花火大会の季節になると、夜空に咲く一瞬の芸術に心を奪われる人は多いでしょう。その裏側で活躍しているのが「花火師」という仕事。伝統を継承しながらも、現代のイベント業界で高い技術と安全管理が求められる職業です。では、花火師として“稼ぐ”にはどうすればよいのでしょうか？この記事では、年収のリアルな実態から、集客を成功させるためのビジネス戦略、そして求人や資格、仕事内容の現実までを詳しく解説します。
花火師の収入はどこから来るのか？給料の仕組みと年収の実態
まず疑問に上がるのは「花火師の給料はどこから出るのか？」という点です。花火師の仕事は会社員のように月給制で安定しているものではなく、案件ごとの請負がベースになることが多く、収入の仕組みも少し特殊です。
主な収益源は、地方自治体や企業、観光協会などが主催するイベントや花火大会の発注です。花火大会一回あたりの契約金には幅があり、小規模な地域イベントで数十万円、大規模な都市型イベントでは数百万円〜数千万円になることもあります。この中から製造費、人件費、輸送費、設営費、保険料などが差し引かれ、最終的に職人たちへと分配されます。
さらに副業的に稼ぐ花火師もいます。たとえば、個人向けに少量の花火を製造・販売したり、花火技術を使った講習会、教育イベント、安全管理セミナーなどで報酬を得るケースです。こうした多角化が進むと、年収の変動リスクを抑えることが可能になります。
そのため、花火師の年収は年間でどれだけのイベントに携われるかに大きく左右され、1年の中でも繁忙期と閑散期の差が極端です。夏の繁忙期に複数案件を抱えられるようになると、月収ベースで50〜100万円に達することもありますが、通年で見ると300万〜600万円ほどが一般的なラインとされています。
最高年収はいくら？稼げる花火師になるための条件
一部には「年収1000万円を超える花火師もいる」といった話もありますが、それはあくまで全国的に知名度のある企業や職人に限られます。たとえば大規模イベントを独占的に請け負っている業者の代表や、テレビや映画制作などに協力しているトップ花火師は、特別な例と考えるべきでしょう。
高収入を実現するためには、単に技術力があるだけでは不十分です。以下のような要素が重なって、初めて「稼げる花火師」への道が開けます。
・自社製造と直販が可能な体制が整っていること ・自治体や民間企業からのリピート受注が安定していること ・音楽連動・レーザー融合などの高付加価値演出ができる技術力 ・法令遵守、安全基準対応が徹底されている信頼性 ・SNSやメディアでの露出によりブランディングされていること
たとえば、ある地方の老舗花火会社では、通常の夏イベントに加え、冬のイルミネーション連動花火や、インバウンド向け観光プランとの連携によって年間契約額を拡大させています。このように、年間通して受注を得られる仕組みがあれば、年収1000万円に届く現実的なルートとなるのです。
花火師はきつい？現場で求められる体力と覚悟
花火師の仕事に対しては「過酷そう」「危険そう」というイメージがつきまといます。それはある意味正しく、花火師の労働環境は決して甘くありません。
設営・撤去作業は屋外で行われ、真夏の直射日光下で汗だくになりながら重い資材を運ぶのが日常です。夜間にかけての打ち上げ準備もあり、生活リズムは不規則になりがちです。特に繁忙期には連日イベントが重なり、睡眠時間の確保もままならないことがあります。
また、火薬を取り扱う関係で、常に爆発や誤作動のリスクと隣り合わせ。安全装置やチェックリストを遵守していても、ヒューマンエラーをゼロにするのは困難です。実際に過去には、事故により命を落とした花火師もいます。だからこそ、細心の注意力と「絶対に妥協しない姿勢」が問われるのです。
こうした厳しい環境に耐えるには、体力だけでなく「自分の仕事が人の命に直結している」という覚悟と責任感が必要です。新人時代には先輩から厳しく指導されることもありますが、それは安全への妥協を許さない“職人の文化”の裏返しでもあります。
花火師になるには？求人と資格の現実と課題
花火師への道は、華やかな見た目に反して、入り口が狭く不透明なのが現実です。求人票を見つけるのは難しく、いわゆる“ハローワーク”や求人媒体ではほとんど出回っていません。
その理由のひとつに、花火会社の多くが家族経営や小規模企業であることが挙げられます。新規採用よりも、既存の縁故や紹介による“弟子入り”文化が色濃く残っているため、外部からのアクセスは難易度が高いのです。
しかし、完全にチャンスがないわけではありません。年に数回、全国の大手花火会社が若手人材の公募を行うことがあり、そこでは見習いとして現場経験を積むことができます。また、打ち上げを補助する「補助作業員」として季節限定の求人が出る場合もあります。
また、花火師として独立する・責任者になるには、国家資格「煙火消費保安手帳（旧・煙火保安責任者）」の取得が必要です。火薬類取扱保安責任者試験に合格し、講習を受けることで取得可能となります。この資格を持っていないと、打ち上げ現場での責任者として認定されず、業務の幅も限られてしまいます。
資格取得の難易度は中程度とされ、理科的な知識や法令理解が求められるため、一定の準備は必要です。近年では通信講座やオンラインセミナーを活用して勉強する人も増えており、個人でのキャリアアップも現実味を帯びてきました。
イベント集客と連動したビジネスモデルの構築が鍵
花火師としての収入を安定させ、かつ高めていくためには「自分たちの花火がイベント全体にどれだけ価値を与えられるか」を考える必要があります。これは“発注を待つ立場”から“提案して売る立場”への転換でもあります。
たとえば、ある花火会社は自治体に対して「防災訓練×花火」や「ご当地キャラ誕生日×花火演出」といった地域性を活かしたコンセプト企画を提案。これがメディアにも取り上げられ、数万人規模の集客につながり、結果的に来年以降の契約金アップに結びつきました。
また、飲食・物販との連動、ライブやダンスとの融合、プロジェクションマッピングとの同時演出など、他ジャンルとの掛け合わせによって、花火の単価を上げる方法もあります。ここに“稼げる花火師”としての知恵が問われます。
さらに、YouTubeやInstagramなどSNSを活用して、自社の打ち上げ実績や裏側の工程を発信することで、企業や主催者への信頼構築も可能です。特に「観客が喜ぶ様子」や「安全に設営・撤去している映像」は、プロモーションとして大きな武器になります。
デジタル化とともに変わる花火師の働き方
技術革新の波は花火業界にも確実に押し寄せています。特に演出面では、コンピュータ制御による「デジタル花火」の導入が進み、音楽や映像と連動したプログラミング演出が標準化されつつあります。
この流れに適応できるかどうかで、収入の差も大きくなっていきます。たとえば、音響技術や照明デザイン、イベントプロデュースの知識を持つ花火師は、ただの“打ち上げ担当”ではなく、“総合演出家”として重宝されます。
また、VR空間やメタバース内での花火演出も登場し始めており、現実世界だけにとどまらない“新たな演出市場”が広がっています。こうしたデジタルスキルと伝統技術の両方を持つ人材こそが、次世代の稼げる花火師としてリードしていく存在となるでしょう。
まとめ：技術とビジネス視点の両立で“稼げる花火師”になる
花火師という職業は、職人としての技術と誇りに加え、現代的なビジネス視点が求められる高度な仕事です。給料の出所や月収・年収の現実はシビアな面もありますが、集客や演出に価値を持たせることで報酬の上限を引き上げることも可能です。
求人の少なさや弟子入り文化、体力的なきつさや安全面の厳しさなど、乗り越えるべきハードルは多いですが、それ以上に「人の記憶に残る一瞬を創り出す」という大きなやりがいがあります。
これからの花火師に必要なのは、爆薬の知識だけでなく、“人を惹きつける仕掛けづくり”の視点です。SNS、動画、イベント構成、営業戦略、そしてなにより情熱——そうしたすべてが融合したとき、花火師という仕事は「年収が高い夢のある職業」へと近づいていくでしょう。
