導する設計」が鍵になります。ここではWebと店舗、双方で実践できる具体的な改善施策を紹介します。
Webサイトの場合
- 内部リンク強化:記事末や本文内に関連ページへのリンクを挿入する
- CTAボタンの最適配置:「次に読む」「お問い合わせ」「資料請求」など行動を導く
- パンくずリストやカテゴリ表示:現在地と次の導線をわかりやすく見せる
- 滞在価値のあるコンテンツ配置:画像・図解・FAQ・導入事例など多層的な情報で回遊を促す
店舗の場合
- 動線設計の工夫:一方通行の売場配置、端から端まで歩かせる構造
- POP・サインの活用:「この奥に○○特集あり」「おすすめコーナーはこちら」
- 香り・照明・音響の工夫:感覚を刺激して奥まで行きたくなる空間演出
- エンド陳列の活用:コーナーの入口に目を引く商品を置き、次の売場へ誘導
両者に共通するのは、「迷わせず、しかし自然に導く」設計です。導線の明確化と、新しい気づきを与える仕組みが、回遊行動を生む大きなきっかけになります。
回遊率を業務のKPIとしてどう活用するか?
マーケティング戦略や業務改善の中で、回遊率をKPIとして活用するには、単体の数値を見るだけでなく、他の成果指標との相関を追う必要があります。
たとえば:
- 回遊率 × コンバージョン率(資料請求・購入)
- 回遊率 × 平均セッション時間(Web)
- 回遊率 × 顧客単価・買い上げ点数(店舗)
これらを追うことで、「回遊が売上につながっているか」「回遊だけが高くて成果に結びついていないのではないか」といった視点が得られます。
また、時間軸での推移も重要です。サイトリニューアル後、回遊率がどう変化したか。セール期間と通常時で違いがあるか。季節ごとの導線設計は成果に寄与しているか。そうした検証を繰り返すことが、真に意味のあるKPI活用となります。
まとめ:回遊率の改善はUXと売上の両立を叶える鍵になる
回遊率は、単に“ページ数”や“売場数”を見るだけの指標ではなく、ユーザーや顧客が「自ら動きたくなる仕掛け」がうまく機能しているかを測るものです。Webサイトでは情報設計と内部リンク、店舗では動線や空間づくりがそのカギを握ります。
GA4のデータや、店舗内のセンサーデータなどを活用しながら、現状を可視化し、次の行動へ自然に導く仕組みを組み込んでいくことが重要です。回遊率を高めることは、結果としてサイト滞在時間やコンバージョン率、顧客単価の向上につながる“成果を底上げする設計”そのものです。
まずは自社の現状を把握し、小さな導線改善から取り組んでいくことが、業務効率と収益性を両立させる第一歩です。