「この企業、なんか覚えてる」。そう思わせる企業には、印象に残る“言葉”があります。その核となるのが「タグライン」です。シンプルで、覚えやすく、ブランドの本質を突くこの一文は、顧客との信頼や共感を築く大きな武器になります。この記事では、タグラインの意味やキャッチコピーとの違い、有名な事例、効果的な作り方などを網羅的に解説します。
タグラインとは何か
タグラインとは、企業やブランドが伝えたい価値や世界観を端的に表現したフレーズのことを指します。企業のロゴの近くに配置されることが多く、ブランドの“顔”とも言える存在です。
語源は英語の「tag line」から来ており、物語や広告の締めの一文に使われてきた表現です。近年では、日本でも「タグライン」という言葉がビジネスやマーケティングの分野で浸透してきました。
キャッチコピーとの違い
よく混同されがちですが、キャッチコピーとタグラインには明確な違いがあります。キャッチコピーは広告やキャンペーンごとに変わる「目を引く言葉」、一方タグラインはブランドの本質を長期的に伝える「定着させる言葉」です。
例えば、飲料メーカーの広告で「夏にぴったりの爽快感！」というコピーがあったとしても、それは一時的な販促向けです。しかし「変わらないおいしさを、ずっと」というタグラインがあれば、それは企業姿勢や商品哲学を示す持続的なメッセージになります。
タグラインの役割と効果
タグラインは、企業のビジョンや信念、ブランド価値を凝縮したメッセージです。それにより、以下のような効果が期待されます。
- 顧客の記憶に残りやすくなる
- 他社との違いが明確になる
- 社内の理念共有にも活用できる
特にスタートアップや中小企業にとっては、大手に対抗するブランド力の核として、明確なタグラインを持つことが差別化の要になります。
有名企業のタグライン事例
ここでは、印象的なタグラインを持つ有名企業をいくつか紹介します。
ナイキ（NIKE）
「Just Do It」 行動を促すこのシンプルな言葉は、世界中で広く知られており、ブランド哲学を象徴しています。
Apple
「Think Different」 アップルの革新性や独自性を伝えるフレーズであり、プロダクトデザインや企業文化と一貫性を持っています。
キヤノン
「Delighting You Always」 製品を通して常に感動を提供し続けたいという理念が表現されています。
タグラインの作り方
効果的なタグラインを作成するには、以下のようなプロセスが重要です。
ブランドの核を明確にする
自社の強み、ターゲット、理念を整理し、「何を届けたいのか」「どんな感情を与えたいのか」を言語化します。
シンプルにまとめる
長すぎる表現は印象に残りにくくなります。7語以内に収まるように設計すると効果的です。
感情に訴える言葉を選ぶ
共感・安心・挑戦など、人の感情に触れる言葉を選ぶと記憶に残りやすくなります。
外部視点を取り入れる
社内だけで作ると独りよがりな表現になりがちです。ユーザーやコピーライターの意見も交えながら言葉を磨くことが大切です。
タグラインの英語対応とグローバル展開
グローバルに展開する企業にとって、タグラインを英語で設計するケースも多くあります。英語は短く端的に伝えるのに向いており、語感もよいため、海外展開を前提としたブランディングにも活用されています。
ただし、直訳では伝わりにくいニュアンスもあるため、現地文化への理解を前提としたローカライズが必要です。海外企業の中には、各国向けに別のタグラインを用意しているケースもあります。
タグラインの活用シーンと社内浸透
タグラインは顧客向けだけでなく、社内ブランディングにも活用できます。例えば、経営理念やビジョンと一緒にタグラインを用いることで、従業員の意識統一を図ることができます。
また、営業資料やプレゼン資料、名刺、オフィスのサインなど、社内外で目に触れる場所にタグラインを配置することで、ブランドの方向性を日常的に認識させる効果もあります。
タグラインの一覧と参考にしたい表現例
最後に、参考として企業が使用しているタグラインをカテゴリ別に紹介します。
挑戦・未来志向系
- 「次の時代を、共につくる」
- 「前例なき道を、切り開く」
安心・信頼系
- 「あなたの暮らしに、ずっと寄り添う」
- 「確かな品質、変わらない価値」
個性・感情訴求系
- 「あなたの“好き”が、世界を変える」
- 「心が動く、その瞬間を」
これらはあくまで一例ですが、業種やターゲットに応じて言葉の方向性を調整することで、自社だけのタグラインを生み出すヒントになります。
まとめ
タグラインは、ブランドの本質を一文に凝縮する“看板”のような存在です。キャッチコピーとは異なり、長期的に企業価値を伝え、社内外に浸透させる役割を担います。成功するタグラインは、ブランドの核を正しく言語化し、ユーザーとの感情的な接点を築く力を持っています。
単なる言葉ではなく、戦略的なメッセージとして機能するタグライン。ブランディングを強化したいすべての企業にとって、その設計と運用は、今後ますます重要な要素となるでしょう。
