振り返りのフレームワークとして知られる「KPT」。多くの企業やチームで導入されていますが、「形骸化している」「意味がない」と感じる声も少なくありません。しかし、正しく運用すれば、KPTは業務改善やチーム力強化に大きく貢献する手法です。この記事では、KPTの基本から、よくある誤解や限界、他のフレームワークとの比較まで、ビジネスの現場で役立つ視点で詳しく解説します。
KPTとは何か?フレームワークの基本と活用目的
Keep・Problem・Tryの3要素で構成されるKPT法
KPTは「Keep(続けること)」「Problem(問題点)」「Try(次に試すこと)」の頭文字を取った、シンプルな振り返り手法です。定例会議やプロジェクト終了時のふりかえりで活用され、個人にもチームにも応用できます。
なぜKPTがビジネスで使われるのか?
KPTのメリットは「短時間で実施できる」「チームで課題を共有できる」「ポジティブな行動を継続できる」点にあります。タスク管理や業務改善、目標設定の場面で重宝されてきました。
KPTは意味ない?言われる理由とその背景
表面的な振り返りで終わってしまう
「とりあえずKPTやっておこう」と義務的に進めることで、本質的な問題に踏み込まず、建前だけの内容になってしまうケースがあります。
KPTのKeepが思いつかない、Tryが曖昧になる
参加者が「何が良かったのか」「次に何をするべきか」を自覚できていない場合、KPTの内容が抽象的になります。これが「意味ない」と言われる主な原因です。
継続的なフォローがないと定着しない
KPTで出たアイデアを放置し、次に活かさなければ意味がありません。振り返りを運用に結びつける設計がない組織では、KPTは形骸化します。
実際のKPT具体例|現場でどう使われているか
営業チームの月次振り返りの例
- Keep:顧客ヒアリングの初動が早かった
- Problem:提案資料の完成が遅れた
- Try:資料テンプレートを改善し、初回面談で提示できる体制をつくる
マーケティング施策のKPT活用例
- Keep:SNS運用が予定通り継続できた
- Problem:配信時間がバラバラで成果が安定しない
- Try:配信時間帯を分析し、ゴールデンタイムに固定する
KPT法の欠点とその乗り越え方
具体性の欠如が最大の弱点
「問題点」や「次にやること」が漠然としていると、実行に移されず終わります。改善策としては、TryにKPIや期限を明記するなど、行動ベースに落とし込む工夫が必要です。
チームの成熟度によって成果が変わる
KPTは参加者の意識と経験値に大きく左右されます。新人が多いチームでは、最初にファシリテーターを立てて丁寧にガイドすることが効果的です。
KPTテンプレートと進め方の工夫
テンプレートを用意して迷いを減らす
あらかじめKPT記入シートやスライドを用意しておくことで、記入のハードルを下げられます。GoogleスプレッドシートやNotionなど、ツールとの連携もおすすめです。
会議ファシリテーションのポイント
KPTを有効にするには、K・P・Tを均等に掘り下げる進行が重要です。Keepで褒め合う文化、Problemで指摘が出やすい雰囲気、Tryで現実的なアイデアが出るよう誘導します。
KPT以外の振り返り手法との比較
YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)との違い
YWTはKPTよりも内省に近く、個人の学びに適しています。一方で、KPTはチーム全体の共有や改善サイクルに向いています。
FMEAやPDCAなど他フレームとの使い分け
KPTはライトな振り返りに最適ですが、業務全体のプロセス改善にはPDCAやFMEAなどの工程管理系フレームと組み合わせると効果的です。
KPT分析を成果に変える運用方法
Tryをアクションに落とし込む
Tryに出てきた内容を週次タスクに反映する、KPTで出た内容を定例MTGで再確認するなど、振り返りの結果を具体的な動きに接続させることが重要です。
データと結びつけてKPTをアップデート
Tryが成功したかどうかを数値で追うようにし、分析的な視点を取り入れれば、KPTがより再現性の高い改善手法になります。
結論|KPTは「意味ない」ではなく「使い方次第」で成果に直結する
KPTは単なる記入式のワークではなく、チームの課題発見と改善行動を促すための優れたフレームワークです。「意味ない」と感じる原因の多くは、活用設計や実行不足にあります。正しく設計し、行動に落とし込めば、KPTは業務効率を高め、ビジネス成果にも直結するツールとなるでしょう。