YouTubeの「リミックス」機能は、ショート動画(YouTube Shorts)の普及とともに一気に注目を集めるようになりました。
誰でも他人の動画を一部引用して自分の作品に取り込めるこの仕組みは、拡散力という点で大きな魅力があります。
しかし、企業アカウントにとっては「ブランドの誤用」「著作権侵害」「収益の混在」といったリスクにも直結します。
本記事では、「YouTubeリミックスとは何か」から、「押してしまった時の対処法」「著作権トラブル回避」「リミックスを許可しない設定の手順」までを体系的に解説。
企業のSNS担当者や動画マーケティング担当者が“安心して活用できる”実務的な運用法を紹介します。
YouTubeリミックスとは何かを正しく理解する
YouTubeリミックスとは、他のクリエイターが投稿した動画の一部(最大15秒)を切り取って、自分のショート動画に取り込める機能のことです。
この機能は2022年以降、YouTube Shortsの急成長に伴い世界中に展開されました。
TikTokの「デュエット」や「ステッチ」に似た仕組みで、視聴者が気軽に参加できることで、コンテンツの拡散や再利用を促進しています。
リミックスで利用できる範囲と制限
リミックスはあくまで「元動画の一部を引用して再構成する」機能であり、引用できる時間は15秒以内と定められています。
長尺動画全体を再利用できるわけではなく、また、引用された動画の投稿者が「リミックスを許可しない」設定をしている場合、その動画は素材として使うことができません。
YouTubeがこの制限を設けているのは、著作権トラブルを防ぐためだけでなく、オリジナル制作者の権利を守りながら創造的な二次利用を促す目的もあるからです。
つまり、「自由な再利用」と「著作権保護」のバランスをとるための設計なのです。
YouTubeリミックスを押してしまったときの仕組みと対処法
「リミックス」を誤って押してしまったというケースもよくあります。
結論から言えば、ボタンを押しただけでは動画が公開されることはありません。
「リミックスを押す=編集画面を開く」というだけで、公開までには撮影・編集・投稿の手順を踏む必要があります。
ただし、編集画面で意図せず素材を取り込み、そのまま投稿してしまうと、元の動画投稿者に「リミックスされた」という形で通知が届く場合があります。
特に企業アカウントでは、社内担当者がうっかり誤操作して投稿してしまうと、ブランドイメージに悪影響を与える可能性があるため注意が必要です。
安全な対処法としては以下の3つです。
- 編集画面を開いてしまった場合は「×」を押して閉じる
- 投稿前に必ず「リミックス素材が含まれていないか」をチェックする
- 不要な動画が公開された場合はすぐに削除し、社内で共有して再発防止策を立てる
このように、「押しただけでは公開されない」仕組みを理解しておけば、慌てる必要はありません。
YouTubeリミックスと著作権の関係を正しく理解する
企業アカウントが最も注意すべきなのが、著作権侵害のリスクです。
リミックスは便利な反面、意図せず他者の権利を侵害してしまうケースがあります。
逆に、自社の動画が他人にリミックスされて不本意な形で使われる場合もあるため、双方の視点で理解しておくことが大切です。
リミックスで発生しうる著作権トラブルの具体例
リミックスを巡る著作権トラブルには、次のようなパターンがあります。
- 自社の動画が切り取られ、他人の動画内で意図を変えて使われた
- 自社制作のBGMや映像素材がリミックス経由で無断使用された
- 自社が他社動画をリミックスした結果、クレームや著作権申立を受けた
これらの問題は、「リミックスが自動的に許可されている」ことを知らずに運用している企業に多く見られます。
特に企業ロゴやナレーションを含むプロモーション動画は、切り取られて誤用されることでブランド誤認が起きる可能性もあります。
YouTubeリミックスを「許可しない」設定にする手順
企業アカウントでは、原則として「リミックスを許可しない」設定にしておくことが推奨されます。
設定手順は以下の通りです。
- YouTube Studioにアクセス
- 左側のメニューから「コンテンツ」をクリック
- 設定を変更したい動画の右側にある「鉛筆マーク(編集)」を選択
- 「詳細設定」タブを開く
- 「リミックスを許可する」のチェックを外す
この設定を保存すれば、他ユーザーがその動画をリミックス素材として使用することはできなくなります。
また、新規アップロード時に「デフォルトでリミックスを許可しない」設定にしておくと、個別対応の手間を省けます。
特に企業の広報用動画や広告映像は、社外での誤用リスクが高いため、一律でリミックスを無効化する方針を取るのが安全です。
YouTubeリミックスされた場合の確認方法と対応手順
もし自社の動画がリミックスされてしまった場合、YouTube Studioの「著作権管理ツール」から確認できます。
確認手順は次の通りです。
- YouTube Studioにログイン
- 左メニューの「著作権」タブをクリック
- 「一致したコンテンツ」セクションを確認
- リミックスとして使用された動画が一覧に表示される
リスト内には、リミックス元動画や投稿者名、視聴数などが表示されます。
問題のある動画が見つかった場合は、「削除リクエスト」を送ることで削除申請が可能です。
ただし、リミックスされた動画が「正当な引用や批評の範囲」である場合は削除できません。
そのため、削除前に必ず社内の法務部門と確認し、正当な削除理由があるかを判断しましょう。
YouTubeリミックスができない場合の原因と解決策
「YouTubeリミックスができない」「押しても反応しない」といった問い合わせも増えています。
これはシステム不具合ではなく、いくつかの制限条件に該当している可能性があります。
リミックスができない主な原因
- 元動画が「リミックスを許可しない」に設定されている
- 音楽著作権の制限により再利用が制限されている
- 動画が非公開・限定公開になっている
- Shorts作成機能がアカウント設定で無効化されている
これらのいずれかに該当する場合、リミックスボタンを押しても編集画面に進めません。
特に企業が使用している商用音源やナレーション入り素材は、YouTubeが自動的にリミックス対象外として制限していることがあります。
解決策としては、
- 自社動画の場合:一時的にリミックス許可設定をONにして再試行
- 他社動画の場合:権利者の許可を得るか、自社でオリジナル素材を制作する
といった対応が必要です。
YouTubeリミックスの収益構造と注意すべきポイント
リミックス動画でも広告収益は発生しますが、その分配構造は通常のYouTube動画とは異なります。
収益がどこに入るかを正しく理解していないと、後でトラブルになることもあります。
リミックス動画の収益は誰に入るのか
リミックス動画で発生する収益はリミックスを作成した側に帰属します。
元動画の投稿者には、直接的な収益は入りません。
ただし、リミックス動画が拡散することで元動画の再生回数やチャンネル登録者が増え、結果的に間接収益につながるケースもあります。
そのため、マーケティング目的であれば「リミックスを許可」して拡散力を優先するのも戦略の一つです。
しかし、企業の場合はブランドや広告メッセージが勝手に編集されるリスクを考慮し、短期的な再生数よりも長期的なブランド信頼性を優先すべきです。
YouTubeリミックスを企業が安全に活用する方法
YouTubeリミックスは、危険を避ければ非常に有効なマーケティングツールにもなります。
以下では、安全かつ効果的に活用するための運用ポイントをまとめます。
企業がリミックスを活用するメリットとリスクのバランス
リミックスを許可することで得られる最大のメリットは、ユーザー参加型の拡散効果です。
視聴者が自社の製品やCMを素材にリミックスを作ることで、自然な口コミ効果が生まれます。
しかし同時に、内容を誤って切り取られることでブランドの意図がねじ曲がるリスクも伴います。
たとえば、商品紹介動画がジョークの素材として使われ、誤情報が拡散するケースもあります。
そのため、動画の種類に応じて「リミックスを許可する/しない」を明確に分ける運用が重要です。
社内ポリシーとしての設定ルール化
社内で複数の担当者がYouTubeを運用している場合、個人判断で「許可/不許可」を設定するとリスクが増します。
そこでおすすめなのが、以下のようなポリシー設定です。
- 広報・キャンペーン動画:リミックス許可(拡散目的)
- 商品説明・社長メッセージ:リミックス禁止(誤用防止)
- 採用動画:ケースバイケースで許可
このように明文化しておくことで、運用担当が変わっても一貫性を保てます。
まとめ:リミックス設定の理解が企業の信頼を守る
YouTubeリミックスは、ショート動画時代に欠かせない機能ですが、使い方を誤ると企業の信頼や著作権リスクに直結します。
「押してしまった」程度で慌てる必要はありませんが、「許可しない」設定をデフォルトにしておくことでトラブルはほぼ防げます。
一方で、マーケティング戦略として上手にリミックスを活用すれば、ユーザー主導の拡散を生み出すことも可能です。
重要なのは、企業が「どの動画を拡散させたいのか」「どの動画は守るべきか」を明確に線引きし、
その意図をYouTube Studioの設定に反映させることです。
著作権とブランドを守りながら、YouTubeリミックスを安全かつ戦略的に活用する。
それこそが、2025年以降の動画マーケティングにおける新たな競争力になるでしょう。




























