ABC分析をエクセルで効率化する方法|初心者でもできる売上分析とグラフ作成術

ABC分析をエクセルで効率化する方法|初心者でもできる売上分析とグラフ作成術

商品数が多い業種にとって、売上管理や在庫分析は避けて通れない課題です。そんなときに役立つのが「ABC分析」。Excel(エクセル)を使えば、関数やテンプレート、グラフを活用して視覚的にもわかりやすく売上傾向を把握できます。本記事では、初心者でも迷わず実践できるエクセルでのABC分析のやり方を丁寧に解説。飲食店などの小規模事業者でも使えるテンプレートの工夫や、IF関数やVLOOKUPを使った応用方法まで、業務効率を高めるヒントを紹介します。

目次

ABC分析とは何か?ビジネスにおける意味と目的

ABC分析とは、商品やサービス、顧客などを売上貢献度や利益率に応じて3つのランク(A、B、C)に分類する分析手法です。Aは売上や利益への貢献が最も大きいグループ、Bは中程度、Cは貢献度が低いグループを意味します。これにより、重要度の高い項目に経営資源を集中させることができ、効率的な経営判断をサポートします。

たとえば、在庫管理の場面では、Aランクの商品は常に在庫を切らさずに仕入れ、Cランクは在庫削減や廃番を検討するといった戦略的対応が可能になります。また、売上分析に応用すれば、売れ筋商品を把握し、販促活動や広告予算を重点的に投下すべき対象が明確になります。ABC分析は、限られたリソースで最大の成果を出すための「見える化」ツールとして、非常に有効です。

ABC分析をエクセルで行う基本のやり方

エクセルを使ったABC分析は、関数や並べ替え機能を活用することで初心者でも簡単に実施できます。基本的な手順は以下のとおりです。

まず、分析対象となるデータ(商品名、売上数量、単価、売上高など)を入力します。次に、売上高をもとに構成比(全体売上に対する各商品の割合)を求め、その累積構成比を計算します。売上高を降順に並べ替え、累積構成比が上位70%以内をA、70〜90%をB、90%超をCとするのが一般的な分類基準です。

ここで便利なのがIF関数です。以下のような式を使えば、ランク付けを自動化できます:

=IF(累積構成比<=0.7,"A",IF(累積構成比<=0.9,"B","C"))

このように関数を使うことで、大量の商品でも一括で効率的にランク付けができ、人的ミスも防げます。関数の設定をテンプレート化しておくと、毎月の分析が非常に楽になります。

テンプレートを活用したABC分析の効率化

毎回ゼロから表を作成するのは手間がかかるため、ABC分析用のテンプレートを活用することで業務効率を大幅に高めることができます。テンプレートには、売上データの入力欄、構成比計算、累積構成比、IF関数による自動ランク付け、グラフ作成用のデータ範囲があらかじめ整備されています。

さらに、条件付き書式を設定しておけば、ランクごとに自動で色分けされ、視覚的にも一目で重要商品がわかるようになります。テンプレートは社内共有も容易なため、複数の担当者が同じフォーマットで分析を行える点もメリットです。

無料でダウンロードできるテンプレートも数多く存在しますが、業種や業態に合わせてカスタマイズすることで、より実務に即した分析が可能になります。たとえば、飲食店であれば「売上数」ではなく「食材ロス率」や「仕入原価率」などを加味する項目を増やすと、より実用的なテンプレートに仕上がります。

飲食店でのABC分析の具体的な活用シーン

飲食店におけるABC分析の主な活用シーンは、メニューの見直し、販促施策の優先順位づけ、食材ロス管理など多岐にわたります。

たとえば、月次売上データから各メニューの売上高を算出し、ABC分析を実施します。すると、売上の大半をAランクの数品目が占めているケースが多くあります。こうした人気商品に対しては、期間限定でトッピングを付けた派生メニューの提案や、SNSでのプロモーション強化が有効です。

一方、Cランクに分類された商品は「調理に時間がかかる」「仕込み量が多いのに売れない」といった問題を抱えていることが少なくありません。これらの商品はメニューから外す、もしくはコストダウン策を検討する対象になります。さらに、地域や時間帯ごとにABC分析を実施すれば、ランチタイムとディナータイムでの人気メニューの違いや、曜日別の傾向も見えてきます。

このように、飲食店におけるABC分析は、単なる売上ランキングにとどまらず、現場改善と収益向上に直結するツールとして活用できます。

グラフ化とパレート図で視覚的に理解する方法

数値だけでは把握しにくい売上傾向も、グラフ化することで一気に可視化され、経営判断やチーム共有に役立ちます。ABC分析では「パレート図(パレートグラフ)」の活用が非常に効果的です。

パレート図は、商品ごとの売上高を降順に並べた棒グラフと、その累積構成比を示す折れ線グラフを組み合わせたもので、売上の集中度を直感的に把握できます。エクセルで作成するには、まず売上データを降順に並べた棒グラフを作成し、次に累積構成比の系列を追加して「第2軸」で折れ線グラフとして表示させます。

このグラフにA・B・Cのランクを色分けして表示すれば、どこまでの売上がAランクなのかが一目でわかります。パレート図は、部門会議や経営陣への報告資料でも使いやすく、視覚情報としてのインパクトが大きいためおすすめです。

IF関数やVLOOKUPを使った自動化テクニック

エクセルの関数を活用することで、ABC分析の作業を自動化・高速化することができます。特にIF関数とVLOOKUP関数は、日々の業務で非常に有用です。

IF関数は、累積構成比に基づいて自動でランクを判定する処理に使用されます。例として、

=IF(G2<=0.7,"A",IF(G2<=0.9,"B","C"))

という式を使えば、累積構成比が70%以下なら「A」、90%以下なら「B」、それ以外は「C」と自動で分類されます。これにより、ランク付けの作業が一瞬で完了します。

VLOOKUP関数は、商品コードやIDをもとに、他のシートや表から情報を参照する場合に活用されます。たとえば、別シートに保管された商品の仕入先情報や単価情報などをVLOOKUPで引っ張ってくれば、ABCランクと関連付けたさらなる分析が可能になります。

こうした関数を組み合わせたテンプレートを作成しておけば、毎月の分析もスムーズに行えるようになります。関数の理解に不安がある方でも、サンプルデータで一度試してみると、驚くほど簡単に使いこなせることが実感できるはずです。

クロスABC分析で売上と利益を同時に可視化する

ABC分析の発展形として注目されているのが「クロスABC分析」です。これは、売上貢献度と利益貢献度という2つの視点をかけ合わせ、商品をより多面的に評価する手法です。

たとえば、売上ではAランクなのに、粗利益ではCランクの商品が存在する場合、価格設定や原価構成に問題がある可能性があります。逆に、売上はCでも利益率が高いBランク商品は、戦略的なアップセル・クロスセルの対象になるかもしれません。

クロスABC分析は、エクセルの2軸マトリクスを使えば簡単に可視化できます。売上ランクを横軸、利益ランクを縦軸に設定し、各商品の位置づけをプロットすることで、どの商品の改善が必要か、どれが「利益貢献度の割に見過ごされているか」が明確になります。

このような多変量的な視点を持つことで、商品戦略はより精緻になり、在庫管理や価格政策に対しても説得力ある施策が打てるようになります。

まとめ:エクセルを活用したABC分析で売上と業務の見える化を実現しよう

ABC分析は、シンプルでありながら非常に強力な業務改善ツールです。エクセルを使えば、誰でもすぐに実践可能であり、関数やテンプレート、グラフといったツールを駆使することで、単なる集計を越えた「戦略的な分析」が可能になります。

飲食店や小売業、ECサイト運営者など、商品点数が多いビジネスにおいては、毎月のABC分析が売上最大化とコスト最適化の両立を支える軸となります。

今後、さらにデータドリブンな経営が求められる中で、ABC分析を正しく理解し、エクセルで実装できることは、すべてのビジネスパーソンにとって重要なスキルの一つです。まずは簡単なテンプレートから始めてみて、分析結果を日々の意思決定に活かしていきましょう。

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