介護の人手不足がやばい理由とは?現場の声・今後の影響から企業側でできる対策

介護の人手不足は、単に「採用が難しい」という話では終わりません。

朝の申し送りが終わった直後から、入浴介助、排泄介助、食事介助、服薬確認、記録、家族対応、急な体調変化への対応が続く。人が足りない日は、職員が休憩に入れないまま午後の業務に入り、夕方には記録が山積みになる。現場では、こうした負担が毎日のように起きています。

「介護の人手不足がやばい」と言われる理由は、職員が大変だからだけではありません。人手不足が続くと、サービスの質、職員の安全、利用者の生活、家族の負担、施設経営まで連鎖的に崩れます。

介護労働安定センターの令和6年度調査でも、労働条件や仕事の負担に関する悩みとして「人手が足りない」が最も高く、49.1%にのぼっています。次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」が35.3%、「身体的負担が大きい」が24.6%とされており、現場の苦しさは感覚論ではなく数字にも表れています。

介護事業者に必要なのは、「求人を出す」だけの対策ではありません。採用、定着、業務改善、職員教育、処遇改善、ICT活用、管理職のマネジメントまで含めて、現場が辞めなくて済む構造を作ることです。ここでは、介護の人手不足がなぜ深刻なのか、現場で何が起きているのか、企業側が今すぐ見直すべき対策まで実務ベースで解説します。

目次

介護の人手不足がやばいと言われる本当の理由

介護の人手不足がやばいと言われる本当の理由

介護の人手不足がやばい理由は、人が足りない状態がそのまま利用者の生活に直結するからです。

一般的なオフィス業務なら、人手不足の日に一部の作業を翌日に回せることがあります。もちろんそれも大変ですが、介護現場では食事、排泄、入浴、移乗、服薬確認を簡単に後回しにはできません。必要な支援は、その日のその時間に発生します。

昼食前にナースコールが重なり、別の利用者のトイレ介助も必要になる。食事配膳の時間は迫り、記録はまだ書けていない。職員は焦り、優先順位をつけながら走るように動きます。この状態が続くと、現場は「忙しい」を超えて、事故を防ぐだけで精一杯になります。

介護の人手不足はサービス品質に直接響く

介護現場では、人手不足が続くと「丁寧に関わる時間」が削られます。

本当は利用者の話を聞きたい。歩行練習に付き添いたい。食事量の変化に気づきたい。でも、人が足りない日は、最低限のケアを回すだけで時間が埋まります。

ここで怖いのは、職員が手を抜いているわけではないことです。むしろ多くの職員は、限られた人数でなんとか現場を回そうとしています。ただ、1人あたりの担当範囲が広がりすぎると、細かい変化に気づきにくくなります。

介護の質は、設備だけでは上がりません。職員が落ち着いて観察し、声をかけ、必要な支援を選べる余白があって初めて保たれます。

人手不足は職員の離職をさらに増やす

人手不足が続くと、残っている職員に負担が集中します。

欠員が出る。シフトがきつくなる。休みが取りにくくなる。新人教育に時間を割けない。既存職員が疲弊する。そしてまた退職者が出る。この悪循環に入ると、採用しても追いつきません。

介護労働安定センターの調査では、現在の仕事への満足度において「職場の人間関係」や「仕事の内容」はプラス評価である一方、「人員配置体制」「休憩室などの付帯設備」「賃金水準」はマイナス評価となっています。つまり、仕事そのものに意味を感じていても、人員配置や待遇面で限界を感じている人が多いということです。

企業側は、ここを見誤ってはいけません。

「介護職は大変だから辞める」のではなく、「大変な仕事を支える仕組みがないから辞める」のです。

介護現場で起きている人手不足のリアルな声

介護現場で起きている人手不足のリアルな声

介護の人手不足は、求人倍率や統計だけでは見えにくい部分があります。

現場で起きているのは、「人がいない」ではなく、「必要なタイミングに必要な人がいない」という問題です。日勤はなんとか回っていても、早番、遅番、夜勤、入浴介助、送迎、記録業務に偏りが出ると、現場の負担は一気に増えます。

たとえば、午前中に入浴介助が3名分続き、同じ時間にフロアでは転倒リスクの高い利用者が立ち上がる。職員はどちらも気になりながら動きます。こういう場面では、人数の少なさがそのままヒヤリハットにつながります。

「休憩が取れない」が当たり前になる現場は危険

人手不足の現場でまず起きるのが、休憩時間の圧迫です。

休憩に入る予定の職員がいても、ナースコールが鳴る、家族から電話が来る、急な排泄介助が入る。結果として、休憩開始が遅れたり、途中で呼び戻されたりします。

休憩が取れない状態が続くと、職員の集中力は落ちます。介護は身体を使う仕事であり、同時に判断も求められる仕事です。疲れた状態で移乗介助や服薬確認を続けるのは危険です。

企業側が見るべきなのは、シフト表上の休憩時間ではありません。実際に休憩が取れているかです。

新人が育つ前に辞めてしまう理由

人手不足の施設では、新人教育が後回しになりやすいです。

本来なら、入職後は業務の流れ、利用者ごとの注意点、記録方法、介助方法を段階的に覚える必要があります。ただ、現場が忙しいと「見ながら覚えて」「とりあえず一緒に入って」となりがちです。

新人は不安なまま現場に立ち、質問したくても先輩が忙しそうで聞けない。ミスをすると注意されるが、何を基準に動けばいいか分からない。こうなると、本人は「自分には向いていない」と感じてしまいます。

実際には、向いていないのではなく、育つ仕組みがないだけです。

新人定着を改善するなら、教育担当を決めるだけでは足りません。最初の1週間、1ヶ月、3ヶ月で何を覚えるかを分け、できる業務とまだ任せない業務を明確にする必要があります。

介護人材が不足する原因は採用難だけではない

介護人材が不足する原因は採用難だけではない

介護の人手不足は、採用できないことだけが原因ではありません。

採用しても辞める。定着しても疲弊する。ベテランに負担が偏る。管理職が現場対応に追われて改善まで手が回らない。こうした複合的な問題が重なっています。

求人票を出しても応募が来ないと、企業側は「採用媒体が悪いのでは」と考えがちです。もちろん媒体選びも重要です。ただ、応募が来ても辞退される、入職しても続かないなら、採用以前に職場の受け入れ体制を見直す必要があります。

給与だけではなく働き方の負担が大きい

介護職の待遇改善は重要です。

厚生労働省も介護職員の処遇改善に関する制度を整備しており、令和8年6月から処遇改善加算がさらに拡充される予定で、生産性向上などの取組を行い上位加算を取得することが呼びかけられています。

ただ、給与だけ上げれば解決するわけではありません。

夜勤回数が多い。急なシフト変更が多い。休み希望が通りにくい。記録業務が終業後に残る。こうした負担が続くと、多少給与が上がっても職員は疲弊します。

現場でよくあるのが、「処遇改善はしたが、業務量は変わっていない」という状態です。これでは定着につながりにくいです。賃金改善と同時に、仕事の進め方そのものを変える必要があります。

管理職が現場に入りすぎて採用・教育に手が回らない

介護施設では、管理者や主任が現場の穴埋めに入ることがあります。

もちろん緊急時には必要です。ただ、それが常態化すると、採用、教育、面談、シフト改善、業務設計が止まります。管理職が毎日現場対応に追われている施設ほど、人手不足の根本改善が進みません。

本来、管理職が見るべきなのは、今日の欠員だけではありません。

誰が疲れているか。新人がどこでつまずいているか。夜勤負担が偏っていないか。辞めそうな職員のサインが出ていないか。こうした情報を拾う時間が必要です。

管理職が現場に入ること自体を否定する必要はありません。ただし、毎週どれだけ管理業務の時間を確保できているかは、経営側が確認すべきです。

介護の人手不足が今後さらに深刻になる理由

介護の人手不足が今後さらに深刻になる理由

介護の人手不足は、今だけの問題ではありません。

高齢化が進む一方で、働き手の人口は減っていきます。つまり、介護を必要とする人は増えやすく、支える人は増えにくい構造です。

厚生労働省の介護人材確保に関する資料でも、介護サービス事業所の人手不足感は依然として課題であり、特に訪問介護で人手不足感が強いことが示されています。訪問介護は在宅生活を支える重要なサービスですが、移動時間や単独対応の負担もあり、採用・定着が難しい領域です。

介護需要は減りにくく人材獲得競争は強まる

介護サービスは、景気が悪くなれば需要が消える業界ではありません。

むしろ高齢者人口や要介護者数の増加によって、必要性は高まりやすいです。健康長寿ネットでは、要介護・要支援認定者数が2035年頃まで大きく増加し、2040年にピークを迎える推計が紹介されています。

一方で、介護業界だけが人材を取り合うわけではありません。

医療、保育、物流、飲食、小売、宿泊、清掃など、他業界も人手不足です。介護職の採用では、同じ介護施設だけでなく、他業界との比較で選ばれる必要があります。

「うちは介護だから応募が来ない」と考えるのではなく、「求職者から見て、なぜこの職場を選ぶ理由があるのか」を作る必要があります。

家族介護や地域生活にも影響が出る

介護人材が不足すると、施設だけでなく家族にも影響します。

希望するデイサービスを利用できない。訪問介護の時間が取りにくい。ショートステイの空きがない。施設入所の待機が長くなる。こうなると、家族が仕事を調整したり、介護離職を考えたりする可能性が高まります。

企業側から見ると、これは介護業界だけの問題ではありません。

従業員が親の介護で急に休む、時短勤務を希望する、退職を考える。一般企業にも影響が広がります。介護人材不足は、介護事業者だけでなく、日本の労働市場全体に関わる問題です。

介護施設で人手不足が続くと起きる悪影響

介護施設で人手不足が続くと起きる悪影響

人手不足が続く施設では、最初に現場の余裕がなくなります。

次に、教育が薄くなり、記録が遅れ、職員間のコミュニケーションが荒れ、事故リスクが上がります。最後には、採用しても人が残らない施設になってしまいます。

夕方の申し送り前、日中の記録がまだ半分以上残っている。ナースコール対応で何度も中断され、内容を思い出しながら書く。帰る時間が近づき、焦って入力する。こういう状態では、記録の精度も下がります。

記録と申し送りの質が落ちる

介護現場では、記録と申し送りが命綱です。

食事量、排泄、睡眠、服薬、転倒リスク、皮膚状態、表情の変化。これらが次の勤務者へ正しく伝わらないと、ケアの質が落ちます。

人手不足の現場では、記録が後回しになりがちです。あとで書こうとしても、細かい変化は忘れます。結果として、「いつも通り」と書かれた記録が増え、変化に気づきにくくなります。

記録業務を改善するなら、単に「早く書いて」と言うだけでは不十分です。入力項目を減らす、定型文を整える、音声入力やタブレットを使う、記録時間をシフト内に組み込む。こうした仕組みが必要になります。

職員同士の関係が悪くなりやすい

人手不足は、人間関係にも影響します。

余裕があるときなら普通に聞けることでも、忙しいときは言い方がきつくなります。新人への指導も雑になり、ベテランは「また自分ばかり」と感じる。小さな不満がたまり、職場の空気が悪くなります。

介護労働安定センターの調査では、職場の人間関係への満足度は比較的高い一方で、人員配置体制への不満が大きいことが示されています。これは、人間関係そのものより、人が足りない状態が関係悪化の火種になっている可能性を示しています。

企業側は、職員同士のトラブルを個人の相性だけで片付けないほうがいいです。

背景に、人員不足、業務量、休憩不足、教育不足がないかを見てください。

企業側が最初にやるべき介護人手不足対策

企業側が最初にやるべき介護人手不足対策

介護の人手不足対策で最初にやるべきことは、求人票を増やすことではありません。

まず、現場のどこで人が足りないのかを分解することです。全体的に足りないと感じていても、実際には夜勤が足りない、入浴介助が足りない、送迎が足りない、記録時間が足りないなど、問題は分かれます。

「人が足りないから採用しよう」で進めると、採用後も同じ問題が残ることがあります。人を増やしても、業務の偏りや無駄な作業が変わらなければ、現場の負担は減りにくいです。

シフト表ではなく実際の業務負荷を見る

人員配置を見直すときは、シフト表だけでは足りません。

同じ日勤でも、入浴日、受診付き添い、レクリエーション、家族面談、記録量によって負荷は変わります。人数だけ見て「足りている」と判断すると、現場感覚とズレます。

最初にやるべきなのは、1日の業務を時間帯ごとに書き出すことです。

時間帯負荷が高い業務見直すポイント
7時〜9時起床介助、食事、排泄早番人数、配膳導線
9時〜12時入浴、送迎、記録入浴担当の固定化、補助業務
12時〜14時食事、服薬、休憩回し休憩が実際に取れているか
14時〜17時レク、記録、家族対応記録時間の確保
夜間巡視、排泄、緊急対応夜勤負担と仮眠環境

この表を作るだけで、どこに人が必要かが見えてきます。

求人で「介護職員募集」と大きく出す前に、どの時間帯の何を補いたいのかを明確にしましょう。

介護職でなくてもできる業務を分ける

介護現場では、介護職でなくてもできる業務が混ざっていることがあります。

洗濯、掃除、シーツ交換、物品補充、配膳準備、送迎補助、記録用紙の整理。もちろん施設の体制によりますが、すべてを介護職が担うと、専門性の高いケアに時間を使いにくくなります。

ここで有効なのが、介護助手やサポートスタッフの活用です。

ポイントは、単に雑務を任せることではありません。介護職が本来集中すべき業務と、切り出せる周辺業務を整理することです。これにより、介護職の負担を減らしつつ、未経験者が入りやすい入口も作れます。

採用で応募が来ない介護事業者が見直すべきポイント

採用で応募が来ない介護事業者が見直すべきポイント

介護職の求人で応募が来ないとき、給与だけを見直しても不十分です。

求職者は、給与、勤務時間、夜勤の有無、職場の雰囲気、教育体制、休みやすさ、残業、利用者層、管理者の考え方まで見ています。求人票にそれが書かれていなければ、応募前に不安になります。

求人票を見た求職者が、夜勤回数も残業時間も教育体制も分からない。施設の写真もなく、仕事内容は「介護業務全般」とだけ書いてある。これでは、応募ボタンを押す前に止まります。

求人票は仕事内容より1日の流れを書く

求人票でよくある失敗が、「介護業務全般」と書いてしまうことです。

これでは、求職者は働くイメージを持てません。特養なのか、デイサービスなのか、有料老人ホームなのか、訪問介護なのかで仕事内容は違います。

求人票には、1日の流れを書いてください。

起床介助、食事介助、入浴介助、レクリエーション、記録、申し送り、送迎の有無。どこまで担当するのかを具体的に書くことで、ミスマッチを減らせます。

特に未経験者向け求人では、「最初から一人で任せる業務」と「同行から始める業務」を分けて書くと安心感が出ます。

職場の弱みも正直に伝えたほうが定着しやすい

採用ページでは、良いことばかり書きたくなります。

でも、入職後に現実とのギャップが大きいと早期退職につながります。忙しい時間帯がある、夜勤がある、身体的負担がある、記録業務がある。こうした情報を隠すより、どう支えているかを伝えるほうが信頼されます。

たとえば、「入浴介助は午前に集中するため忙しい時間帯があります。その分、担当を固定せず、補助スタッフと分担しています」と書けば、現実と対策が伝わります。

求職者は、楽な職場だけを探しているわけではありません。大変さを理解したうえで、続けられる職場かを見ています。

介護職員の定着率を上げるための企業側の対策

介護職員の定着率を上げるための企業側の対策

介護の人手不足対策では、採用より定着が重要です。

採用にお金をかけても、半年で辞められたら現場の負担は増えます。新人を教えた職員も疲れますし、利用者も担当者の変化に不安を感じます。

定着率を上げるには、給与だけでなく、教育、面談、休憩、シフト、評価、管理職の関わり方を見直す必要があります。

入職後30日以内のフォローが離職を防ぐ

新人が辞めやすいのは、入職後の早い段階です。

最初の数週間で「ここで続けられそう」と思えるか、「無理かもしれない」と感じるかが決まります。だからこそ、入職後30日以内のフォローが重要です。

具体的には、入職1週間後、2週間後、1ヶ月後に短い面談を入れます。長時間でなくて構いません。

聞くべきことは、困っている業務、聞きにくいこと、体力的にきつい時間帯、人間関係で不安なことです。ここで不満が出たら、早めに調整します。

新人が辞めるとき、多くの場合は退職希望を出す前からサインが出ています。表情が暗くなる、質問が減る、休みがちになる、記録ミスが増える。管理職はこの変化を見逃さないことが大切です。

評価制度は現場貢献が見える形にする

介護職の不満として多いのが、「頑張っても評価されにくい」という感覚です。

売上数字のように分かりやすい指標が少ないため、声の大きい人や長くいる人だけが評価されているように見えることがあります。

評価制度では、利用者対応、チーム連携、記録の正確さ、新人指導、改善提案、事故防止への取り組みなどを見える化してください。

評価項目が曖昧だと、職員は何を頑張ればいいか分かりません。逆に、評価される行動が明確になれば、現場全体の動きも整います。

ICT・介護ロボットで人手不足を補う考え方

ICT・介護ロボットで人手不足を補う考え方

ICTや介護ロボットは、人手不足対策として期待されています。

ただし、導入すれば自動的に楽になるわけではありません。現場の業務に合っていない機器を入れると、使われずに終わります。

記録ソフトを入れたのに入力項目が多すぎて、紙の記録より時間がかかる。見守りセンサーを入れたが通知が多すぎて職員が疲れる。こうなると、現場は「また仕事が増えた」と感じます。

ICTは記録・申し送り・情報共有から始める

介護現場で最初にICT化しやすいのは、記録と情報共有です。

紙の記録を何度も転記している。申し送りノートと口頭連絡とホワイトボードが混在している。こうした状態なら、ICTの効果が出やすいです。

ただし、導入前に今の記録項目を見直してください。

不要な項目をそのままシステムに移すと、入力の手間は減りません。記録は「何を残すべきか」「誰が読むのか」「いつ入力するのか」を整理してからデジタル化する必要があります。

介護ロボットは職員の負担が大きい業務に絞る

介護ロボットや見守り機器は、現場の負担が大きい業務から導入するのが現実的です。

移乗介助、夜間見守り、巡視、排泄予測、記録補助など、職員の身体的・心理的負担が大きい部分を見ます。

導入時は、現場職員に試してもらうことが重要です。管理者だけで決めると、実際の動線に合わないことがあります。

「便利そう」ではなく、「この時間帯のこの負担が減る」と説明できる機器を選びましょう。

外国人材やシニア人材を活用する際の注意点

外国人材やシニア人材を活用する際の注意点

介護の人手不足対策として、外国人材やシニア人材の活用も進んでいます。

ただし、人を増やせば解決するわけではありません。受け入れ体制、教育、言語サポート、業務範囲、職場の理解がないと、本人も現場も苦しくなります。

新しい人材が入った初日、現場が忙しくて十分な説明ができない。本人は分からないまま作業し、周囲もどう教えればいいか迷う。これでは定着しません。

外国人材には業務手順の見える化が必要になる

外国人材を受け入れるなら、業務手順を分かりやすくすることが大切です。

介護用語、記録表現、施設独自のルールは、慣れている職員には当たり前でも、初めての人には難しいです。写真付きマニュアル、やさしい日本語、動画教材、チェックリストを用意すると理解しやすくなります。

また、利用者との会話や家族対応で困る場面もあります。最初からすべてを任せるのではなく、同行、見学、限定業務、段階的な担当拡大の流れを作りましょう。

シニア人材には周辺業務を切り出すと活躍しやすい

シニア人材を活用する場合、いきなり身体介護の中心に入れるより、周辺業務から任せるほうがスムーズです。

配膳、清掃、洗濯、見守り補助、レクリエーション準備、物品補充、送迎補助など、介護職の負担を減らせる仕事は多くあります。

大切なのは、補助業務を軽く見ないことです。

周辺業務が整うと、介護職は専門的なケアに集中できます。結果として、利用者対応の質も上がります。

介護事業者が今すぐ見直すべき10のポイント

介護事業者が今すぐ見直すべき10のポイント

人手不足対策は、全部を一度に変える必要はありません。

ただ、今の現場がどこで詰まっているかを見ないまま採用だけ進めても、根本解決にはなりません。まずは現場を分解して、改善できる場所から着手してください。

月末のシフト作成時に、管理者が毎回頭を抱えている。休み希望を入れると夜勤が組めない。欠員が出ると同じ職員に負担が寄る。この状態なら、採用だけでなくシフト設計そのものを見直す必要があります。

人手不足対策の実務チェックリスト

まずは次の10項目を確認してください。

見直す項目具体的に見ること
業務量時間帯ごとの負荷が偏っていないか
シフト夜勤・早番・遅番の負担が固定化していないか
休憩実際に休憩が取れているか
記録入力項目が多すぎないか
教育新人が何をいつ覚えるか決まっているか
面談入職後30日以内に不安を拾えているか
求人票1日の流れと職場の現実が伝わるか
介護助手介護職以外でもできる業務を切り出せているか
ICT記録や申し送りの重複を減らせているか
評価現場貢献が見える制度になっているか

この10項目を見れば、採用前に直すべき場所が見えてきます。

特に休憩、記録、教育は早めに手をつける価値があります。ここが改善されると、現場の疲労感が少しずつ変わります。

最初の改善は1部署・1時間帯に絞る

改善を始めるときは、施設全体を一気に変えようとしないでください。

まずは、負荷が高い時間帯を1つ選びます。たとえば午前の入浴介助、夕方の記録、夜勤前半、食事介助の時間帯などです。

その時間に何が起きているかを観察し、1つだけ改善します。

入浴介助なら、準備物を前日に揃える。記録なら、入力時間をシフト内に組み込む。食事介助なら、配膳導線を変える。小さな改善でも、現場が「少し楽になった」と感じれば次につながります。

介護人手不足対策で企業がやってはいけないこと

介護人手不足対策で企業がやってはいけないこと

人手不足が深刻になると、企業側は焦ります。

ただ、焦った対策ほど現場を傷つけることがあります。採用広告を増やすだけ、根性論で乗り切らせるだけ、現場の声を聞かずにICTを入れるだけ。こうした対応は、短期的には動いているように見えても、定着にはつながりません。

職員会議で「今は大変だけど、みんなで頑張ろう」と伝える。現場はうなずく。でも翌日からシフトも業務量も変わらない。これでは、職員は「結局何も変わらない」と感じます。

精神論で乗り切らせない

介護職は責任感が強い人が多いです。

利用者のために、同僚のために、今日だけは頑張ろうと無理をします。しかし、その責任感に頼りすぎると、職員は限界を超えます。

「やりがいがある仕事だから」
「利用者さんが待っているから」
「介護職なんだから仕方ない」

こうした言葉だけで現場を支えるのは危険です。

やりがいは大切です。ただし、やりがいは人員不足の穴埋めにはなりません。企業側は、感情ではなく仕組みで支える必要があります。

採用だけに予算を使いすぎない

採用費を増やすこと自体は悪くありません。

ただ、定着施策がないまま採用費だけ増やすと、入っては辞める状態になります。紹介会社、求人広告、採用サイトにお金をかけても、受け入れ体制が弱ければ定着しません。

採用費の一部を、教育、面談、業務改善、休憩環境、管理職研修に回すことも検討してください。

採用は入口です。定着は中身です。

入口だけ広げても、中で職員が疲弊していれば人手不足は改善しません。

まとめ|介護の人手不足対策は採用より先に現場が辞めない仕組みを作ること

まとめ|介護の人手不足対策は採用より先に現場が辞めない仕組みを作ること

介護の人手不足がやばい理由は、単に人が足りないからではありません。

人手不足が続くことで、職員の休憩が削られ、記録が遅れ、教育が薄くなり、事故リスクが上がり、離職が増えます。その結果、利用者の生活、家族の安心、施設経営まで影響を受けます。

現場の職員は、仕事の意味を感じていないわけではありません。むしろ、利用者のために頑張りたい人は多いです。ただ、人員配置、賃金、身体的負担、休憩、教育、管理体制が整っていなければ、続けたくても続けられません。

企業側がまずやるべきことは、求人を増やす前に現場の負担を分解することです。

どの時間帯が一番きついのか。どの業務が介護職に集中しているのか。新人はどこでつまずくのか。休憩は本当に取れているのか。記録は勤務時間内に終わるのか。ここを見ないまま採用しても、同じ問題が繰り返されます。

介護の人手不足対策で優先すべき流れは、次の通りです。

順番やること
1時間帯ごとの業務負荷を見える化する
2介護職でなくてもできる業務を切り出す
3休憩と記録時間をシフト内に確保する
4新人教育を30日・90日単位で設計する
5求人票に職場の現実と支援体制を書く
6ICTや介護助手を負担の大きい業務から導入する
7評価制度と面談で定着を支える

介護業界の人手不足は、今後も簡単には解消しません。

だからこそ、企業側は「採れないから困った」で止まるのではなく、「今いる職員が辞めなくて済む職場」を作る必要があります。採用、定着、業務改善を分けずに考えることが大切です。

最初の一歩は、大きな改革でなくて構いません。

明日の午前中、職員がどこで足を止めているかを見る。休憩が実際に取れているか確認する。新人が聞きにくそうにしている業務を拾う。そこから改善は始まります。

介護の人手不足対策は、人を増やすことだけではありません。人が続けられる現場に変えることです。

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