職場で電話が鳴っているのに、なぜか毎回同じ人だけが取らない。こちらは資料作成中の手を止めて受話器を取っているのに、隣の人は画面を見たまま動かない。忙しい時間帯にこれが続くと、「聞こえているよね?」「なぜ自分ばかり?」とモヤモヤしますよね。
電話対応は、ただの雑務に見えて、実は職場の空気を大きく左右します。取る人が固定されると、その人の集中時間が削られますし、問い合わせ対応や取次ぎの負担も偏ります。午前中の締切前、上司への提出資料を仕上げている最中に電話が鳴り、周りが誰も動かない。結局自分が出て、作業が止まり、あとでミスに気づいてやり直す。こういう小さな不公平感は、積み重なるとかなり疲れます。
電話を取らない人の心理と本音

電話を取らない人には、いくつかの心理があります。もちろん、単純に面倒だから避けている人もいます。でも、すべてを怠慢で片づけると、本当の原因を見落とします。
電話対応に失敗するのが怖い
電話を取らない人の中には、失敗への恐怖が強い人がいます。
たとえば、新人時代に取引先名を聞き間違えた、保留操作で切ってしまった、上司に取り次いだら「その件は自分じゃない」と言われた。こういう経験があると、電話が鳴るたびに体が固まります。
本人の中では、「電話を取らない」のではなく、「取った後に迷惑をかけるくらいなら、得意な人が出た方がいい」と考えていることがあります。もちろん、職場としてはそのまま放置できません。でも、恐怖が原因なら、叱るより先に手順を整える方が効果的です。
電話対応が怖い人には、最初から完璧な対応を求めないことが大切です。「会社名、名前、用件、折り返し番号だけ聞ければ合格」とラインを下げると、かなり動きやすくなります。
電話は自分の仕事ではないと思っている
一方で、「電話対応は自分の仕事ではない」と思っている人もいます。
これは職種によって起こりやすいです。営業、制作、エンジニア、企画、経理など、それぞれ本来業務があります。その中で、電話を取る人が暗黙に決まっていると、「事務の人が出るもの」「若手が出るもの」「近い席の人が出るもの」という空気ができます。
問題は、その空気が明文化されていないことです。
本人は本気で悪気なく、「自分が取る担当ではない」と思っているかもしれません。周りは「また取らない」と不満をためている。ここにズレがあります。
このケースでは、心理を責めるより、役割を決める必要があります。「全員が取る」「午前はAチーム、午後はBチーム」「3コール以内に近い人が取る」など、ルール化しないと不公平感は消えません。
職場で電話を取らない人に見られる特徴

電話を取らない人には、行動のパターンがあります。
ただし、特徴を見るときは、人格判断に使わないでください。「この人はずるい」と決めつけるためではなく、どの対処が効くかを見極めるために見るものです。
電話が鳴ると画面に集中しているふりをする
一番わかりやすいのが、電話が鳴った瞬間に画面を見続ける人です。
さっきまで周りと話していたのに、着信音が鳴った途端に急にキーボードを打ち始める。隣の席でそれを見ている側は、かなりしんどいですよね。自分だけが反応しているように感じて、だんだん腹が立ってきます。
このタイプには、2つの可能性があります。
ひとつは、本当に避けているケースです。もうひとつは、電話対応の優先順位が低く、誰かが取るだろうと思っているケースです。どちらにしても、個別に注意する前に、チーム全体の電話ルールを作った方がよいでしょう。
「電話が鳴ったら誰が取るか」を曖昧にしたまま注意すると、その人だけが責められているように感じます。まずは仕組みで直す。そのうえで改善しない場合に個別対応へ進むのが安全です。
電話を取っても内容を聞き取れず自信をなくしている
電話をまったく取らないわけではないけれど、取るたびにうまく対応できず、少しずつ避けるようになる人もいます。
電話は相手の表情が見えません。声だけで社名、名前、用件、緊急度を判断します。聞き慣れない会社名、早口の相手、専門用語が出ると、それだけで焦ります。
こういう人に「ちゃんと取って」と言っても、改善しにくいです。必要なのは、聞き取りメモの型です。
・会社名
・名前
・誰宛か
・用件
・折り返し番号
・急ぎかどうか
これを紙や社内ツールに用意しておくだけで、電話対応の怖さは減ります。人は、何を聞けばいいか決まっていない時に一番焦ります。型があると、かなり落ち着けます。
電話を取らない人が生まれる職場側の原因

電話を取らない人の問題は、本人だけの問題に見えます。
でも実際には、職場側の仕組みが原因になっていることも多いです。誰が取るか決まっていない、電話対応の教育がない、取った人だけ損をする、感謝されない。こういう状態では、真面目な人ほど疲れていきます。
電話対応のルールが曖昧になっている
電話を取らない人がいる職場では、そもそも電話対応のルールが曖昧なことが多いです。
「気づいた人が取る」「近い人が取る」「若手が取る」くらいの空気で運用していると、結局まじめな人に集中します。気づいた人が損をする構造です。
この状態が続くと、最初は善意で取っていた人も疲れます。資料提出前に電話を取り、取次ぎメモを書き、戻ったら集中が切れている。隣の人はずっと作業を続けている。これでは不満が出るのは当然です。
ルールを作るなら、次のように具体化します。
・3コール以内に近い人が取る
・電話当番を時間帯で分ける
・会議中や集中作業中の除外ルールを決める
・新人には最初の1か月だけサポート役をつける
・取次ぎメモの書式を統一する
ここまで決めると、電話対応が「空気を読む仕事」ではなく「チームの業務」になります。空気で回す職場ほど、不公平が生まれやすいです。
電話を取る人だけ評価されない構造になっている
電話対応は、目立たない仕事です。
取らなければ目立つのに、取っても評価されにくい。これがややこしいところです。電話に出て、相手の用件を聞いて、担当者に取り次いで、必要ならメモを残す。小さな作業ですが、何度も重なるとかなり時間を使います。
それなのに、評価されるのは資料作成や売上、企画、納品だけ。電話対応は「できて当たり前」とされる。こうなると、電話を取る人ほど損をした気持ちになります。
職場としては、電話対応を雑務扱いしないことが大切です。電話は顧客接点です。最初の対応が会社の印象になります。
「電話を取ってくれてありがとう」と毎回言う必要はありません。でも、電話対応の負担が偏っているなら、業務量として認識する必要があります。評価というほど大げさでなくても、分担表に入れるだけで空気は変わります。
電話を取らない人への接し方

電話を取らない人に対して、いきなり強く注意すると関係が悪くなります。
こちらは不満がたまっているので、「なぜ取らないんですか」と言いたくなりますよね。でも、その言い方だと相手は防御に入ります。大切なのは、人格ではなく行動を扱うことです。
まず事実ベースで伝える
注意するときは、「いつも取らないよね」と言わない方がいいです。
「いつも」「全然」「まったく」は、相手が反論しやすい言葉です。「昨日は取りました」「忙しかったです」と返されて、話がずれます。
伝えるなら、具体的な場面にします。
「午前中の問い合わせが続いた時間帯に、電話対応がAさんに集中していました。次からは3コール以内に近い人が出る形にしたいです。」
この言い方なら、相手を責めるのではなく、業務の偏りを扱えます。
本人に個別で伝える場合も、「電話を取らない性格」を指摘しないことです。「電話が鳴ったときに反応が遅れることがあるので、最初の取次ぎだけでもお願いしたいです」と、具体的な行動に落とします。
苦手な人には小さな役割から任せる
電話が苦手な人に、いきなりクレーム対応や顧客折衝まで任せるのは難しいです。
まずは、取次ぎだけで十分です。「担当者がいるか確認する」「不在なら折り返し先を聞く」「用件を一文だけメモする」。この範囲なら、練習できます。
職場での導入例としては、最初の1週間は先輩が隣で聞く。次の1週間は本人が取り、メモを先輩が確認する。その後、通常対応に移る。これくらい段階を分けると、苦手意識が下がります。
電話対応は慣れの部分も大きいです。経験が少ない人にとっては、最初の数回が一番怖い。そこを支えるだけで、取れるようになる人はいます。
上司が電話を取らない部下に対応する方法

上司の立場では、電話を取らない部下をどう扱うかが難しいところです。
感情的に注意すると、パワハラっぽく見えることがあります。放置すると、他のメンバーに負担が偏ります。つまり、個人の態度問題としてではなく、業務設計の問題として扱う必要があります。
電話対応を業務として明文化する
まず、電話対応が誰の業務なのかを明文化します。
「みんなで協力して」だけでは足りません。何をどこまでやるのかを決めないと、動く人と動かない人に分かれます。
たとえば、次のように整理します。
| 項目 | 決める内容 |
|---|---|
| 取る人 | 当番制、近い人、部署ごとなど |
| 取るタイミング | 3コール以内、担当不在時など |
| 聞く内容 | 社名、名前、用件、折り返し番号 |
| 記録方法 | メモ、チャット、CRMなど |
| 除外条件 | 会議中、接客中、集中作業中など |
この表を部署内で共有すると、電話対応が曖昧な親切ではなく、明確な業務になります。部下を注意する前に、まず上司側が仕組みを作ることです。
個別面談では苦手理由を確認する
電話を取らない部下がいる場合、面談で理由を確認してください。
ただし、「なぜ取らないの?」ではなく、「電話対応で困っていることはありますか」と聞く方がよいです。厚生労働省の「こころの耳」でも、部下や社員の話を聴く際には、相手の話を受け止めながら理解しようとする積極的傾聴が紹介されています。(こころの耳)
本人が「電話が怖い」と言うなら、研修やロープレが必要です。「自分の仕事ではないと思っていた」と言うなら、役割説明が必要になります。「集中が切れるから取りたくない」と言うなら、当番制や集中時間の確保で調整できます。
理由によって対応は変わります。原因を聞かずに叱ると、改善しないまま関係だけ悪くなります。
同僚として電話を取らない人にイライラした時の対処法

同僚の立場だと、上司ほど権限がありません。
だからこそ、イライラがたまりやすいです。電話が鳴るたびに自分だけが反応し、相手は動かない。ある日の夕方、急ぎの資料を作っている時にまた電話が鳴り、隣の人が無反応だった瞬間、もう限界だと思う。こういう感情は自然です。
自分だけで抱え込まない
まず、自分だけで解決しようとしないでください。
電話を取り続ける人は、責任感が強いことが多いです。「誰も取らないなら自分が取るしかない」と動きます。でも、それを続けると、周りはさらに取らなくなります。善意が仕組みを悪くしてしまうこともあるんです。
「電話対応が特定の人に偏っていて、作業が中断されることが増えています。当番制や取次ぎルールを決められないでしょうか。」
この言い方なら、愚痴ではなく改善提案になります。
相手に直接言うなら短く具体的に伝える
どうしても直接伝えるなら、短く具体的に言いましょう。
「電話、少し取ってもらえると助かります」だけでは、相手はその場限りで終わるかもしれません。もう少し具体的にします。
「午前中は私が続けて取っているので、次に鳴ったらお願いしてもいいですか。」
この言い方なら、責めずに依頼できます。
ただし、毎回自分がお願いする状態になるなら、それは個人間の問題ではなく職場ルールの問題です。上司やチームで分担を決めた方がいいでしょう。
電話を取らない本人が改善する方法

自分が「電話を取れない側」だと自覚している人もいるはずです。
電話が鳴ると心臓が跳ねる。誰かが取ってくれるとほっとする。でも、そのたびに罪悪感がある。そういう人は、性格が悪いわけではありません。練習と型でかなり改善できます。
最初は完璧に話そうとしなくていい
電話対応が苦手な人ほど、最初から完璧に話そうとします。
でも、職場の代表電話で最初に必要なのは、完璧な会話ではありません。相手を確認し、用件を聞き、担当者へつなぐことです。
まずは、この一文を覚えてください。
「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇でございます。」
そのあと、相手が名乗ったら、社名と名前をメモします。聞き取れなければ、「恐れ入ります。もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」と言えば大丈夫です。
聞き返すことは失礼ではありません。間違えて取り次ぐ方が危険です。
メモの型を手元に置く
電話が苦手な人は、メモの型を用意してください。
白紙にメモしようとすると焦ります。何を聞くべきかが決まっていないからです。
手元に次の項目を書いたメモを置きます。
・日時
・会社名
・名前
・誰宛か
・用件
・折り返し番号
・急ぎかどうか
これだけで、電話中の不安はかなり減ります。
電話対応は、頭の回転だけで勝負するものではありません。道具を使っていい仕事です。むしろ、メモの型を持っている人の方がミスは減ります。
電話対応をチームで平等にする仕組み

電話を取らない人の問題は、最終的には仕組みで解決するのが一番です。
人の善意や空気に任せると、必ず偏ります。電話が得意な人、席が近い人、責任感が強い人、若手。このあたりに負担が寄りがちです。
電話当番制にすると不公平感が減る
一番わかりやすいのは、電話当番制です。
午前と午後で分ける、曜日で分ける、時間帯で分ける。会社の電話量に合わせて決めます。電話が多い職場なら、1人に固定せず、2人以上で回す方が安全です。
ポイントは、当番を罰ゲームにしないことです。電話当番の日は集中作業を少なめにする、会議を入れすぎない、取次ぎメモを簡単にする。ここまで考えないと、当番がただの負担になります。
電話対応マニュアルは短く作る
電話対応マニュアルは、長すぎると読まれません。
新人向けに10ページのマニュアルを作っても、電話が鳴った瞬間には見られません。必要なのは、すぐ見られる1枚です。
最低限、次の内容だけで十分です。
・最初の名乗り方
・聞く項目
・保留の使い方
・担当者不在時の言い方
・クレーム時に自分で判断しないルール
・折り返しメモの残し方
この1枚を電話の近くや社内共有ツールに置きます。実務で使えるマニュアルは、短くて具体的なものです。立派な文章より、電話中に見て使えることが大事です。
電話を取らない人を放置すると起きる問題

電話対応の偏りを放置すると、地味に職場が悪くなります。
一見、大きなトラブルではありません。でも、毎日数回の不公平が積み重なると、職場の信頼関係が削られます。
取る人の集中力が削られる
電話を取る人は、作業を中断されます。
資料を作っていた流れが止まる。数字を確認していた途中で電話に出る。戻ってきたら、どこまでやったかわからなくなる。これが一日に何度も起きると、作業ミスが増えます。
特に経理、制作、企画、エンジニア、ライターなど、集中が必要な仕事では影響が大きいです。電話対応そのものは数分でも、集中を戻すのに時間がかかります。
電話を取らない人がいると、別の人の生産性が下がります。これは感情問題ではなく、業務効率の問題です。
職場の不公平感が強くなる
電話を取る人が固定されると、不公平感が生まれます。
最初は「まあいいか」で済みます。でも、何度も続くと「なぜ自分だけ」と感じます。その感情は、やがて相手への不信感になります。
怖いのは、電話対応だけでなく、別の仕事にも影響することです。「あの人は電話も取らないし、面倒な仕事を避ける人だ」と見られるようになります。そうなると、本人の評価にも悪影響です。
電話を取らない問題は、小さな行動に見えて、職場全体の信頼に関わります。早めに整えた方がいいです。
電話を取らない人へのNG対応

電話を取らない人に対して、やってはいけない対応があります。
感情的に責める、みんなの前で恥をかかせる、性格を決めつける。このあたりは逆効果です。改善よりも反発が強くなります。
みんなの前で責めない
電話が鳴ったあとに、「また取らなかったよね」と全員の前で言うのは避けましょう。
言われた側は防御に入ります。周りも気まずくなります。問題は解決せず、職場の空気だけ悪くなります。
注意するなら個別に、短く、行動ベースで伝えます。
「電話対応が一部の人に偏っているので、次からは近い人が取るルールにします。〇〇さんも対象です。」
このくらいで十分です。
苦手を甘えと決めつけない
電話が苦手な人に対して、「そんなの甘え」と言いたくなるかもしれません。
でも、苦手の背景には、緊張、不安、過去の失敗、聞き取りの難しさ、メンタル不調がある場合もあります。厚生労働省の「こころの耳」では、働く人のメンタルヘルスや相談窓口に関する情報が提供されています。職場で不調が疑われる場合は、本人を責めるより、相談できる導線を用意することも必要です。(こころの耳)
もちろん、苦手だから一切やらなくていいわけではありません。必要なのは、苦手を前提にした業務設計です。
「できないなら練習する」「負担が大きいなら役割を調整する」「不調なら相談先につなぐ」。この順番で考えると、責めるだけより前に進みます。
まとめ

電話を取らない人の心理には、失敗への不安、苦手意識、自分の仕事ではないという認識、電話対応の優先順位の低さ、職場ルールの曖昧さなどがあります。単純に「やる気がない」と決めつけると、解決策を間違えます。
職場で大切なのは、電話対応を個人の善意に任せないことです。3コール以内に誰が取るのか、当番制にするのか、聞く項目は何か、担当者不在時はどうするのか。ここを明文化すると、不公平感はかなり減ります。
電話対応は、小さな業務に見えます。でも、取る人の集中力、顧客への印象、職場の公平感に直結します。だからこそ、「誰かが取るだろう」で流さず、チームで整える価値があります。
電話を取る人だけが疲れる職場ではなく、必要な対応をみんなで分担できる職場にする。その方が、働く人にも、お客様にも、ずっと健全です。
参考記事















