「懸念点」という言葉は、会議・報告書・メールなど、ビジネスのあらゆる場面でよく使われます。
しかし、意味をあいまいに理解したまま使うと、「上から目線」「責任逃れ」「否定的」と受け取られてしまうこともあります。
この記事では、「懸念点とは何か?」という基本から、使い方・言い換え・英語表現・例文までをわかりやすく整理。
ビジネスの現場で信頼される伝え方のコツを、心理的背景も交えて解説します。
懸念点とは何か?簡単にわかる意味と使い方の基本
「懸念点(けねんてん)」とは、将来に対して不安や問題になりそうな事柄を指摘する言葉です。
「今は問題になっていないが、このままだとトラブルにつながる可能性がある部分」というニュアンスを含みます。
「懸念」の言葉の由来と意味
「懸念」は漢字で「懸(かか)る」と「念(おもう)」と書きます。つまり、心に何かが“引っかかっている状態”を表す言葉です。
「気になる」「心配している」「不安が残る」といった意味合いがあります。
そこに「点(ポイント)」がつくことで、「気がかりな部分」や「注意すべき箇所」という形になります。
懸念点の使い方の基本
ビジネスシーンでは、懸念点は主に以下のような場面で使われます。
- 会議でリスクを指摘するとき
- 提案書や報告書で改善が必要な箇所を示すとき
- チーム内で事前にトラブルを防ぐための共有を行うとき
たとえば以下のような文です。
今回のスケジュールで一点だけ懸念点があります。納期が祝日を挟むため、配送手配が遅れる可能性があります。
セキュリティ面に懸念点があるため、再度チェック体制を見直した方が良いと考えます。
このように「懸念点」は、**批判ではなく“予防のための提案”**として使うのが理想です。
「懸念点」と「問題点」の違いを理解する
多くの人が混同しやすいのが、「懸念点」と「問題点」の違いです。
実はこの二つ、似ているようでビジネス上のニュアンスが大きく異なります。
「懸念点」は“将来の不安”
懸念点は、まだ起きていないが今後リスクになり得る部分を指します。
たとえば「リリース前にテストが不十分かもしれない」「担当者が多忙で対応が遅れそう」といった“予兆”を表す言葉です。
相手に警戒を促し、改善行動を促す目的で使われます。
「問題点」は“すでに起きている事実”
一方、「問題点」はすでに発生しているトラブルや課題を指します。
「納期が遅れた」「システムが停止した」「顧客対応でクレームが発生した」など、現実的な課題に使うのが一般的です。
使い分けのポイント
両者を正しく使い分けることで、ビジネスコミュニケーションの印象が格段に変わります。
- 懸念点:予防・提案の場面(まだ起きていないリスク)
- 問題点:対応・報告の場面(すでに起きた事実)
たとえば上司への報告で、
「この件に問題点があります」と言ってしまうと、責任追及のトーンになります。
しかし「懸念点があります」と表現すれば、「改善提案」として受け取られやすくなります。
懸念点の言い換え表現を知っておくと角が立たない
「懸念点」は便利な言葉ですが、使い方によっては相手に否定的な印象を与えることがあります。
そこで状況に応じた言い換え表現を知っておくと、柔らかく伝えられます。
相手を立てたいときの言い換え
- 「気になる点」
- 「確認しておきたい点」
- 「検討が必要な部分」
- 「調整の余地がある部分」
例:「一点だけ気になる点がありますので、再確認させてください。」
このように表現することで、「あなたの案に反対している」印象を避けられます。
上司・取引先に報告するときの言い換え
- 「リスクが想定される部分」
- 「注意すべきポイント」
- 「今後の課題になりそうな要素」
例:「納期に関してリスクが想定される部分がありますので、事前に共有させていただきます。」
「懸念点」と言い切るよりも、相手の判断を尊重する形にできます。
社内メンバー同士で使うときの言い換え
- 「まだ不確定な部分」
- 「確認しておくべき点」
- 「気をつけたいところ」
これらの表現は、フラットな関係の同僚間でのやり取りに自然に馴染みます。
ビジネスメールで使える懸念点の例文集
懸念点をメールで伝えるときは、指摘だけで終わらせないことが大切です。
単に「懸念点があります」ではなく、「対応策」や「意図」を添えることで、相手に誠実な印象を与えられます。
例文①:取引先への懸念共有
今回の契約内容につきまして、支払い期日に関して一点懸念点がございます。
他案件のスケジュールと重なっているため、請求処理に遅延が発生する可能性がございます。
念のため、締め日を前倒しする方向で調整できないかご相談させてください。
例文②:上司への進捗報告
新プロジェクトの進行において、一部懸念点があります。
クライアント側の承認プロセスに時間を要するため、納期が後ろ倒しになる可能性があります。
代替案として、資料を分割納品する案を検討中です。
例文③:社内のチーム共有
現時点での進行状況は順調ですが、メンバーのスケジュールに一部重複があり、タスク処理に遅れが出る懸念があります。
タスク管理表を再整理し、担当分担の見直しを提案します。
このように「懸念点+具体的な対応案」で伝えると、問題解決に向けた建設的な印象になります。
懸念点を英語で伝えるときの表現と例文
海外のクライアントや英語メールでは、「懸念点」という概念を直訳できません。
状況に応じて自然な英語表現に言い換える必要があります。
よく使われる英語表現
- concern(懸念・心配)
- issue(問題・課題)
- risk(リスク・危険性)
- point of concern(懸念点)
- potential problem(潜在的な問題)
例文①:丁寧に伝える場合
I have a concern regarding the delivery schedule.
(納期に関して、懸念点があります。)
例文②:提案型にする場合
There is a potential risk that the data migration may be delayed.
(データ移行に遅延が発生する可能性があります。)
例文③:協議的に伝える場合
I would like to discuss one point of concern before we proceed.
(進める前に一点だけ懸念点を話し合いたいです。)
日本語と同様、英語でも「懸念点」は“否定ではなく前向きな協議のきっかけ”として使うのが理想です。
懸念点を的確に伝えるコツと注意点
懸念点を伝えるとき、意図は「問題提起」ではなく「改善提案」です。
伝え方を誤ると、相手の努力を否定するように聞こえてしまうため、以下の点に注意しましょう。
1. 「あなたのせい」と受け取られないようにする
懸念点を伝えるときは、主語を「私」に置くと柔らかくなります。
悪い例:「Aさんのスケジュールに問題があります」
良い例:「スケジュールが重なっている点が少し気になっています」
2. 根拠を添えて説得力を高める
懸念の内容を「感覚」ではなく「データ」や「過去の事例」で支えると、納得感が上がります。
「前回も同様の進行で遅延があったため、今回はリスクを早めに共有したいと思います。」
3. 懸念を伝えたあとに“協力の姿勢”を示す
指摘で終わらせず、「一緒に対応したい」「代替案を検討している」と伝えるのが好印象です。
「もし必要であれば、私の方で資料作成をサポートいたします。」
懸念点を整理できる人が評価される理由
仕事ができる人ほど、「問題が起きる前に察知する力」が高いです。
懸念点を正しく整理して伝えられる人は、結果的にチームから信頼されます。
上司から評価される理由
- トラブルを未然に防ぐ「予測力」がある
- 感情ではなく事実で話せる
- ネガティブな話題を建設的に変換できる
チームで信頼される理由
懸念点をオープンに共有できる文化があると、チーム全体の安心感が高まります。
ミスを責めるのではなく、早期に気づいたことを「助け合いのサイン」として扱えるのです。
まとめ:懸念点を伝える力が、信頼を生む
「懸念点」とは、ただの“気になること”ではなく、未来のトラブルを防ぐための知的アラートです。
その伝え方ひとつで、あなたの印象も信頼も変わります。
- 「問題点」との違いを意識する
- 相手の立場に配慮した言葉を選ぶ
- 根拠と代替案を添えて伝える
懸念点をうまく扱える人は、「不安を共有する人」ではなく「信頼を築く人」になれます。
次に懸念を感じたら、ためらわずに一言、「こういう点が気になっています」と伝えてみてください。
それがあなた自身の評価を上げ、チーム全体の生産性を高める第一歩になります。





























