かつてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は「働き方改革の救世主」と呼ばれました。
しかし2025年現在、「RPAはオワコン」「将来性がない」「ただのマクロでは?」といった声が聞かれるようになっています。
本当にRPAの時代は終わってしまったのでしょうか?それとも形を変えて進化しているのでしょうか?
この記事では、RPAブームが終焉した理由、RPAオワコン説の真相、そして次に来る自動化の潮流をわかりやすく解説します。
読後には「RPA=古い技術」という印象が、少し変わるかもしれませんよ。
RPAとは何かを正しく理解する
まずは改めて、RPAとは何かを整理しましょう。
RPAとは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略で、パソコン上で人間が行う定型的な作業を自動化するソフトウェアのことです。
たとえば、
- 毎月の請求書データをExcelにまとめる
- メールの添付ファイルをフォルダに保存する
- システムから売上データをダウンロードして報告書を作成する
といった“単調だけど時間のかかる作業”を、RPAロボットが代わりに処理してくれます。
代表的なツールには、
UiPath、Automation Anywhere、Blue Prism、WinActorなどがあり、特に日本ではWinActorが大企業を中心に広く導入されました。
RPAの魅力は「専門知識がなくても操作できる」「既存システムを変えずに導入できる」という点にありました。
これが2017〜2020年にかけてのRPAブームを生み出した最大の要因です。
RPAブームが終焉したと言われる理由
それでは、なぜこの数年でRPAブームが「終わった」と言われるようになったのでしょうか。
単純に「古くなった技術」ではなく、いくつもの構造的な問題が絡んでいます。
1. 現場任せの導入で運用が定着しなかった
多くの企業が「業務効率化」を目標にRPAを導入しましたが、実際には“現場の一部部署だけ”で使われて終わったケースが少なくありません。
RPAは導入そのものよりも「運用設計」が難しいのです。
業務の変更やシステム更新があると、ロボットが動かなくなってしまうことも多く、結果として「使えなくなったまま放置」される事例が増えました。
2. 適用範囲が狭く、思ったほどの成果が出なかった
RPAはルールが明確な定型業務に強い反面、例外処理や判断が必要な業務には弱いという特性があります。
つまり、RPAが得意とする領域が限られていたのです。
導入時に「人手の半分を削減できる」と期待した企業ほど、実際の成果との差にギャップを感じました。
3. 属人的な運用になりやすかった
RPAを設計・運用する人が社内で限られてしまうと、その担当者が異動・退職した途端にメンテナンスが止まってしまいます。
結果的に「誰もわからないロボット」が増え、管理コストが膨れ上がるという“自動化の逆効果”を招くこともありました。
4. ChatGPTなど生成AIへの関心の移行
2023年以降、ChatGPTをはじめとする生成AIが登場し、企業の注目は一気にAI分野へ移りました。
「RPAよりAIで全部できるのでは?」という風潮が広まり、RPAブームは一時的に影を潜めたのです。
しかし、AIとRPAは競合関係ではありません。むしろ補完関係にあり、次の章でその関係性を詳しく見ていきます。
RPAオワコン説は本当か?ブーム終焉の裏にある誤解
「RPAオワコン」「RPAはもう終わり」といった言葉を耳にすることがありますが、その多くは誤解に基づいています。
ここでは、“RPAが本当にオワコン化した”と思われる原因と、実際の真相を分析します。
RPAは「ただのマクロ」と混同されがち
よくある誤解のひとつに、「RPAなんてExcelマクロと同じ」という意見があります。
確かに、RPAもマクロも自動化ツールという点では共通しています。
しかし、RPAは複数のアプリケーションをまたいで操作できる点が大きく異なります。
たとえば、マクロではExcel内の操作しかできませんが、RPAなら「メールを開いて添付ファイルを保存し、それを別システムにアップロードする」といった一連の作業が可能です。
つまり、マクロよりも業務全体の流れを自動化できるのがRPAの強みです。
「将来性がない」と言われるのは成熟の証
「RPA 将来性 ない」と検索する人も多いですが、それは市場が“成熟期”に入った証拠です。
新技術としてのブームが落ち着いた今、RPAは当たり前の存在になりつつあります。
たとえば、Excelやメールのように「特別な話題にはならないけど日常業務に欠かせない」存在として定着しているのです。
つまり、“オワコン”ではなく、“標準化した”というのが正しい見方です。
日本だけ“ブーム頼み”の導入だった
「RPA 日本だけ」遅れているとも言われます。
海外ではRPAをAIやBPM(業務プロセス管理)と統合し、業務全体のデジタル化を進めています。
一方、日本企業は“ツール導入が目的化”してしまい、経営戦略としての活用が遅れました。
その結果、短期的なブームが去ると同時に“熱が冷めた”のです。
しかし今後は、生成AIと組み合わせた新しい自動化が再び注目されています。
RPAがオワコン化する運命にあると言われた理由
RPAブームの終焉は、ある意味で予測できた流れでした。
なぜなら、ブーム当初から構造的な課題を抱えていたからです。
1. ツール偏重で「業務設計」が軽視された
多くの企業がRPAを導入したものの、そもそも「何を自動化すべきか」の設計が曖昧なままスタートしてしまいました。
結果として、無理に自動化した業務が複雑化し、かえってメンテナンス負担が増大しました。
RPAは“道具”であり、導入する前に「業務をどう再設計するか」が不可欠です。
2. ベンダー依存の高まりとコスト増
一部の企業では、外部ベンダーにRPA構築をすべて任せてしまい、社内にノウハウが残らないまま契約更新を繰り返すケースが発生しました。
結果的にコストだけが増え、RPAの価値を感じにくくなったのです。
3. 成功事例の多くが“大企業中心”だった
RPAブームの中で注目された成功事例は、主に大企業のものでした。
リソースが限られる中小企業では、導入効果が限定的だったことも、「RPAは使えない」という印象を強めた要因のひとつです。
RPAエンジニアはやめとけ?その背景と真実
ネット上では「RPAエンジニアはやめとけ」といった声も見られます。
この言葉の背景には、RPAエンジニアが“単純作業者”として見られがちだった時期の事情があります。
しかし、現在のRPAエンジニアには大きな進化のチャンスがあります。
RPAエンジニアの役割は「業務設計者」へ変化している
RPAツールが成熟した今、単にロボットを作るだけでは価値が出ません。
必要なのは、どの業務を自動化すべきかを見極め、業務全体を再設計できるスキルです。
つまり、RPAエンジニアは自動化コンサルタント的な立場に進化していく必要があるのです。
将来性がないどころか、AI時代の“橋渡し役”
生成AIが急速に普及する中で、AIの出力を業務システムにつなげる「RPA連携」の重要性が増しています。
ChatGPTで作成したレポートをRPAが自動で共有したり、AIが判断した内容をRPAが実行したりと、AI×RPAの連携は業務効率化の中心になりつつあります。
この仕組みを設計できる人材は極めて貴重です。
RPAは終わったのか?次世代自動化の行方
RPAブームが落ち着いた今、業界は新しいフェーズに入っています。
その中心にあるのが「ハイパーオートメーション」と呼ばれる考え方です。
ハイパーオートメーションとは何か
ハイパーオートメーションとは、RPAを中核にAI・機械学習・業務プロセス管理など複数の技術を組み合わせ、業務全体を自動化する取り組みのことです。
RPAが「手を動かす自動化」なら、ハイパーオートメーションは「頭脳と判断を含めた自動化」です。
この領域では、AIによる文章理解や画像認識が組み合わされ、より高度な業務処理が可能になっています。
AI時代でもRPAの存在価値は残る
AIがどれだけ進化しても、実際の業務システムを操作し、結果をデータとして残す役割はRPAが担います。
たとえば、AIが顧客対応内容を要約し、その要約をRPAがCRMに登録するなど、AIとRPAの協働によって初めて業務自動化は完成します。
つまり、RPAは「AIを現場に実装するための手足」として今後も不可欠です。
まとめ:RPAの終焉は“変化の始まり”にすぎない
RPAブームの終焉は、確かに一つの時代の区切りです。
しかし、それは「終わり」ではなく「進化の始まり」でもあります。
ブーム期の“ツール導入ありき”の時代が終わり、
これからは“AIとRPAを組み合わせて業務を設計する時代”へ移行しています。
RPAは「オワコン」ではなく、「土台」です。
そして、その土台の上でAIや人間の知識が融合することで、企業はこれまでにないスピードで変化に対応できるようになります。
RPAを理解し、再定義できる人こそが、次の自動化時代の主役になるでしょう。




























