「もとより」の意味を正しく理解しよう|ビジネス文書で誤用しやすい日本語表現と例文集

「もとより」という言葉をビジネス文書に入れようとして、少し手が止まったことはありませんか。意味は何となく分かる。でも、「もちろん」と同じなのか、「もともと」と同じなのか、「〜はもとより」の形でしか使えないのか、いざ文章にすると迷いやすい言葉です。

結論から言うと、「もとより」には大きく2つの意味があります。1つ目は「初めから」「以前から」という意味。2つ目は「言うまでもなく」「もちろん」という意味です。辞書でも「初めから。以前から。もともと」と「言うまでもなく。もちろん」の2つの意味が示されています。

ロロメディア編集部でも、提案書の文章で「品質はもとより、納期管理にも注力します」と書いたときに、「この“もとより”は少し硬すぎないか」「読者に自然に伝わるか」と見直したことがあります。正しい言葉でも、場面に合わなければ文章が古く見えたり、妙に偉そうに見えたりするんですよね。

「もとより」は便利です。でも、使い方を間違えると、伝えたい内容と逆に読まれることがあります。ビジネス文書では、意味、文脈、相手との距離感まで見て使う必要があります。

目次

「もとより」の意味は2つある

「もとより」の意味は2つある

「もとより」は、ひとつの言葉で2つの意味を持ちます。ここを分けて理解しないと、ビジネス文書で誤用しやすくなります。

1つ目は「初めから」「以前から」という意味です。たとえば「もとよりそのつもりです」は、「初めからそのつもりです」という意味になります。2つ目は「もちろん」「言うまでもなく」という意味です。たとえば「品質はもとより、対応速度も重視します」は、「品質はもちろん、対応速度も重視します」という意味です。

この2つは似ているようで、文章の働きが違います。前者は時間や前提を示します。後者は、AだけでなくBも含めるという広がりを作ります。

「初めから」という意味で使う場合

「もとより」を「初めから」の意味で使う場合は、最初から分かっていたこと、前提として持っていた考え、以前から決まっていた方針を示します。

たとえば、「本件につきましては、もとより慎重に進める方針です」と書けば、「最初から慎重に進める前提だった」という意味になります。

ただし、この使い方はやや硬いです。日常的なビジネスメールでは、「当初より」「以前から」「もともと」のほうが自然に見えることがあります。

たとえば、社内チャットで「もとより対応予定です」と書くと少し堅く感じます。「もともと対応予定です」や「当初から対応予定です」のほうが、相手にすっと伝わる場面も多いでしょう。

「もちろん」という意味で使う場合

ビジネス文書でよく使われるのは、「もちろん」「言うまでもなく」の意味です。

「価格はもとより、導入後のサポート体制も重要です」
「営業力はもとより、顧客理解の深さが求められます」

この形では、前半に当然大事なものを置き、後半にさらに強調したいものを置きます。

つまり、「Aは当然として、Bも重要です」という構造です。この構造を理解していないと、文章がねじれます。

たとえば「納期はもとより、納期を守ることが重要です」と書くと、同じ内容を重ねていて不自然です。前半と後半には、違う要素を置く必要があります。

ビジネス文書で「もとより」が使われる場面

ビジネス文書で「もとより」が使われる場面

「もとより」は、少し改まった文章で使うと効果があります。提案書、報告書、挨拶文、方針説明、社外向け文書などでは、文章をきれいに引き締めてくれます。

ただし、便利だからといって何度も使うと、文章が古く見えます。1つの文書に何回も「もとより」が出てくると、読み手は少し重く感じるかもしれません。

提案書では「当然重視すること」を示せる

提案書で「もとより」を使うと、「それは当然として、さらに別の価値も提供します」という見せ方ができます。

たとえば、Web広告の提案書で「広告効果はもとより、運用プロセスの透明性も重視します」と書くとします。この場合、広告効果は当然大事。そのうえで、運用の見える化にも力を入れる、という意味になります。

これは提案書では使いやすい表現です。

ただし、操作説明の前に読者がつまずく場面として、提案書提出前に「良さそうな言葉だから」と入れた結果、何を強調したいのか分からなくなるケースがあります。見栄えのために使うのではなく、前半と後半の関係を考えて使ってください。

報告書では「範囲の広がり」を伝えられる

報告書でも「もとより」は使えます。

「売上面はもとより、顧客満足度にも改善が見られました」

この文では、売上だけでなく顧客満足度にも成果があったと伝えています。単に「売上と顧客満足度が改善しました」と書くより、売上を前提にしつつ、顧客満足度の改善も強調できます。

ただし、報告書では分かりやすさが最優先です。読み手が急いでいる場合、「もとより」よりも「売上だけでなく」のほうが早く伝わることもあります。

上司に短く報告するなら「売上だけでなく、顧客満足度も改善しました」で十分です。役員向け資料や正式な報告書なら「売上面はもとより」でも自然になります。

挨拶文では改まった印象を出せる

挨拶文や式典文では、「もとより」は比較的使いやすい表現です。

「日頃よりご支援を賜っております皆様はもとより、関係各位のご尽力に深く感謝申し上げます」

このように書くと、少し格式のある文章になります。

ただし、読み慣れていない人には堅く感じられることもあります。社内報やカジュアルなメディア記事では、「皆様はもちろん」のほうが自然かもしれません。

文章の格を上げたいときには使える。でも、親しみやすく伝えたいときには少し重い。この感覚を持っておくと、使いどころを間違えにくくなります。

「もとより」と「もちろん」の違い

「もとより」と「もちろん」の違い

「もとより」と「もちろん」は、かなり近い意味で使えます。ただし、印象が違います。

「もちろん」は日常的で分かりやすい言葉です。一方、「もとより」は改まった文章に向いています。ビジネスメールでは、相手との距離や文書の硬さによって使い分ける必要があります。

「もちろん」は会話やメールで使いやすい

「もちろん」は、会話でもメールでも自然に使えます。

「品質はもちろん、納期も重視します」
「費用はもちろん、運用後のサポートも確認しましょう」

このように、読み手にすぐ伝わります。社内チャット、通常のメール、カジュアルな提案文では「もちろん」のほうが自然です。

ただし、正式な文書では少し口語的に見える場合があります。役員向け資料、社外向け挨拶文、契約に近い文書では、「もとより」や「言うまでもなく」のほうが合うことがあります。

「もとより」は文章を引き締めるが硬くなる

「もとより」は、文章を引き締めます。

「安全性はもとより、操作性にも配慮しています」

この文は、少し硬めですが、ビジネス文書として整っています。サービス紹介、商品説明、方針説明などに使いやすい形です。

ただし、すべての「もちろん」を「もとより」に置き換えると不自然です。

たとえば、お客様への軽い返信で「もちろん対応可能です」を「もとより対応可能です」と書くと、かなり違和感があります。ここでは「もちろん対応可能です」または「対応可能です」が自然です。

「もとより」と「もともと」の違い

「もとより」と「もともと」の違い

「もとより」と「もともと」も混同されやすい言葉です。

「もともと」は、日常会話でもよく使う自然な言葉です。「以前から」「最初から」という意味で使います。「もとより」も同じ意味を持ちますが、文章の硬さが違います。

「もともと」は説明の背景に向いている

「もともと」は、背景や経緯を説明するときに向いています。

「この企画は、もともと既存顧客向けに設計したものです」
「この仕様は、もともと社内利用を前提にしていました」

このように、自然な説明文になります。ビジネスメールでも違和感が少ないです。

一方で、「この企画は、もとより既存顧客向けに設計したものです」と書くと、少し堅く、場合によっては古く見えます。意味は通りますが、読みやすさでは「もともと」が勝つことが多いです。

「もとより」は前提を強く示したいときに使う

「もとより」は、単なる背景説明よりも、前提や当然性を強く示すときに向いています。

「当社はもとより、関係各社とも連携して対応します」

この文では、「当社だけでなく関係各社も」という広がりがあります。ここで「もともと」を使うと意味が変わります。

「もともと」は時間の流れを示す言葉。
「もとより」は時間の意味もありますが、ビジネスでは「当然として」の意味で使われることが多い。

この違いを押さえておくと、誤用がかなり減ります。

「〜はもとより」の正しい使い方

「〜はもとより」の正しい使い方

「もとより」をビジネス文書で使うなら、「Aはもとより、Bも」の形が最も使いやすいです。

この形では、Aを当然の要素として置き、Bも重要だと伝えます。つまり、Bを追加で強調する表現です。

前半には当然重要なものを置く

「〜はもとより」の前半には、誰が見ても重要だと分かるものを置きます。

「品質はもとより、納期も重視します」
「価格はもとより、サポート体制も比較対象になります」

この場合、品質や価格は当然大事です。そのうえで、納期やサポート体制も大事だと広げています。

ここで前半に重要度の低いものを置くと、文章が弱くなります。

たとえば「封筒の色はもとより、契約条件も確認します」と書くと、前半と後半の重さが違いすぎて違和感があります。契約条件のほうが明らかに重要だからです。

後半には追加で強調したいものを置く

「〜はもとより」の後半には、読み手に特に意識してほしい要素を置きます。

たとえば、「機能性はもとより、導入後の運用負荷も確認すべきです」と書けば、機能だけでなく運用負荷も大事だと伝えられます。

この表現は、提案書や比較記事でかなり使えます。読者が見落としがちな観点を後半に置くと、文章に説得力が出ます。

ロロメディア編集部でSEO記事を書くときも、読者が最初に気にする要素を前半に置き、実務で重要な観点を後半に置くと、文章が締まります。

前後の要素は同じ種類でそろえる

「〜はもとより」を使うときは、前半と後半の種類をそろえる必要があります。

たとえば、「価格はもとより、担当者の対応も重要です」は自然です。どちらも比較・判断の要素だからです。

一方、「価格はもとより、来週までに提出します」は不自然です。価格という要素と、提出行動が並んでいて、文の構造がズレています。

書いたあとに、「AだけでなくBも」と言い換えてみてください。自然に読めるなら問題ありません。不自然なら、文を組み直したほうがいいです。

「もとより」の誤用しやすいパターン

「もとより」の誤用しやすいパターン

「もとより」は、なんとなく知的に見える言葉です。だからこそ、雰囲気で入れると誤用します。

特に多いのは、「もともと」と混ぜる誤用、「もちろん」の意味で使いすぎる誤用、前後の要素がそろっていない誤用です。

「以前から」の意味で硬くしすぎる

ビジネスメールで「もとより」を使うと、文章が必要以上に硬くなることがあります。

たとえば、社内メールで「本件はもとより対応予定でした」と書くと、少し大げさです。自然に書くなら「本件は当初から対応予定でした」で十分です。

提出前の社内連絡で、丁寧にしようとして言葉を硬くしすぎることがあります。読みにくい文章になって、上司から「結局どういう意味?」と聞き返される。これでは本末転倒です。

丁寧さと分かりやすさは別です。社内の実務連絡では、まず分かりやすさを優先しましょう。

「当然」の意味で押しつけがましくなる

「もとより」には「言うまでもなく」という意味があります。そのため、使い方によっては少し押しつけがましく見えることがあります。

たとえば、「貴社におかれましては、もとよりご理解いただいているかと存じます」と書くと、相手に「当然分かっていますよね」と言っているように響く場合があります。

このような文は避けたほうが安全です。

相手に理解を求めたいなら、「ご確認いただけますと幸いです」「ご理解賜りますようお願い申し上げます」のように書いたほうが丁寧です。

同じ内容を重ねてしまう

「もとより」を使うとき、前後で同じ意味を繰り返してしまう誤用があります。

「安全性はもとより、安全面への配慮も重要です」

これは同じ意味が重なっています。自然にするなら、「安全性はもとより、操作性にも配慮する必要があります」とします。

「Aはもとより、Bも」の形では、AとBに違う内容を置くこと。これが基本です。同じ意味の言い換えを並べると、文章が薄く見えます。

ビジネスメールで使える「もとより」の例文

ビジネスメールで使える「もとより」の例文

ここからは、実際に使える例文を見ていきます。

ただし、例文はそのまま貼るだけではなく、自分の業務内容に合わせて差し替えてください。「品質」「納期」「価格」「安全性」「対応速度」など、文書の目的に合わせると自然になります。

提案メールで使える例文

提案メールでは、相手が重視する要素を前半に置き、自社が追加で提供できる価値を後半に置くと自然です。

「費用面はもとより、導入後の運用負荷を抑えられる点も重視してご提案いたします」

この文では、費用が大事なのは当然。そのうえで、運用負荷も考えていると伝えています。

もう少し柔らかくするなら、次の形です。

「費用だけでなく、導入後の運用負荷も抑えられるよう設計しております」

相手がカジュアルな企業なら、こちらのほうが読みやすいかもしれません。提案先の雰囲気に合わせて選びましょう。

報告メールで使える例文

報告メールでは、成果や影響範囲を広げて伝えるときに使えます。

「売上面はもとより、問い合わせ数の増加にも良い影響が見られました」

この文は、売上以外の成果も伝えたいときに便利です。SEO記事や広告施策の報告でも使えます。

ただし、報告メールでは数字を添えるとさらに良いです。

「売上面はもとより、問い合わせ数も前月比で18%増加しました」

このように書くと、抽象的な印象ではなく、実務報告として伝わります。

お礼メールで使える例文

お礼メールでは、やや改まった場面で使えます。

「ご担当者様はもとより、関係部署の皆様にも多大なるご協力を賜り、誠にありがとうございました」

この文では、担当者だけでなく関係部署にも感謝を広げています。プロジェクト完了時やイベント終了後のお礼に向いています。

ただし、日常的なお礼メールでは少し重いです。通常のやり取りなら「ご担当者様をはじめ、関係部署の皆様にもご協力いただき、ありがとうございました」のほうが自然です。

「もとより」を使わないほうがよい場面

「もとより」を使わないほうがよい場面

「もとより」は正しい言葉ですが、使わないほうがよい場面もあります。

特に、短いメール、カジュアルなチャット、急ぎの連絡、相手に負担をかけた場面では、別の言葉にしたほうが自然です。

社内チャットでは硬すぎる

社内チャットで「もとより」を使うと、少し堅く見えます。

たとえば、「その点はもとより認識しております」と返すと、やや冷たい印象になります。相手によっては「責められた」と感じるかもしれません。

自然にするなら、「その点は認識しています」「以前から把握しています」で十分です。

チャットでは、短く、誤解なく伝えることが大切です。きれいな言葉より、温度感の合う言葉を選びましょう。

謝罪文では使い方に注意する

謝罪文で「もとより」を使うと、言い訳っぽく見えることがあります。

たとえば、「本件につきましては、もとより慎重に対応しておりましたが」と書くと、「慎重にやっていたんですけど」と弁解しているように見えます。

謝罪文では、まず事実とお詫びを明確に書くべきです。

「このたびは確認不足によりご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」

このように書いたほうが伝わります。「もとより」を入れて文章を整えようとすると、かえって誠意が薄く見えることがあります。

相手に「当然」を押しつける文では避ける

「もとより」は、相手に当然性を押しつける文では避けたほうがいいです。

「本件の重要性は、もとよりご理解いただいているものと存じます」

この文は、読み方によっては「分かっていますよね」と圧をかけているように見えます。

相手にお願いするなら、

「本件の重要性をご理解いただき、引き続きご協力賜れますと幸いです」

のほうが柔らかいです。

ビジネス文書では、正しい言葉より、相手がどう受け取るかを優先してください。

「もとより」の自然な言い換え表現

「もとより」の自然な言い換え表現

「もとより」が硬いと感じる場合は、別の言葉に置き換えましょう。

言い換えは、意味によって変えます。「初めから」の意味なのか、「もちろん」の意味なのかで選ぶ言葉が違います。

伝えたい意味言い換え表現向いている場面
初めから当初より報告書、計画説明
以前から以前よりメール、経緯説明
もともともともと社内連絡、説明文
もちろんもちろんメール、会話
言うまでもなく言うまでもなく改まった文章
AだけでなくBもAに加え、Bも分かりやすい提案文
AをはじめBもAをはじめ、Bもお礼、挨拶文

この表を見て、「もとより」を無理に使う必要はないと分かるはずです。文章の目的が伝わるなら、言い換えたほうがよい場面もあります。

特にWeb記事やメールでは、「Aに加え、Bも」「Aだけでなく、Bも」のほうが読みやすいです。ロロメディアの記事でも、読者に最短で伝えたい場面では、あえて簡単な表現を選びます。

「もとより」を使ったNG例と修正例

「もとより」を使ったNG例と修正例

ここでは、ビジネス文書で起きやすいNG例を修正していきます。

言葉の意味だけ知っていても、実際の修正ができなければ使いこなせません。提出前の文章チェックに使えるように、実務寄りで見ていきましょう。

NG例1「もとより対応します」

「本件につきましては、もとより対応します」

この文は意味が曖昧です。「最初から対応する予定だった」のか、「当然対応する」のかがはっきりしません。相手によっては、少し偉そうにも見えます。

修正するなら、目的に合わせて分けます。

「本件につきましては、当初より対応予定です」
「本件につきましては、速やかに対応いたします」

前者は以前から予定していた場合。後者はこれから対応する意思を伝える場合です。ビジネスメールでは、曖昧な言葉より行動が分かる言葉を選びましょう。

NG例2「納期はもとより、期限を守ります」

「納期はもとより、期限を守ります」

これは同じ意味が重なっています。納期と期限がほぼ同じなので、「Aはもとより、Bも」の形になっていません。

修正するなら、

「納期はもとより、品質管理にも十分配慮いたします」

このように、前半と後半に違う要素を置きます。納期と品質の両方を重視する文になり、意味が明確になります。

NG例3「貴社はもとより理解していると思います」

「貴社はもとより本件をご理解いただいているものと存じます」

これは相手に圧をかけているように見えます。相手が理解している前提で話を進めており、少し上から目線に感じられる可能性があります。

修正するなら、

「本件についてご確認いただき、ご不明点がございましたらお知らせください」

または、

「本件の趣旨をご理解賜れますと幸いです」

のほうが自然です。

相手に行動を求める場面では、「当然分かっているはず」という書き方を避けましょう。

ビジネス文書で誤用しやすい日本語表現

ビジネス文書で誤用しやすい日本語表現

「もとより」以外にも、ビジネス文書では意味を曖昧にしたまま使われる言葉があります。

言葉は、知っているつもりが一番危ないです。雰囲気で使うと、読み手に違和感を与えます。

「および」と「ならびに」の使い分け

「および」と「ならびに」は、どちらも並列を示す言葉です。ただ、厳密な文書では階層が違うときに使い分けることがあります。

たとえば、「AおよびBならびにC」といった形は、法律文書や規程文で見かけます。日常のビジネス文書では、無理に使い分けるより、「AとB、さらにC」のように分かりやすく書いたほうがよい場合もあります。

文化庁の「公用文作成の考え方」でも、公用文は正確であるとともに、読み手に分かりやすく伝えることが重視されています。ビジネス文書でも同じです。難しい表現を選ぶより、誤解なく伝わる表現を選ぶべきです。

「早急」と「迅速」の違い

「早急」は、急いで対応する必要があるという意味です。「迅速」は、すばやく対応する様子を表します。

たとえば「早急にご対応ください」は、相手に急ぎの対応を求める表現です。少し強めに聞こえることがあります。一方、「迅速にご対応いただきありがとうございます」は、相手の対応の速さを評価する表現です。

急ぎで依頼する場面では、相手に圧をかけすぎないように注意しましょう。

「恐れ入りますが、本日中にご確認いただけますと幸いです」

このように期限を明確にしたほうが、単に「早急に」より実務的です。

「ご苦労様」と「お疲れ様」の違い

「ご苦労様」は、目上から目下に使う印象を持たれやすい表現です。社外や目上の人には避けたほうが安全です。

通常のビジネスでは「お疲れ様です」「お世話になっております」を使います。

たとえば、取引先に「ご苦労様です」と書くと、相手によっては失礼に感じる可能性があります。本人に悪気がなくても、言葉の印象で損をします。

敬語は、正しさだけではなく、相手がどう受け取るかが重要です。文化庁の「敬語の指針」でも、敬語は相手の人格や立場を尊重する表現として位置づけられています。

「もとより」を自然に使うためのチェックリスト

「もとより」を自然に使うためのチェックリスト

最後に、文章に「もとより」を入れる前の確認ポイントをまとめます。

このチェックをするだけで、誤用や不自然な硬さをかなり防げます。

使う前に意味を言い換えて確認する

「もとより」を使う前に、まず別の言葉に言い換えてみてください。

「初めから」なのか。
「もちろん」なのか。
「AだけでなくBも」なのか。

このどれにも自然に置き換えられないなら、その「もとより」は危険です。

たとえば、「品質はもとより、納期も重視します」は「品質だけでなく、納期も重視します」と言い換えられます。自然です。

一方、「本件はもとより確認します」は、何を意味しているのか曖昧です。「本件は確認します」で十分でしょう。

相手との距離感に合っているか見る

「もとより」は少し硬い言葉です。相手との距離が近い場合は、無理に使わないほうが自然です。

社外向け提案書、報告書、挨拶文では使えます。社内チャット、日程調整メール、軽い返信では硬すぎることがあります。

同じ内容でも、場面によって表現を変えてください。

「品質はもとより、納期も重視します」
「品質だけでなく、納期も大切に進めます」

前者は提案書向き。後者はメールや記事向きです。

前後の要素が並列になっているか確認する

「Aはもとより、Bも」の形で使う場合、AとBが同じ種類の要素か確認してください。

価格とサポート。品質と納期。売上と顧客満足度。これらは並列にできます。

一方、価格と提出します、品質と昨日、納期と担当者が頑張る、のように種類が違うと不自然です。

文章を読み返して、「AだけでなくBも」と置き換えられるか確認してください。これが一番簡単なチェック方法です。

まとめ

まとめ

「もとより」には、大きく2つの意味があります。1つは「初めから」「以前から」。もう1つは「言うまでもなく」「もちろん」です。辞書でも、この2つの意味が示されています。

ビジネス文書でよく使うのは、「Aはもとより、Bも」の形です。この場合は、「Aは当然として、Bも重要です」という意味になります。提案書、報告書、挨拶文では使いやすい表現です。

ただし、使いすぎると文章が硬くなります。社内チャットや日常的なメールでは、「もちろん」「もともと」「当初より」「AだけでなくBも」のほうが自然に伝わることがあります。

誤用を防ぐには、使う前に3つだけ確認してください。

「初めから」か「もちろん」に言い換えられるか。
前後の要素が同じ種類で並んでいるか。
相手との距離感に合う硬さか。

この3つを見れば、「もとより」は怖くありません。正しく使えば、文章に落ち着きと説得力を出せます。無理に使えば、古く、重く、少し偉そうに見えます。

ビジネス文書で大切なのは、難しい言葉を知っていることではなく、読み手に負担なく伝えることです。「もとより」を使うか迷ったら、まず読み手が一度で理解できるかを考えてください。そこを外さなければ、文章の印象はかなり整います。

参考記事

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